お城のガイドや解説本はもちろん、小説から写真集まで、お城に関連する書籍や映画などを幅広くピックアップする「お城ライブラリー」。今回は東村アキコが描く、歴史が苦手な人にこそおすすめしたい歴史マンガ。女謙信を主人公にした、優しさと涙とちょっぴり恋愛模様も混ぜ合わせた作品である。

東村アキコが描く、女・上杉謙信一代記!
戦国時代、「越後の龍」と恐れられた戦国武将・上杉謙信。川中島でライバルの武田信玄と一騎討ち、ことわざにもなった敵に塩を送る行為など数多くの逸話が残り、戦は負け知らず。義を重んじたその姿から、人気の高い武将のひとりだ。そんな彼には「実は女性だった」とする説がある。

この女性説を採用したのが、マンガ『雪花の虎』である。作者の東村アキコは『海月姫』『東京タラレバ娘』などで、女子のリアルな描写と、女子の本質にズバッと切り込む辛口さで女性に根強い人気を誇っている、話題の漫画家だ。実は東村アキコ、かつて高校の教科選択ではわざわざ地理を選択するくらい、特に日本史に興味を持っていたわけではない。そんな彼女が、なぜ本格的な歴史モノに挑戦したのか。

きっかけは、ふと目にした「上杉謙信女性説」から「上杉謙信が女だったらという歴史漫画なら描けるかもしれない」と思い立ったこと。さらに漫画の掲載が決まったあとに、謙信の生まれ故郷・上越市への現地取材で、「私はその女謙信を描くしかない」と強く思ったという。

謙信が終生居城としてた春日山城といえば、典型的な山城であり、ひとつひとつの曲輪の面積が小さい。さらに新潟は雪が多いため、謙信の時代は平屋しか建設できなかった。作者はドラマでのイメージとは違う質素な戦国時代の城に驚くと同時に、謙信をはじめ長尾家の暮らしぶりが見えてきたのだという。さらに謙信が幼い頃修行していた林泉寺に伝わる肖像画を見て、作者は“謙信は女性だ”と確信。かくして女謙信の物語がスタートしたのである。