窮した長親は船で敵陣に近づき、敵味方を前に、船上で田楽踊りをはじめる。その度量の大きさに感服した三成は、ついついその様子を楽しんで眺めてしまう。だが、秀吉が来ると知り態度が一変、あせって長親を狙撃。これを知った長親を慕う領民たちが怒り狂い、堤防を決壊させ、水攻めは失敗に終わる。

この田楽踊りのシーンは、野村萬斎の本領が遺憾なく発揮された名シーンといえる。最初は訝しがって見ていた敵兵も、徐々に踊りに魅了され、最後は皆で踊り狂うことになるのだが、スクリーンで見ているこちらも徐々に惹き込まれていくほどだ。

撮影は北海道苫小牧市に、広大なオープンセットを組んで行われた。城攻めのシーンで使われた「佐久間口」「長野口」、水攻めのために築いた堤、田んぼやあぜ道など、東京ドーム20個分の敷地を使って再現された忍城は圧巻だ。闇の中に浮かび上がる、水に沈んだ忍城の描写は実に見事。

現在、忍城跡は公園として整備されており、当時の沼の名残は水城公園で見ることができる。なお、水攻めに際して石田三成が築いた堤防の一部は、現在も「石田堤」として埼玉県行田市に残っている。映画を見終わった後、きっと足を運んでみたくなるだろう。

お城情報WEBメディア「城びと」
2019年04月初出の記事を再編・再掲載