お城のガイドや解説本はもちろん、小説から写真集まで、お城に関連する書籍を幅広くピックアップする「お城ライブラリー」。今回は、キツネの目線から見た日本の歴史を描く斉藤洋著『白狐魔記』をご紹介します。

キツネから見た人間の残酷さ、奇妙さ、そして儚さを描く
人を主人公に据えた歴史小説はごまんとあるが、キツネ目線で話が進む歴史小説は珍しいに違いない。本作は、主人公に「白狐魔丸(しらこままる)」という名前の白キツネを据えた児童書である。

(キツネからすれば)奇妙で不可解な人間と人間社会に興味を持った白狐魔丸は、仙人のもとで修行をして化身の術を体得し、人間に化けては人間社会に紛れ込んでいた。ある時、兄の源頼朝から追われていた源義経とその家臣・佐藤忠信らに出会う。日ごろから「なぜ人間は同じ生き物なのに争い殺し合うのか」という疑問を抱いていた白狐魔丸は、義経たちに強い興味を持ち、彼らと行動をともにして疑問の答えを追い求める…というストーリー。

白狐魔丸は術を使いすぎると、数十年の深い眠りに落ちてしまう。本シリーズは6巻出ているが、たとえば1巻「源平の風」のあと、元寇をテーマにした2巻「蒙古の波」まで85年も眠りっぱなし。その後も起きては寝てをくり返し、鎌倉時代末期の楠木正成、戦国時代の織田信長、江戸時代の天草四郎、大石内蔵助といった人々に出会うのである。

作者は、『ルドルフとイッパイアッテナ』(講談社)『ペンギンたんけんたい』(講談社)など、動物を主人公にした作品で知られる児童文学作家・斉藤洋。本シリーズも小学校高学年から読める児童書で、特徴はなんといっても歴史を知らずとも読めることだ。白狐魔丸は何十年も眠ってしまうと先に書いたが、これが本書のミソ。眠っていた間のことは当然白狐魔丸も知らないため、今がどんな時代で何という人物が世の権力を握っているのか、人間や知り合いのキツネが基礎の基礎から教えてくれるのである。さらに本の後ろには、実際の歴史上の出来事と白狐魔丸の足取りが対応した年表もついている。ルビがしっかり振られているのも嬉しい。