売れない衣類が大量に廃棄処分されていることが問題になっている繊維業界で、循環型のビジネスモデルを目指す動きが始まっている。綿や麻など天然繊維の再生プラットフォームの構築を目指すBPLabの八代直樹代表取締役に話を聞いた。

 BPLabは、サーキュラーエコノミーの社会実装を目的に2021年に設立されたスタートアップである。サーキュラーエコノミーとは、①廃棄物と汚染を生み出さないデザイン②製品と原料を使い続ける③自然システムを再生――の3原則に基づく循環型経済を意味し、リサイクル、リユース、リデュースの「3R」とは異なり、「そもそもゴミや環境汚染を生み出さない」「経済成長と環境保護を両立するデカップリングを目指す」などの特徴を持つ。起業の経緯について、八代直樹社長は次のように語る。
 「3年前にサーキュラーエコノミーの第一人者である中石和良氏に出会い、はじめてこの理念を知り、これは絶対に社会に広めなければならないと感じました。しかし私が長く働いているアパレル・繊維業界ではこの動きはまったく広がっていません。そこでなんとか製品を回収して再生させる循環プラットフォームをつくろうとこの会社を設立しました」
 八代社長がこのような決意に至った背景には、アパレル業界における製品の大量廃棄問題がある。 「ファッション産業は、衣類の製造工程で大量の水、エネルギー、化学物質が使われるため、世界で2番目に環境を汚染している産業と言われています。一方で3Rの割合も少なく、日本では年間48万トン、大型トラックに換算して毎日約130台分の衣類が埋め立てあるいは焼却処分されているのが現状です。ゴミとして出された衣料が再資源化される割合はわずか5%にすぎません」
 このアパレル産業の「持続不可能」な状況に対する危機感から同社が考案したのが、天然繊維循環プラットフォーム「BIOLOGIC LOOP(ビオロジックループ)」である。ポリエステルやナイロンなど石油由来の化学繊維の再製品化には最新鋭の設備を持つ大手化学メーカーの介在が不可欠なため、同社は対象を天然繊維に絞った。
 「ビオロジックループは、製品設計の段階からトレーサビリティーの取れた廃棄物を生み出さない素材の使用を推奨します。そしていらなくなった天然繊維衣類の回収を行い、再度新しい天然繊維資源として生まれ変わらせ、製品と原料を使い続けることを目標にしています」(八代社長)
 天然素材はコットンと麻、ウールの2グループに分類。それぞれ緑色、赤色のタグをつくり、プラットフォームに参加した企業・ブランドの製品につけることで、消費者が一目でわかるような仕組みを考案した。さらにタグに掲載してあるQRコードをスマホなどで読み取ると、素材情報や回収・リサイクル方法を知ることもできる。そして回収した古着は紡績工場でワタに戻し、水や化学薬品を用いない環境負荷の低い方法で再生コットン、再生麻、再生ウールの素材に生まれ変わらせるのである。

個人向け会員制システムも検討
 サーキュラーエコノミーは本来、企画段階から回収しやすい素材を選ぶ必要がある。そのため、ビオロジックループは、同社のコンサルティングを含めたプラットフォームである。しかしその概念が十分に浸透していない現状で、理想に近い形で実行するのは難しい。そこで同社はまず衣類の回収と再生製品づくりから始めた。
 「賛同を得られた店舗などで専用回収ボックスを設置します。廃棄物処理業の会社と契約し回収を行い、製品別、素材別に手作業で分別します。さらにその後色別に分け、反毛という技術でワタに戻し、素材に再生させます。回収した古着のなかには合成繊維製のものも混じっているので、それらは工業用ウエスや軍手、圧縮フェルトなどの製品にリサイクルします。いかに細かく分別できるかが再生製品の品質に大きくかかわるため、当社では最終的に250種類に分別できる体制を整えており、さらに再生した素材には独自のリサイクル化証明書を発行しています」(八代社長)
 事業開始後間もないため実績はまだ少ないが、思わぬところでニーズがあることが分かった。倉庫会社である。
 「さまざまなメーカーの在庫を大量に保管している倉庫会社が困っているということが分かってきました。売れないままの商品を倉庫に置いておくだけでもかなりのコストがかかります。最終的に廃棄してしまうのなら再生して循環させようと考える企業と、協業に向けて話を進めています」
 さらに大手布団メーカーとの契約も進めている。羽毛布団の素材であるダウンはメーカーが回収し再生する仕組みが整っているが、外側のコットンは布団メーカーではリサイクルできない。そこで同社がコットンのみを回収して、ビオロジックループのプラットフォームに投入するのである。
 緒についたばかりのビオロジックループの取り組みだが、八代社長は、将来的に消費者一人一人と直接つながることができるような会員制度の仕組みづくりも視野に入れている。
 「大量の廃棄物につながらないように購買行動を変えるなど、環境に対する消費者の意識が年々高くなっています。『リサイクルに回せて廃棄・焼却処分にならずに済むなら、送料や手数料を払ってもいい』という消費者も珍しくありません。そうした消費者が個人会員になっていただける仕組みの構築を計画しています」
 繊維業界でサーキュラーエコノミーを実現するためには、回収費用などの負担の問題は避けては通れない。大手企業であれば全国にある店舗で回収ボックスを設置することができるが、通信販売のみを手掛ける中小企業が行うのは難しい。そこで同社は、中小企業でもこの取り組みに参加できるよう、消費者に一部費用を負担してもらう仕組みを検討しているのである。衣類の「捨てない選択」提供にチャレンジする同社の今後に注目である。

COMPANY DATA
株式会社BPLab
設 立 2021年6月
所在地 東京都港区北青山2-12-8BIZ SMART青山