納品書や送り状といった物流伝票をデジタルベースで管理するサービスが話題を呼んでいる。手掛けたのは創業からわずか3年のベンチャー企業・TSUNAGUTEの春木屋悠人社長だ。同社が仕掛ける「物流DX」の全容とは──。

 

 約3533億円──これは紙の物流伝票がすべてデジタル化した場合に見込まれる経済効果の総額だ。コロナ禍以降、DX(デジタルトランスフォーメーション)が人々の口端にのぼるようになり、テレワークや業務のクラウド化が一気に普及したものの、物流業界ではいまだにアナログな業務であふれている。

 なかでも課題とされているのが「ペーパーレス化」への取り組みだ。特に納品書や送り状といった伝票1枚をめぐる事務処理は多岐にわたり、印刷、配送エリア・ドライバーごとの仕分け、受け渡し対応、受領印の押印、ファイリング……など枚挙にいとまがない。さらに、関連する法律(法人税法・所得税法等)の定めにより、原則として7年間は処分ができない。そのため、多くの物流センターでは、ありとあらゆる伝票を格納した段ボール箱が山積みになっているという。また、コロナ禍での接触リスク削減のためにもペーパーレス化が求められている。

 こうした事務負担や感染リスクを軽減するためのサービスを物流業界向けに提供しているのが、2018年設立のベンチャー企業・TSUNAGUTEである。

 創業した春木屋氏の話。

 「紙伝票に関する処理がいかに非効率であるかを広く社会に訴えるため、宮本勝浩先生(関西大学名誉教授)による監修のもと、物流伝票の電子化に関する経済効果を試算しました。ちなみに、内訳は伝票の作成費用が約191億円で、人件費が約3342億円となっています。なお、この試算は物流業界のなかでも運送業や倉庫業を対象にしているため、空路・海路・鉄道輸送などを含めるとさらに数倍の経済効果が生まれると予想されます。このように、物流伝票の処理には多くの人手とコストがかかっており、業界全体でペーパーレス化を推し進め、事務処理を効率化するサービスとして展開しているのが『telesa-delivery(テレサ・デリバリー)』です」

 

伝票管理を省力化

 春木屋氏がこう説明するように、物流業界、特に物流センターのスタッフは日々、紙の伝票に関するさまざまな業務に追われている。 実際に同社が実施したアンケート調査によると、物流センターでは1人あたり毎日約40枚に及ぶ伝票を取り扱っており、処理時間は2時間にのぼるという。また、「煩雑に感じる業務」について尋ねたところ、「ファイリング・保管」という回答が多く寄せられ、次いで、「配車組みを元にした伝票の仕分け作業」、「伝票の印刷」が並んだ。さらに、回答者の65%が「人手不足を感じる」と話しており、日々の伝票処理に忙殺されている様子がうかがえる。

 このような課題を解決するため、同社が2018年に上市したのがテレサ・デリバリーである。リリースから約3年間でユーザー企業数は200にのぼり、ID数も400を超えている。

 では、テレサ・デリバリーとは一体どのようなサービスなのか。

 再び、春木屋氏の話。

 「テレサ・デリバリーは、物流伝票をすべてウェブ上で運用することで、印刷や保管、押印といった処理を省力化することはもちろん、配送に関する情報を荷主・ドライバー・物流センターといったサプライチェーンを構成する関係者全員で一元管理できるサービスです。伝票には『いつ』『どこに』『どの荷物』を届けるのか、という情報が集約されています。紙の場合、荷物の配送状況はその都度、物流事業者やドライバーなどに確認しなければなりませんが、伝票のやり取りをすべてオンラインで行うことで、配送状況の確認も簡単にできます」

 同社では昨年、北海道に拠点を置く生活協同組合コープさっぽろと、コープさっぽろの物流部門を担う北海道ロジサービス社で納品伝票の統一化とテレサ・デリバリーを活用したデータ管理に関する実証実験を行った。その結果、伝票の電子化と伝票の処理時間を大幅に削減したという。

 「北海道ロジサービスさんでは伝票の発行・保管・問い合わせ対応・データ管理といった業務に多くの時間を費やしていましたが、テレサ・デリバリーを活用することで伝票1枚あたりの処理時間が約1分短くなりました。今回の実証実験を経て、関連企業を巻き込んだ物流伝票の電子化にも手ごたえを感じていただき、テレサ・デリバリーの正式導入も決定。現在は本格稼働に向けて運用支援に注力しているところです」と春木屋氏は説明する。

 

企業を超えたコラボも

 このように同社の歩みは一見順調に見えるが、どうやらそうではないらしい。春木屋氏は「伝票のデジタル化が定着するにはまだまだ課題が多い」と話す。

 一つが「今のやり方を変えたくない」という意見がいまだに根強いことだ。いわゆる「現状維持バイアス」である。実際に複数の物流現場でIT化を進めることへの印象をヒアリングしたところ、スタッフの反応は芳しくなかった。

 さらに、春木屋氏が述べたようにサプライチェーンは荷主や運送業者、物流センターなど複数の企業によって構成されている。したがって、物流伝票のデジタル化を進めるには、サプライチェーンの川上企業から川下企業まで足並みをそろえないと失敗に終わる可能性が高いのだ。

 春木屋氏は言う。

 「物流はさまざまな担い手によって運営されているので、例えば物流センターだけがテレサ・デリバリーを導入してもかえって業務効率が悪くなるだけです。さらに、現場のスタッフからも、『今のやり方はなるべく変えたくない』という声も頻繁に耳にします。しかし、DXは避けられない時代の流れですし、コロナ禍で荷物の配送量が増えているにもかかわらず、今のやり方を維持していては伝票処理にかかる時間がますます長くなります。当社では引き続き、デジタル化によって得られる効果を広く訴えながら、物流業界のDXを進めていきます」

 会社の垣根を超えたコラボレーションや他社システムとの連携機能の搭載など、さまざまな手段を模索していきたいと春木屋氏は補足する。物流業界にさらなるブレークスルーが起こる日はそう遠くないのかもしれない。

 

COMPANY DATA

株式会社TSUNAGUTE

設 立 20189

所在地 東京都千代田区大手町1-1-3

社員数 9名