領民が領主の一族を「でくのぼう」呼ばわりするなどとんでもないことだが、なぜかそれを許してしまう空気を纏っている。そんな浮き世離れしている人物を演じるのは、狂言師・野村萬斎。内面からにじみでる“柔”と“剛”を併せ持ち、独特な存在感を放つ俳優だ。

そもそも成田家は、開戦前に秀吉に降伏することが決まっていた。だが、秀吉の使者として忍城を訪れた長束正家(平岳大)の、権勢を笠に着た横暴な態度に腹を据えかねた長親が、降伏を取りやめ戦うことを宣言。周囲の説得を受けるが、内心戦わずに降伏することをよしと思っていなかった彼らはこれに同調。城内は主戦論でわき上がった。

このシーンでの野村萬斎は、それまでの柔和な態度から一変、口調も激しさを増し、場の空気感を一気に変えてしまう。ここから本筋の戦いに突入することも相まって、芝居と場面が一気に切り替わる象徴的なシーンになっている。

かくして石田三成率いる2万余の軍勢に囲まれた忍城は、緒戦で敵を押し返すことに成功。これには長親の幼馴染みで、戦に強く「漆黒の魔人」と恐れられる正木丹波(佐藤浩一)、丹波をライバル視する豪傑・柴崎和泉(山口智允)、自称天才軍略家の酒巻靭負(成宮寛貴)らの活躍があった。

この戦いのシーンでは、騎馬鉄砲や臭水(くそうず:石油)を使った火攻め、投石器など多彩な戦術を目にすることができる。特に佐藤浩一は馬の操り方が上手く、颯爽と駈ける様や戦闘シーンは見応えがある。

攻めあぐねた石田三成(上地雄輔)は水攻めを決定。全長28㎞に及ぶ堤を築いて忍城を水没させたため、忍城は一転して落城寸前まで追い込まれてしまう。