ほとんどプロモーション活動を行っていないにもかかわらず、180万人を超えるユーザーが使っている英語学習アプリがある。ポリグロッツが提供するシェアナンバーワンアプリ「レシピー」だ。山口隼也社長に、アプリの特徴や今後の経営戦略を聞いた。 

 

 レシピーの最大の特徴は、AIが一人一人の実力や興味に応じたカリキュラムを作成するパーソナルレシピ型英語学習プログラムであること。さらにアプリ内で英語講師との1対1のレッスンを行うこともできる。無料プランに加えリスニングを強化できるエントリープラン(月額480円)、スピーキング力強化も加えたベーシックプラン(同1300円)など、の料金プランが用意されている。 山口社長は、AIが作成した自習教材とリアルなコミュニケーションが協調して学習効果を引き上げると話す。 

 「当社のサービスは『最短で最高の成果を出す』ことを売りにしており、実際TOEICの点数を100点向上させる時間が他社サービスに比べ35%短縮したというデータが得られています。94%の利用者が3カ月で200点アップするなど着実に英語力が身に付くため、継続率も90%を超えています。ユーザーの75%は社会人で、『受験のための英語』ではなく『使える英語』を学びたい層に評価していただいています」 

 カリキュラムでは、リスニング、スピーキング、リーディング、単語学習、ライティング、文法学習という英語に必要な6大要素すべてをカバー。ニュース記事や単語帳、TOEIC問題集などのコンテンツから自習用の問題が作成されるが、日々の学習結果に関する膨大なデータを収集・分析することによってAIエンジンが一人一人の英語力に合わせたカリキュラムに改善を重ねていく。 

 「リーディングの途中でどんな単語をワンタップ辞書で確認したのか、単語を読むスピードはどれくらいか、スピーキングの発音がネイティブとどれくらい近いかなどのデータを収集することで学習上のつまずきや上達している部分などをAIが自動的に判断し、次の日以降のカリキュラムに反映させていきます。興味のある英文や苦手と感じていることは人それぞれ違うので、本来学習プログラムは100人いれば100通り必要なはずです」(山口社長) 

 同社が契約する講師とオンラインを通じて行う1対1のレッスンでは、スピーキングや発音などテーマごとに講座が用意されているのが特徴だ。講師を自由に選ぶことができるうえ、リーズナブルな価格ながらレッスン時間は他社サービスと比較しても長い45分となっている。 

 「副業で英語講師をされている方、以前英語教師をされていた方、帰国子女で現在は会社員として勤務されている方などと業務委託契約を結んでいますが、レシピーのレッスンでは日本語を話すことができる講師が多く在籍しているのが特徴で、講師の6〜7割は日本在住の方です。初級者などはやはり英語で質問するのはハードルが高く、日本語で質問やフィードバックを受けたりできるほうが気軽にレッスンが受けられると考えています」(山口社長) 

 次回のアプリバージョンアップでは、自習データの履歴から、弱点を克服するのに適切なレッスンをAIがレコメンドする機能を搭載する予定だ。 

 

法人向け需要が拡大 

 もともと九州大学で原子力工学を専攻していた山口社長。放射能の除染を効率的に行う手法についてコンピューターシミュレーションを使って研究していた。研究テーマにはやりがいを感じていたが、学生生活のなかで、よりのめり込んだのがITブーム。「プログラミングで何でもゼロから作り上げられる」面白さに開眼し、就職先はIT関連に決めた。 

 卒業後はフューチャーアーキテクト、キーエンスの子会社でCTOとして活躍したが、そこで直面したのが英語の壁である。さまざまな教材やアプリを試し英語力向上を図るなかで、自らサービスを提供する側に立つことを思い立つ。 

 「海外出張や英語の社内文書を読む機会が増え、自分自身で英語の学習に困っていました。アプリや単語帳などを使っていろいろ試した結果感じたのが、忙しい社会人は受験勉強のように正解をひたすら覚えるのではなく、新しいニュースなどを読みながら仕事でつかえる英語を身につける必要があるということ。そこで私はIT系の老舗ネットメディア『テッククランチ』を読んで英語を学習することにしました。1日10分程度でしたが、2〜3年継続すると上達していくのが自分でも実感できるようになり、TOEICの点数も向上。聞き取れなかった文章も聞き取れるようになりました。最新のIT情報を学べ、仕事に生かすこともできました。当時の英語学習サービスは、英語教師のメソッドに基づいていたり、コンテンツを持っている企業がそれを有効活用するために行っていたり、企業側の都合で成り立っているものがほとんどでしたが、この体験を通じ、一人一人の異なる事情に基づいた学習者視点のサービスが、エンジニアである自分だったら作れるかもしれないと考えたのです」 

 学生時代に学んだコンピューターシミュレーションを通じ、機械学習やAIの知識、ビッグデータの取り扱いなどに精通していたこともプラットフォーム開発に生きた。こうして誕生したレシピーは確かな効果が評判を呼び着実にユーザー数を拡大、日本マーケティングリサーチ機構のアンケート調査によると、「英語が話せるようになる英語学習アプリ」「継続しやすい英語学習アプリ」「英語学習アプリユーザー満足度」の3部門で4年連続1位を獲得している。 

 幸いコロナショックによる影響も限定的だった。インバウンド需要や海外出張の減少、東京オリンピック・パラリンピックの終了などでBtoCの需要が大きく減った一方、大企業の従業員がリスキリングの一環として利用する法人向け需要が拡大しているのである。国際的なM&Aの活発化や海外取引先とのオンラインミーティングを行うケースが増え、ビジネス英語の習得ニーズが高まっているといい、製造業や製薬会社、IT企業など法人契約数は100社を突破した。 

 さらにはレシピーで確立したサービス自体を他社に提供するビジネスモデルも確立しつつある。レシピーはAIのエンジンとデータを使って学習者個々に対して最適化されたカリキュラムをアプリで提供する仕組み、学習の教材となるニュース記事や単語帳、TOEIC問題集などのコンテンツ、講師と生徒をマッチングする仕組みなどの多くのノウハウが詰まっているが、これらの仕組み全体をプラットフォームとして提供しているのである。コロナ禍で通常レッスンが困難になり、オンライン講座を開始した大手英語学習塾等などに採用実績があるという。 

 今後はTOEIC対策の強化や動画コンテンツの導入などアプリの充実を図っていく予定。将来的には英語学習のみならず、企業研修など社会人の学び全般に展開できるようなサービスに拡充することも検討している。 

 

COMPANY DATA 

株式会社ポリグロッツ 

設 立 2014年5月 

所在地 東京都新宿区西新宿6-5-1新宿アイランドタワー6階 

社員数 7名