近年、新たな技術として普及しつつあるAR・VR。デジタル技術を使い、現実世界にバーチャル映像を融合させたり、仮想空間に入り込んで現実のような体験ができたりする技術だが、ここ数年、全国の城跡でもARやVRを生かした取り組みを見かける機会が増えてきた。

カメラをかざすと現実の石垣の上に往時の建造物が合成で復元されたり、合戦のCG映像を見られたりするなど、これまで以上に多角的にお城を体感できるようになっている。

ここでは、実際に導入している城に話をうかがい、その楽しみ方や特徴を紹介しよう。

当時としては先進的だったVRの取り組み
慶長6年(1601)に黒田長政によって築かれた福岡城は、内郭部8万坪という九州最大級の規模を持つ広大な城だった。天守台があるにも関わらず天守があったという確たる証拠がなく、研究が進んだ今でもその存否の意見が分かれている。

現在は、多聞櫓が重要文化財に指定されているほか、本丸から三の丸一帯が舞鶴公園として市民の憩いの場になっている。

その福岡城は2013年4月、AR・VR技術を使った「鴻臚館・福岡城バーチャル時空散歩」を実施している。

内容は、ガイドツアーに参加した人に一人一台のタブレット端末を貸し出し、観光ガイドの解説に沿ってCGで再現した福岡城や鴻臚館の姿を見学してもらうというものだ。

2013年時点でのVRの活用は、お城としては先進的なものだった。「鴻臚館・福岡城バーチャル時空散歩」を担当する、福岡市経済観光文化局観光コンベンション部地域観光推進課の南宏樹さんは次のように話す。

 「もともと鴻臚館跡・福岡城跡エリアの回遊促進をはかるため、平成24年度から企画検討されたものです。当時はAR・VRの活用事例も少なかったため大変だったようですが、奈良県明日香村の『バーチャル飛鳥京体験』の視察を実施して参考にしたそうです」

ガイドツアーでは、まずタブレットで福岡城の構造や、存在の真相が謎に包まれている天守閣と黒田官兵衛・長政を紹介するオープニングムービーを見た後、城内をめぐりながらポイントごとにVRを体験する。

ツアーは好評で、2016年9月からは体験型VR観光アプリの「ストリートミュージアム」と連携。個人のスマートフォンやタブレットでも利用できるようになり、1年間で1万人以上がダウンロードする人気コンテンツとなった。