株式投資を始めようと思い、人気ゲーム機「ニンテンドースイッチ」を展開している「任天堂」の株を買おうと思ったら......1株500万円以上!? 思わぬ現実を突きつけられて、愕然とした方も多いだろう。しかし、「そんな方に朗報がある」と”日本一バズる、経済アナリスト”の馬渕磨理子氏は語る。一体、何が起ころうとしているのだろうか。

人気の「任天堂」の株が買いやすい値段に


「任天堂」が10月1日に株式分割(かぶしきぶんかつ)を行い、株式を10分割にする。これにより株価も約10分の1になるため、最低購入資金も約10分の1になる。

つまり、これまで任天堂の株主になるには最低でも約500万円必要だったのが、10月1日から約50万円でなれるのだ。

手元資金が50万円からでも高い…と感じる方も多いかもしれない。しかし、元々500万円以上必要だったことを考えれば、随分と手が届きやすくなるのは間違いない。

ちなみに国税庁によると、令和2年の正規雇用の平均給与所得は約496万円。そう考えると、現在の任天堂の株式は普通のお給料ではとても手が届きそうにない。しかし、1対10の株式分割を行えば「庶民の株」に近づくと見ることもできる。

そもそも東証は、売買ができる望ましい水準として「5万円以上50万円未満」と示しており、任天堂はその方針に沿うように動いていると言える。また株式分割は日本を代表するトヨタ自動車も積極的に行っているため、株式投資を考えている人はその“カラクリ”を知っておいて損はないだろう。

そこで、この株式分割とは何か。そして、どんなメリットがあり、株式市場でどのような影響が生じるのか見ていこう。


「保有株数」と「株価」の関係


そもそも株式分割とは、文字通り1株をいくつかに分割し、発行済みの株式数を増やすことである。今回の任天堂は10分割だが、実際は2分割にするケースが多い。

理解を深めるため、任天堂の株式を100株持っていることを例に考えてみよう。まず株式分割前の資産額はこのようになる。

「保有株数」×「株価」=「自分が保有する資産額」
100株 × 5万円 = 500万円

「株価」は毎日動いているので、この値幅で利益を出すことが株式投資の要諦と言える。また「保有株数」は自分でどんどん資金を投入して買い足さない限り増えないが、今回の任天堂のように、株式分割が実施されれば、何もしなくても保有株数が増える。

今回の任天堂の株式分割は10分割なので、もともと1株だったものが10株になり、保有株数は分割前から10倍になる。その代わり、1株500万円だった株式が10分割されるため、株価も10分の1になる。すると、理論的には株式を持っている人の資産額は何も変わらない。

「保有株数」×「株価」=「自分が保有する資産額」
1000株 × 5000円 = 500万円

損も得もしない、これが理論な話だ。しかし、現実では株式分割前に株を持っていると含み益が生じて「利益が出る」こともある。ここに、株式分割の重要な意味が隠されている。


株式分割とは、投資の民主化


そもそも株式分割の狙いは、価格が下がることで投資家が購入しやすくなることにある。投資資金が少ない層にも裾野を広がり、「これまで高くて手が出せない……」と思っていた人が、優良企業の株価が「お手頃価格」になることで投資するようになる。これにより、株式を購入する人が増えるのだ。

すると、何が起きるだろうか? 人気が高まったり、たくさんの人が購入することで株価は上昇する傾向がある。オークションと同じで、人気が高いものは価格が上がる。みんなが欲しいものには価値があり、その原理は株式市場にも当てはまる。

つまり、株式分割は「株価が上がるシグナル」になりうるのだ。

株式分割前から保有している投資家にとっては、株価上昇の恩恵が得られるため、株式分割は「株主還元」の一環だとも言われている。企業から既存投資家に対してのメッセージは「これまで、保有してくれてありがとう。これからもよろしくね!」といったところか。

そして、これから投資家になりたい人に対してもこんなメッセージが込められている。

「株価を買いやすい値段まで下げたので、ぜひ当社に投資してください。そして、この先も企業の成長を投資家として共に見守って欲しいです」


画像:photoAC


このメッセージには、今後の企業成長に対する自信も含まれている。

株式分割は、分割する割合やそれによって変化する株価に着目すると、理論的な価値は変わらない。

しかし、現実の株式市場は理論通りにならない。これは実態経済も金融市場も同様であり、だからこそ経済は面白いのだ。

任天堂の株式分割まであと2ヶ月半。投資を検討する時間は、まだ残されている。そして株式分割のカラクリを知ることで、これからも有益な情報をキャッチしていただきたい。

文/馬渕磨理子