昨今の世界情勢の影響で小麦価格が高騰しているのはご承知のとおり。ここ日本でも、もちろんそのあおりを受けているわけだが、よく考えてほしい。そう、日本には世界最高水準の“米”があるのだ。

米離れが進んでいるといわれる日本だが、もともとはパンではなく米を食べてきた民族。こんな危機だからこそ、自分たちのルーツに還って米の良さ、おいしさを改めて感じてみたいものだ。

そこで今回は、パナソニック炊飯器の開発拠点である神戸工場へお邪魔し、最新炊飯器の技術を見せてもらった。

パナソニック神戸工場。玄関を入ると、炊飯器をはじめとするパナソニック調理事業のショールームも用意されている。

実はパナソニックは、1988年に世界初のIH炊飯器を世に出したメーカー。2011年に三洋電機と合併してからは、「おどり炊き」という炊き方を追求する炊飯器のリーディングメーカーでもあるのだ。

パナソニックが目指しているのは“かまどを超える炊き技”。どんなに技術が進化しても、いまだにかまどで炊いた味わいまでは到達できていないのが各メーカーの実情なのだが、パナソニックはあえてここで“超える”とハードルを上げたという。そして、そのハードルを超えるために追求したのが前述の「おどり炊き」だ。

炊飯器メーカー各社が、なぜかまどで炊いたごはんの味を目指すのか?それは“粒立ちがよく、ツヤがあり、旨みがある”から。かまど炊きには、こんな言い伝えがある。「はじめチョロチョロ、中パッパ、ブツブツ言うころ火をひいて〜(以下略)」。若い人は知らないかもしれないが、ある程度の年代の人ならなんとなく記憶の片隅にあるのではないだろうか。

これは、かまど炊きの火加減のことを言っている。「煮る・焼く・蒸す」の細やかな調整を、わかりやすく表現したものなのだ。つまり、これを現代の炊飯器で再現すればかまど炊きのごはんと同じものが作れるわけだが、それは容易ではない。なにしろ、かまどは約1000℃を超える大火力。短時間で吹きこぼれるほどの沸騰状態になり、鍋底から上層へ激しい対流が生まれて沸騰泡が上がり、その中で米がおどることで一粒一粒がムラなく加熱される。この米がおどる状態を再現したのが「おどり炊き」だ。

もちろん炊飯器では炎と同等の温度は出せないし、かまどと違って吹きこぼしはNG。そのためパナソニックが採用したのが、ふたから底まで6段のIHを細かく配置した「大火力IH」だ。これは一気に熱を発するのではなく、前述の言い伝えの火加減を再現するために絶妙なタイミングで調整し、ベストな火加減を生み出す仕組み。さらにパナソニックでは、これに加え可変圧力で加圧と減圧をコントロールし、炊飯器内で爆発的な沸騰を発生させることで、かまど炊きのごはんと同等、もしくは現代の味覚という点ではかまど炊きを超えるおいしさを生み出した。

今回の取材では、なんと本物のかまど炊きとおどり炊きの食べ比べを体験させてもらえることに。この日の神戸の気温は28度で十分暑かったのだが、薪に火をつけると、あっという間に辺りは“暑い”から“熱い”状態に。もうもうと立ちこめる煙の中、わかりやすくスケルトン仕様になった釜の中は瞬く間に沸騰。そしてしばらくすると、たしかに釜の中で米がおどっていた。

続いて、パナソニックの炊飯器「おどり炊き」。こちらも炊いている状態がわかるようにスケルトン仕様になっており、我々取材陣が見守る中で炊飯が行われた。そしていよいよ沸騰し始めたら加圧して、釜の中は105℃に。続いて減圧すると、釜の中は爆発的に沸騰。その威力に押され、確かに釜の中で米はおどっていた。

かまど炊きとおどり炊きの表面。どちらもところどころに穴が開いているのがわかる。これは「カニ穴」と呼ばれるもので、米がおどった証なのだそう。

左がかまど炊き、右がおどり炊きのごはん。どちらも粒立ちがよく、旨みがある。実にうまい。あえて違いを挙げるとすれば、薪で炊いたかまど炊きはスモーキーな味わいで、ところどころにおこげが。おどり炊きは煙に触れていないのでスモーキーさはないが、一粒一粒が完璧に同じ状態で炊き上げられているといったところか。

かまど炊きのごはん
おどり炊きのごはん

この取材で感じたのは、炊飯器が進化したのではなく、もともとの炊き方と同じ位置に炊飯器がようやく並んだということ。そして現代人の味覚を考慮すると、かまど炊きを超えた炊飯器が登場したことを素直に喜びたい。

パナソニック
スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器
SR-VSX1シリーズ
https://panasonic.jp/suihan/p-db/SR-VSX101.html