人事にまつわる課題をITで解決する「HRテック」。昨今、脚光を浴びている領域である。「エアリーシリーズ」を提供するEDGE(エッジ)は、新たなサービスをこのほどリリースした。社員の心理的安全性やエンゲージメントを可視化する、クラウドツールの画期性とは──。

 テレワーク中の部下とスムーズなコミュニケーションをいかに図るか、頭を悩ます経営者は少なくない。打開策として普及し始めているのが、上司と部下が一対一で面談する「1on1(ワンオンワン)ミーティング」と呼ばれるもの。米国シリコンバレー企業を発祥とし、キャリア観や業務上の悩みなどを共有する場として、採用する企業が相次ぐ。
 ただし課題点もあると佐原資寛社長は指摘する。
 「当社が今年4月、400名を対象に行った調査によると『ワンオンワン実施時、部下への遠慮から伝えるべきことを伝えられていないことがある』と回答したマネジメント層は、7割にのぼりました。部下が退職してしまうのをおそれるあまり、指導に苦慮している様子がうかがえます」
 翻って、部下側の心理状況はどうか。「ワンオンワン」の相手は通常、直属の上司。自身を評価する立場の社員に対して、本音をすべて明かすのは容易ではない。いきおい、双方が伝えきれない思いを抱えたまま、ミーティングを終えることになる。第三者が立ち会い、進行をコーディネートするのも秘匿性の観点から困難だ。

音声から感情を可視化
 こうした上司部下間のコミュニケーションを可視化するサービスとして開発されたのが「エアリーフィードバッククラウド」である。
 「テクノロジーの力を活用して、部下の心理状況をしっかり見極めることができれば、上司が気づきを得て、部下に対して早期にケアを行え、離職の防止につながるのではと考えました」
 開発のいきさつをこう語る佐原社長。着目したのは会話時の「音声」だった。というのも「音声には表情と異なり、感情がストレートに現れるという特性がある」ためだ。自身の部下である役員とのワンオンワン解析結果シートをもとに、ソフトに備わる機能を説明してもらった。
 「音声感情解析エンジンにより発話者の心理状況を分析し、時間の経過と感情の推移をグラフで示します。可視化する感情は落ち着き、怒り、喜び、悲しみ、活気の5種類。例えばミーティングの終盤にかけて活気が低下し、怒りや悲しみが上昇している場合は、注意が必要です。部下が悩みを解消できず、モヤモヤした感情を抱えたまま終了してしまった可能性が高いと推測されます」
 シートの冒頭には、上司と部下の「発話割合」が示される。上司は得てして部下から悩みを聞き出そうと、しゃべりすぎたり、考えを押し付けたりしがち。佐原社長によると、ワンオンワンにおける上司の理想的な発話割合は「3割から4割ぐらい」という。もっとも、発言が少なすぎるのも問題だ。3割を下回ると、あいづちのみになっていたり、反応が顕著に鈍くなっている傾向がある。
 そして共感性、安心感、傾聴力、活力支援という四つの指標から「心理的安全性スコア」が算出される。心理的安全性は、ビジネス用語として人口に膾炙(かいしや)しつつあるが、誤解されているケースもあると佐原社長は話す。
 「サイコロジカルセーフティという心理学用語ですが、日本では上司が部下に対してもっと気を配るべきといった、ぬるま湯的なイメージが流布しています。しかし本来は、お互いが忌憚なく持論を述べあった後、フィードバックを受け止められる状態を指します。いわば殴り合いのような激しい議論をしても、後くされしない関係性を意味するのです」
 同社の強みは、充実した運用支援体制にある。HRテック分野で得られた知見を生かし、人事の課題解決につながるコンサルティングを行う。そもそもエアリーシリーズの第1弾である「エアリーフレッシャーズクラウド」を提供開始したのは2006年にさかのぼる。佐原氏が籍を置いていた企業のHRテック事業を引き継ぎ、17年にエッジを設立した。その後今年1月にMBOにより衣替えを果たし、現在にいたる。

発言をうのみにしない
 ソーシャルメディアによる広報をはじめ草の根的な活動を通して、ユーザーを着々と増やしている「フィードバッククラウド」。足元で引き合いの強まっているのが、中堅・中小企業だと佐原社長は強調する。
 「先日は、15名ほどの社員を抱えるIT企業で導入いただきました。ワンオンワンをすでに実施していたものの、優秀な人材の離職をなかなか防止できないとの相談を受けたのがきっかけです。当社では管理職の社員を対象にした研修を企画し、部下との面談に臨む際の心構えをお伝えしました。その上でフィードバッククラウドの活用方法をレクチャーして運用をスタート。以前は離職が相次ぐ状況に、管理職の社員が社長からやり玉にあげられるケースがあったそうです。しかし、システムの導入によりワンオンワン時の課題が数値化され、対策を打ちやすくなったと評価されています」
 一方、フィードバッククラウドと同時にリリースした「エアリーマネジメントクラウド」は、50問の質問に回答すると、個人の価値観や思考特性が明らかになるサービス。10種類の意識構造タイプが導き出され、組織内の人材配置に活用されている。
 18年には「テレワーク先駆者百選」の1社に選出されるなど、先進的な働き方を率先して導入している同社。コロナ禍の現在、全社員がテレワークに移行し、ワンオンワンミーティングをはじめ、社員間のコミュニケーションはもっぱらオンライン上で実施している。佐原社長にワンオンワンをうまく進めるコツを聞いてみた。
 「部下の発言を100%信用しないことが肝要です。上司の意見に真っ向から異を唱える部下はまれで、大半の社員は腑(ふ)に落ちなかったとしても、『わかりました』と同意するものです。表情や声色の変化に注意を払い、話に真剣に耳を傾ければ、感情の機微(きび)に気付くことができる。こうした点を念頭において臨めば相互理解が深まり、ワンオンワンの価値が高まるでしょう」

COMPANY DATA
EDGE株式会社
設 立 2021年1月
所在地 東京都港区赤坂2-14-11 天翔赤坂ビル506
社員数 15名(業務委託含む)