学生時代の先輩から冬の北海道でワーケーションしないかとのお誘いが。静かな環境で集中できる? それとも寒すぎて仕事にならない? 3泊4日の宿泊体験をレポートする。

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2022年秋、高校時代の先輩から突然メッセージが来た。
「11月〜1月のどこかで美深町にワーケーションしに来ない?」

美深は北海道の道北地域、旭川と稚内の真ん中あたりにある町で、先輩は数年前からここに住んでカヌーのガイドや観光事業の手伝いをしているとのこと。
観光事業の一環で古民家をリノベーションしたワーケーション施設をつくったから、そこのモニターをやってみないかという話らしい。
幸いあまり場所に縛られず仕事をできる職業なので「行きます!!」と返信。どうせなら冬の寒い時期の方が面白そうと思い、1月に3泊4日でお邪魔することにした。


アクセスの悪さに気づかないまま出発前夜に


自分はもともと旅行の計画や準備はほとんどしないタイプだが、今回は旅行ではなくワーケーション、一箇所に滞在するだけである。
いつにもまして何も考えないまま前日を迎えてしまった。旭川までの航空券はちゃんと買ったし、旭川から美深までは電車でいけるはずだし、大丈夫でしょ。

すると先輩から「美深まで自力で来れそう?」と連絡が。心配になって調べてみると、朝10時には旭川駅に着くのに美深まで行ける電車は13時半までない。美深到着は15時だ。滞在時間を増やそうと朝早い飛行機をとったのにこれでは意味がない。まさかこんなに本数が少ないとは!
先輩に相談すると、途中の名寄までなら電車の本数が多いからそこまで車で迎えに来てくださるとのこと。ありがとうございます……!


いざ、美深へ


朝7時、羽田空港発の飛行機で旭川へ。旭川空港の外に出るとすぐに電光掲示板があり、気温が-10℃だということを教えてくれた。まだ防寒着をちゃんと着てないので流石に寒い。
空港から旭川駅までバスで40分、そこから名寄駅まで電車で1時間ちょっと。先輩の車に乗せてもらって30分ほどで美深町へ。迎えに来ていただいたおかげで昼過ぎには美深町へ着くことができた。
ここまでの交通費は航空券約10,000円 + バス代750円 + 電車代約2,000円で約13,000円。旭川から美深まで特急で行ったとしても4,000円以下なので、この時期なら東京〜美深は片道15,000円程度で済みそうだ。移動時間はなかなかだが意外と高くない。


今回滞在した古民家


これから4日間お世話になる建物に到着。外観は普通の古い民家だが、中に入ると壁も床もピカピカだ。
1階はキッチン・ダイニングに広々としたリビング、そして作業スペース。床や家具の多くは木材でできていて、温かみがある。


キッチン・ダイニング


広々としたリビング


2階には寝室が2つあり、どちらもベッドは2つ。宿泊人数は基本4人までということになる。


2階の寝室


建物の見学を一通り済ませたので早速仕事道具を広げる。そう、今回は観光旅行ではなくワーケーションに来たのだ。仕事をせねばならない。不本意ながら。

電源は取りやすいし、Wi-Fiもちゃんと飛んでおり、速度も申し分ない。ワーケーション用の施設なんだから当たり前でしょと思うかもしれないが、「電源あり!Wi-Fiあり!」と謳いながらコンセントの口がデスクから離れた位置にしかないとか、ネット回線がポケットWi-Fiしか用意されておらず速度も全然出ない、みたいな施設や貸し会議室は結構多い。


作業スペース


しっかり働いた後、先輩に連れられて「Bibliothèque」というピザ屋さんへ。東京から移住してきた夫妻が古民家を改装してはじめたお店だそうだ。石窯で焼いたピザはもちろんほかのメニューも大変おいしい。オーナーご夫妻の人柄含め、とても居心地の良い空間だった。


ピッツェリア Bibliothèque


ダイヤモンドダストが舞う中、ひたすらデスクワーク


2日目。前日の天気予報はいまいちだったのだが、起きたら快晴。外に出るとなんとダイヤモンドダストが出ていた。めちゃくちゃ綺麗だ。
そのまま散歩に出かけたいところだが働かなければならない。バケーションではなくワーケーションなので。


