ふたみ・さとし
1976年生まれ。大阪市立大学理学部卒。大手製薬会社に入社後、大阪府内の中学校などに教員として11年間勤務。2013年公務員を退職し、SAT株式会社を設立。60以上の資格講座を開講中。

先進のデジタル技術で現場系資格取得を後押し

 技術士、電気工事士などの現場・技術系の資格取得に特化した講座を運営しています。大別すると国家資格系と特別教育系があり、ラインアップは60種類以上。足元では、すき間時間に学べるオンライン講座「スマートEシステム」の人気が高まっています。
 特別教育とは、高所での作業等危険を伴う業務を手がけている企業で、従業員に対して行うことが義務づけられている専門的な教育を指します。受講者は講習会場に赴いて講義を受けるのが一般的で、eラーニングには適さないと言われていました。受講していることを担保する仕組みがなかったためです。
 そこで当社は人工知能(AI)を活用した顔認証による、なりすまし防止システムを構築しました。講座にログインした受講者に、スマートフォンで撮影した顔写真を最初に送信してもらいます。講義は10〜15分の単元に分かれていて、単元ごとに複数回、写真を自動で撮影。AIが元データと照合して判別する仕組みです。そのうち複数枚で別人もしくは離席中と判定されると、受講者は再受講しなければなりません。
 また、外国語対応を行っている点もスマートEシステムの特徴です。日本国内で働く外国人のうち、近年存在感が増しているのがベトナム人労働者です。2020年度に公表された統計データによると、ベトナム人は外国人労働者のおよそ4分の1にのぼります。21年1月からベトナム語字幕対応を開始しており、3月末までにすべての特別教育講座の字幕対応を完了させる予定です。ベトナム人技能実習生の受講者はこれまで200名を上回り、通訳の確保がままならない企業で引き合いが高まっています。

教材研究から生まれたテキスト
 「すべての人に最高の教材を!」とのスローガンを掲げているとおり、講座で用いるテキストと講義の質にもこだわっています。念頭に置いているのは、最短の学習で受講者を合格に導くこと。市販されている参考書の大半は文字数が多く、ページも膨大です。知識を効率的に吸収してもらうべく、当社のテキストでは必要最小限のポイントのみを記載し、講師が補足説明しています。そのため、テキストのコンパクトなことに驚いたという声を合格者からしばしば聞きます。
 創業前は大阪府の中学校で教員をしていました。当時からオリジナルの教材をつくるのが好きだったんです。社会人から子ども向けまで、参考書やDVD講座などあらゆる教材を取り寄せ、研究を重ねました。その結果気づいたのが、社会人向け講座の改善点の多さ。大半のテキストは文字だらけで取っつきづらく、講義の進め方にも疑問を感じました。大学教授をはじめ権威はあるものの高齢の方が講師を担当していて、テキストを棒読みしているような講座も散見されました。
 講義映像の収録には、「クロマキー合成」と呼ばれる手法を採用しています。クロマキー合成とは、テレビ番組でも活用されている映像合成技術です。スマートEシステムの講義中は、講師の背景にテキストの内容が投影されるので、受講者は手元にテキストを用意する必要がなく、移動中にも効率的に学習できます。当社では、講師が大阪市内のスタジオに赴き、部屋の鍵を解錠。机上の録画スイッチを押して、自身で講義の収録を行える仕組みになっています。専属のカメラマンを常駐させる必要がないため、人件費の圧縮に寄与しています。

受講者のメンタル面も支援
 長期におよぶeラーニングを継続する上でカギとなるのは、高いモチベーションをいかに維持できるか。われわれは、多くのアスリートやビジネスパーソンが活用している「原田メソッド」と呼ばれるノウハウを導入しています。これは元教員の原田隆史氏が開発した目標達成手法で、メンタルの土台構築に重きを置いているところが特徴です。原田氏の著書を読んで活動に関心を持ち、氏が代表を務める原田教育研究所に業務提携を申し込みました。
 原田メソッドを取り入れた資格対策講座では、目標を行動に落とし込む設定シート「オープン・ウィンドウ16」や、日々の行動を振りかえる「ルーティーン行動・期日行動チェック表」を添付。原田氏による解説動画を見ながら、シートを埋めていきます。難関とされる技術系国家資格では、学習期間が1年以上におよぶケースもまれではありません。とりわけ学習期間が数カ月以上におよぶ講座において、これらのツールは威力を発揮するはずです。
 そもそも人々が技術系の資格取得を目指す動機は、自身のキャリアアップにあります。年内の開始を予定している新たな事業が、合格者を対象とした転職支援サービスです。転職希望者と企業をつなぐプラットフォームを立ち上げ、資格取得から転職まで一貫した支援の流れを築きたいと考えています。