昨年公開され、今年4月にDVD・ブルーレイが発売となった映画『引っ越し大名!』。原作は『超高速!参勤交代』シリーズでおなじみの、土橋章宏さんが手掛けた時代小説『引っ越し大名三千里』(ハルキ文庫刊)。生涯7回もの国替えを命じられた姫路藩の藩主・松平直矩が、無理難題の引っ越しに悪戦苦闘する物語です。

「引っ越し奉行」という大役を命じられ、奮闘する片桐春之介役を演じるのは星野源さん。片桐春之介は姫路藩の書庫番で、人と接するのが苦手ないわゆる「引きこもり侍」。幼馴染役の鷹村源右衛門役には高橋一生さん、片桐春之介をサポートする於蘭(おらん)役には高畑充希さん。さらに、原作者の土橋章宏さんが脚本を務め、『のぼうの城』等の作品を手掛けてきた犬童一心監督がメガホンをとる豪華布陣です。

知恵と工夫で引っ越しを乗り切ろうとする、姫路藩の藩士たちの汗と努力との物語。映画の舞台となった姫路城を、『引っ越し大名!』目線で見ていきましょう。

7度の国替えを体験した松平直矩の〝引っ越し遍歴〟

越前大野藩(福井県大野市)主・松平直基の子として松平直矩は誕生。姫路15万石に国替えを命じられた松平直基が途上で死去したため、慶安元年(1648)に5歳で家督を相続します。しかし、幼少の松平直矩では、要地である姫路には不適当と判断され、翌年には越後村上藩(新潟県村上市)に国替えとなってしまいます。

寛文7年(1667)、成人した松平直矩は再び姫路城に復帰するものの、親族の越後高田藩(新潟県上越市)の御家騒動に巻き込まれ、松平直矩は領地を半分以下の7万石に減らされてしまいます。さらに、天和2年(1682)には豊後日田藩(大分県日田市)に国替え。その後、貞享3年(1686)に出羽山形藩(山形県山形市)、元禄5年(1692)に陸奥白河藩(福島県白河市)へと国替えを繰り返しました。生涯で幾度も国替えを重ねた結果、家中は多大な借財を負うことになり、「引っ越し大名」と呼ばれるようになったのです。

国替えを命じられた藩は全藩士とその家族全員で引っ越します。現代でも転居を伴った人事異動はありますが、規模が違います。一説によると、移動人数は1万人に及び、費用は2万両(現在の約15億円)に上ることもあり、大きな負担が藩にのしかかったのです。