大型商業施設の駐車場の一角に「BLUE SKY LAUNDRY」(ブルースカイランドリー)と表示した斬新なコインランドリーが目を引くようになった。ジーアイビーが全国展開している店舗だ。同社の商品・経営戦略のねらいについて、鈴木衛社長に聞いた。

 2019年9月、台風15号が千葉市付近に上陸し、関東各地で記録的な暴風雨となった。千葉県市原市ではゴルフ練習場のポールが倒壊し民家に直撃した。千葉県を中心に被災地では電気やガス、水道といったインフラが寸断された。
 多くの被災者を悩ませたのは洗濯だった。洗濯機が使えない事態に陥ったからだ。こうしたなかで、運よく停電にならなかったカインズモール市原店(市原市)とベイシア大網白里店(大網白里市)のコインランドリーに大勢の人が押し寄せた。「ブルースカイランドリー」のブランド名でフランチャイズ(FC)展開するジーアイビーの店舗だ。

地域の防災活動を支援
 ブルースカイランドリーは、大型商業施設の駐車場の一角に設置され、ガラス張りの店舗(約20坪)にはドラム式洗濯乾燥機などが15台並び、靴やふとんも洗うことができる。利用者は買い物や食事中に洗濯を済ませることができ、無料通信アプリ「LINE」に登録すれば終了時間が通知され、キャッシュレス決済も行える。従業員が常駐する時間は、店内の清掃や接客をする。専用のコールセンターや監視カメラも設置し、安心して利用できる環境を整えている。
 この2店舗は、普段は朝6時から23時までの営業だが、このときは23時になっても「洗濯をしたい」という人の行列が途絶えることがなかった。そこで同社は一時的に24時間営業に切り替え、2日間稼働し続けた。この経験を踏まえて誕生したのが、「災害対応型ランドリー」である。
 鈴木社長が強調する。
 「災害時、コインランドリーを近隣住民のお役に立てることができないかと、社内で協議を重ね具現化したものです」
 その1号店は20年1月、栃木県宇都宮市のホームセンター「カインズ宇都宮平出店」の駐車場に開設した。同社が手がける「ブルースカイランドリー」としては94店舗目となる。初の災害対応型となった宇都宮平出店は、LPガスタンクと災害対応ユニットを組み合わせたコインランドリーだ。
 災害対応ユニットには、ポータブル発電機をはじめ、直接ガスコンロやガス炊飯器にも接続できる設備が完備されている。発電機はガスを利用して発電する仕組みで、携帯電話の充電用に電力供給することもできる。ガスコンロや炊飯器を利用すれば被災者向けの炊き出しが可能となり、コインランドリーが緊急避難所にもなる。
 共働き世帯の増加だけでなく、最近の異常気象やゲリラ豪雨といった天候問題などを背景にコインランドリー需要は拡大している。これに伴い同社の店舗数も増え、22年1月末現在、全国161店を数えている。このうち46店が災害対応型だが、今後3年間でこれを200店に増やす計画だ。
 店舗網の拡大に当たっては、商業施設の駐車場の一角を中心とした展開とともに、地方自治体や地域の自治会などとの災害協定(大規模災害時における支援協力に関する協定)締結も積極的に進めている。鈴木社長はその意図をこう明かす。
 「大規模災害時や防災訓練実施の際、LPガス発電機やガス炊飯器などを無償提供し、防災活動を支援するというものです。商業施設はもちろん、行政や自治体と協力しながら、地域の防災意識の向上と災害時のサポート拠点を目指しています」

優れた節税メリットも
 ジーアイビーは税務畑出身の鈴木社長が10年5月に設立した。だが、コインランドリー事業を目的にした起業ではなかった。商業施設に特化したブルースカイランドリーの1号店を開設したのは15年6月。5年間の〝助走期間〟がある。鈴木社長はこう話す。
 「グループ会社で経営コンサルティングを手がけ、顧客である中小企業を対象にビジネスマッチングの会社として起業したのが始まりです。経営者の資産形成として不動産投資事業にも取り組むなかで着目したのがコインランドリーのFC事業でした」
 そのコインランドリー事業も消費者、FCオーナー、機器メーカー、デベロッパーの4者のニーズを組み合わせ、〝ウィンウィン〟を追求するビジネスモデルを構築した。設置を大型商業施設の駐車場に特化したのは、利用者は車で訪れ、買い物をしている間に洗濯を済ませることが可能で、しかも、駐車場は家賃を低く抑えることができるからだ。
 オーナーにとっては何より、ビルやマンションなどの不動産に比べ、コインランドリーは安定した利回りのもとで投資回収が早く、優れた節税メリットがある点が見逃せない。投資金額の約80%が即時償却(売り上げ発生日に損金/23年3月末まで)の対象となるだけに、そのメリットは大きい。
 標準店の投資額を約4500万円とすると、法人では約3600万円(税込み約80%)の即時償却で1000万円超の法人税節税となる。最高税率の経営者個人の場合は、1700〜1800万円の所得税・住民税が軽減される。オーナーは中小企業の経営者が多いが、法人と個人の両方でこうした節税メリットを享受するケースが多いという。 
 さらに注目されるのが、このコインランドリーはオーナーである中小企業経営者にとって退職金の現物支給になるというスキームだ。
 「仮に利回りを10%とすると10年程度で投資回収ができます。その時点でコインランドリーを経営者に退職金として現物支給するわけです。つまり、10年後に簿価が約4分の1(相続税・財産評価基本通達にもとづく)となった店舗の退職金代わりの現物支給で、状況にもよりますが、毎年450万円を稼ぎ出す権利を10年以上継続して取得することになります」(鈴木社長)
 20年間勤務した経営者の退職金が現金1億円の場合、税額は約2000万円。これに対して、10年前に1億円を投資した店舗を現物支給した場合(2・5件分)の税額は約230万円で済み、毎年1000万円の継続収入が10年以上見込める。同社は災害対応型で地域貢献しつつ、こうした節税スキームによる資産形成をアピールし店舗展開を加速させる。店舗に蓄電池を設置し、太陽光による電力供給を図るなどSDGsへの対応も視野に入れている。
 店舗内の55インチディスプレーを通じた防災映像放映や、LINEの積極活用による防災情報発信など、災害に備える拠点としての機能も強化していく計画。同社の事業はコインランドリー市場活性化の強力なけん引役となりそうだ。(フリージャーナリスト・川上清市)

COMPANY DATA
株式会社ジーアイビー
設 立 2010年5月
所在地 愛知県名古屋市中区丸の内 1-15-20 
売上高 18億6776万円(21年4月期)
従業員数 300名(パート含む)