お出かけしたくなる快晴


青空を横目にリモート会議に出たりコードを書いたり、ひたすら仕事をして過ごした。ダイヤモンドダストが出るぐらいなので外気温は非常に低いが、家の中はストーブでしっかり暖かく仕事は捗った。


リモート会議中の筆者


せっかく綺麗なキッチンがあるのでこの日の食事は全て自炊。適当に買ってきた魚や肉を適当に調理しただけで美味しい。さすがは北海道。
スーパーもコンビニも歩いていける距離にあるので買い出しには困らない。気温は基本的に氷点下だがきっちり着込めば大丈夫。ちなみに美深町のセブンイレブンは日本最北のセブンイレブンだそうだ。


リノベーション体験


3日目は仕事の合間に1時間ほどリノベーション体験。
トイレ窓の二重化と物干しスペースの塗装をやらせてもらったが、必要な資材の買い出しや塗らない部分の養生など面倒な工程は事前に済んでおり、楽しいところだけつまみ食いさせてもらう感じであった。ありがとうございます。
準備と片付けをやってもらえるDIY、最高!


至れり尽くせりのリノベーション体験


トイレの窓を二重窓に


夕方からは先輩と一緒に施設を運営している、観光協会の小栗さんという方にインタビューをさせてもらった。小栗さんは移住者を増やすために観光事業をされているとのこと。


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インタビューが終わったらそのまま「Restaurant BSB」というクラフトビール醸造所併設のレストランへ。ここのビールはすべて白樺からとった樹液が入っているらしい。

レンガ倉庫を改装したRestaurant BSB(写真は夏に撮影したもの)


美味しいビールをいただいたあとは締めのラーメンだ!ということで、醸造所のオーナーも引き連れ「麺カフェItosugI」へ。締めのラーメンと聞いて連れてこられたのだが酒もつまみも大変充実しており、がっつり二次会になってしまった。


ItosugIの食事 つまみもラーメンも美味しい


醸造所のオーナーはIT企業をやめて東京から美深に移住し、事業を始めたとのこと。実際に美深で生活している方の話をお酒の席で聞けたのは貴重な体験だった。街づくりや田舎暮らし・都会暮らしについて延々と話が盛り上がる。
酔っ払って小っ恥ずかしいこともたくさん言った気がする。若造の相手をしてくださり、ありがとうございました。


最後に雪板遊び


4日目、最終日。なんと気温が0℃を超えた。ダイヤモンドダストが出た日の最高気温は-7℃だったからものすごい差だ。
先輩が雪板遊びに連れてってくれるというので、お昼に仕事を切り上げ河原へ向かう。
雪板というのはビンディングもエッジもない超シンプルなスノーボードみたいなもので、板以外に特別な装備も必要なく気軽に楽しむことができる。
自分は初めてだったのだが、正直、河原の坂を降りるだけじゃすぐ飽きるだろうな〜と舐めていた。実際にやってみたらめちゃくちゃ楽しく、帰りの時間ギリギリまで遊んでしまった。


河原で雪板遊び


長靴で板に乗るだけで何も固定されていないので最初はとにかくコケる。だんだん慣れて新雪の上ならカーブができるようになったが、スコップで整地したコースでは最後まで上手く曲がれなかった。悔しい……!


また来ます!


泣く泣く雪板遊びを切り上げ、帰り支度を始める。
幸い帰りは良い時間に電車があったので、名寄まで送ってもらうことなく美深駅から電車で帰ることができた。


美深駅のホーム


なんとなく分かっていたことではあるが、3泊4日でワーケーションは無茶だった。
仕事をする環境としては素晴らしかったが、ずっと働いていたら「一体何しに来たんだ……」と残念な気持ちになるし、遊びに出ると仕事が回らなくなる。
自分のような旅行好き、アウトドア好きな人間がワーケーションとしてどこかに行くなら最低でも1週間は必要だろう。滞在中にちゃんと「休日」を確保できないとダメだ。

美深町、素敵な町でした。しっかり日程確保して、また必ず来ます。


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