周囲の猛反対を押し切り、未知なる世界に果敢に挑戦 


 「見た目はスーツですが軽量かつ伸縮性、通気性に優れているので作業服としての機能は抜群です。頑丈さも売りで2年間毎日洗濯しても生地が傷みません」 

 スーツ型作業着「ワークウェアスーツ」(WWS)を片手に力強い表情で語るのは関谷有三社長だ。2018年に上市して以降、これまでに累計15万着を販売。売り上げも販売2年目で前年比200%、その翌年には同400%を記録するなど、破竹の勢いで業績を伸ばしている。矢野経済研究所の調査によるとワークスーツ市場は25年までに200億円規模に成長すると言われており、最近は大手作業着メーカーやアパレルブランドの参入も相次いでいるが、業界のトップランナーとして市場をけん引しているのがWWSである。 

 実際に製品を見てみると、まずポケットの幅の広さが目を引く。作業員は仕事柄メモ帳や筆記具等を多く持ち歩くからで、なかでもジャケットの胸ポケットはデジタルカメラがすっぽり収まるほどの大きさだ。一方、パンツは腰回りに紐を通しており、ベルトを着用しなくてもウエスト調整ができるようになっている。「WWSはあくまでも作業着ですから、動きやすさ、作業のしやすさを重要視しています」と関谷社長は説明する。 

 

作業員の好印象を引き出す 

 WWSが世間の注目を集めているのは製品の品質や機能性もさることながら、「水道工事会社が開発した」というユニークさも大きい。元は水道管のメンテナンス事業をなりわいとしていただけに、製品化にいたるまでは紆余(うよ)曲折を繰り返したと関谷社長は述懐する。 「もともとは当社の作業用ユニフォームとして開発を始めました。生地づくりだけで1年半を費やし、数千万もの資金をつぎ込むも鳴かず飛ばずの期間が続いたので、『いつ撤退するんだ』といった声が次第に社内外から聞こえてくるようになりましたね」 

 そんな周囲の猛反対にもくじけず、前を向き続けた関谷社長。「反対されればされるほど『絶対に形にしてみせる』と奮い立った」と当時の胸の内を明かす。かくして製品化を目指して模索すること2年。ついにWWSの第1号が完成する。懸案だった生地は試行錯誤を積み重ねたことで、機能性、耐久性、着心地のすべてに優れたオリジナル素材「ultimex」(アルティメックス)の開発に成功。この素材を生み出したことにより、見た目はスーツながらも違和感なく作業に集中できる、画期的な作業着が誕生したのである。 

 WWSは作業員の印象アップにも絶大な効果を発揮している。言葉づかいや身だしなみが改善されるなど顧客に清潔な印象を与えるようになったのだ。実際にWWSを着用した作業員を目の当たりにした大手不動産会社の幹部社員から「マンションの管理組合のユニフォームとして導入したい」と打診。ここから商品としての展開がスタートする。とはいえ販売をはじめてすぐに売れ行きが好調だったわけではない。 

 関谷社長は言う。 

 「販売直後は売り上げが伸び悩んでいました。転機が訪れたのはリリースから半年が過ぎたときのこと。あるニュース番組で、山形県で米農家を営む齋藤聖人さんが、『スーツ農家』を名乗り、スーツを着ながら農業に携わっている様子が取り上げられていたんです。そこから齋藤さんにコラボをオファーし、WWSを着て田植えをする姿を発信したところ反響が大きく、問い合わせが殺到するようになりました」 

 現在はマンション管理組合や自動車整備工場、理髪店など1800社がユニフォームとして導入。異業種とのコラボも続々展開しており、ゴルフ専門メーカーの本間ゴルフ、関谷社長の地元である栃木県に拠点を置く栃木SCなどスポーツクラブとのコラボレーションモデルはいずれも好評だ。 

 

チャレンジングな取り組み続々 

 このようにワークスーツという新しい市場を切り開いた関谷社長だが、なぜ知見もノウハウもない分野に飛び込んだのか。それは関谷社長の経歴を見れば一目瞭然だ。 

 大学卒業後、実家である水道工事会社に入社した関谷社長は、産学共同研究によって「オゾンを活用した水道管メンテナンス技術」を新たに開発。傾いていた実家の経営を見事に立て直した。その後、この技術とノウハウを武器に独立。新たに東京都内で水道メンテナンス事業を立ち上げた。 

 転機となったのは東日本大震災である。未曽有の災害を経験し、主力事業が一つだけでは社会の変化に対応できないことを痛感した関谷社長は、新規事業として台湾の飲食ブランド「春水(チユンスイ)堂(タン)」の日本誘致に成功。のちの「タピオカブーム」の火付け役となった。その後、水道事業を売却し現在は飲食、アパレル、デジタルマーケティングの3本柱で事業展開している。 

 「思い返せば東京進出も春水堂の国内展開も周囲の反対を押し切って進め、いずれも成功を収めています。信念を曲げずに貫くことで成果につながると経験から学んでいたので、WWSも撤退ラインを設けずに開発を進めました。未知の領域に挑戦する以上、反対の声は必ず生まれます。大切なのはその声に耳を傾けつつも、目標の実現に向けて最善を尽くすことではないでしょうか」(関谷社長) 

 最近はティックトックのアカウントを開設し、職場の日常風景を発信するなどチャレンジングな取り組みに余念がない関谷社長。これからも既存の常識を打ち崩す、画期的なビジネスを仕掛けることだろう。 

 

COMPANY DATA 

株式会社オアシスライフスタイルグループ 

設 立 2017年6月 

所在地 東京都港区北青山1-2-3 青山ビル2階 

売上高 17億円(グループ合計) 

社員数 115名(グループ合計)