自然の要塞「山城」と石垣で守られた「近世城郭」
お城のことを知ろうとするとよく目にする、「山城」と「近世城郭」という言葉。「つくりが違うんだろう」という想像はつくものの、具体的にどういうお城を指すのかいまいちわからない読者も多いのでは? 「山城」と「近世城郭」の違いをみていきましょう。

「山城」とは、その名のとおり山に築かれたお城のこと。自然の山を削り、掘り、盛り固めて、堀や土塁(区画や防御のための土手)、曲輪(区画された平坦地)などを造成したお城です。

重要なのは、全体がほぼ「土」で築かれており、建物は木造の簡易なものだったため、遺構はほとんど残っていないことです。天下が統一される前、戦が日常的に起こっていた南北朝時代や戦国時代に爆発的な数が築かれ、「中世城郭」とも呼ばれます。

対して、織田信長の安土城以降、江戸時代にかけて築かれたのが、天守の建つ「近世城郭」(天守がなかったものもあります)。山城が土づくりであるのに対して、近世城郭の多くは石づくりです。高い石垣・広大な水堀・瓦葺きの建物などを備えています。山城とは違って、平地や低い丘に築かれているものも多いです。

「土づくり」から「石づくり」へ変貌した山城もある
日本全国の城跡は、なんと3〜4万といわれていますが、そのほとんどは山城です。一般的にお城として馴染みの深い天守のある近世城郭は、全体の数パーセント足らずの圧倒的少数派なのです。近世城郭も全国にたくさん残っている印象がありますが、いかに山城の数が膨大なのかがわかりますね。

「えっ!? でもこの前見た山城には石垣があったぞ!」と疑問に思う読者も多いでしょう。例えば、「天空の城」として有名になった竹田城(兵庫県朝来市)や、2016年NHK大河ドラマ『真田丸』のオープニングで使われた備中松山城(岡山県高梁市)など、石垣の山城もたくさんあります。

でも、こうしたお城のほとんどは、土づくりだったものが近世に入ってから、石垣を積んで近世城郭へと改修された山城なのです。

つまり日本のお城の多くは、「山城(=中世城郭)」と「近世城郭」に大別することができますが、中には「近世城郭に生まれ変わった山城もある」と理解しておくとよいでしょう。

ただし、北海道に残る「チャシ」や沖縄に残る「グスク」、中世以前に築かれた「古代山城」などは、「山城」と「近世城郭」の区分には含まれません。改めてこの連載で取り上げますので、楽しみにお待ちください。