漫画やドラマが大ヒットした「正直不動産」でも取り上げられた地面詐欺師が近年、増加傾向にあるという。実際に詐欺に直面した相続や資産に関するコンサルティングを行う株式会社国土工営の担当者にその実態を取材した。


地面師詐欺が増えている?


「地面師」とは、土地の所有者になりすまし、不正に土地を売却してお金を騙し取る詐欺師のことだ。

国土工営の担当者によれば、近年、地面師詐欺は増加しているという。その理由と実態について、実際に地面師詐欺に直面した担当者は次のように話す。

「地価が上がっていることで、地面師の“旨味”が増えていることが要因でしょう。狙われやすいのは、地価が高いエリアの手付かずの土地。地面師詐欺とは、簡単にいえば『空き巣』のようなものです。誰かが住んでいたり、抵当権がついていたりする土地は、地面師にとって狙いにくい。手入れされていない更地がターゲットになりやすいと考えられます」


地面師詐欺発覚の経緯


被害にあった土地は、まさに「地価が高いエリアの手付かずの土地」だった。東京23区内の100坪を超える更地で、その実勢価格にして2億円を超える。所有者は、都内に多くの土地を所有する資産家。当該土地は、1年前にアパートを解体し、活用方法を検討している間に雑草が生い茂る状態になっていたという。


※写真はイメージです


地面師詐欺が発覚したのは、国土工営が当該土地の謄本をチェックしていたときだった。

「所有者様に活用方法を提案しようと最新の謄本を取り寄せて確認していました。謄本には、1週間前に大阪の人物に売却した履歴が。最初は『何か事情があって売却されてしまったのか……』と思っていたのですが、所有者様とは話が噛み合わない。『地面師詐欺』という言葉が頭をよぎったときには青ざめました」

所有者も当初「訳がわからない」と混乱している様子だったという。それも当然だ。謄本には、見ず知らずの人物とまったく身に覚えのない土地の売買契約をした履歴が残っていたのだから……。


地面師詐欺の手口


すぐさま、国土工営の顧問弁護士が調査に乗り出した。その結果、登記上、大阪の人物から2度にわたって当該土地が転売されていることが発覚。買主は、すべて地面師詐欺グループの法人や個人であることがわかった。

「地面師が転売を繰り返す理由は、足を付きにくくするためです。売買を繰り返すたびに履歴を追うのが難しくなるので、すぐに善意の買主に転売するのではなく、詐欺グループ内で売買を繰り返す手口はよく見られます」

さらに調査を進めると、所有者から購入したことになっている大阪の人物は、所有者の運転免許証を偽造して取引を成立させた模様。国土工営によれば、本人確認書類さえ偽造できれば、印鑑登録を新しいものにし、印鑑証明を取り寄せることができるという。その結果、所有者になりすまして不動産の売買手続きが可能になってしまうのだ。

後になってわかったことだが、登記名義を書き換えたのは、地面師詐欺グループの弁護士だったという。司法書士や弁護士など、悪徳な士業が地面師詐欺を先導することも少なくない。


所有権を取り戻すまで2年……


所有権を取り戻すまでにまず行ったのは、仮処分申請。これは、さらなる転売が繰り返されないようにするためだ。

不幸中の幸いにも、当該土地はまだ善意の買主の手には渡っていなかった。善意の買主とは、地面師の一味ではなく、何も知らない状態で土地を購入する買主のこと。「もしも善意の買主に土地が渡っていたら、所有権を取り戻すことは難しかっただろう」というのが顧問弁護士の見解だ。

その後、偽の所有者と売買契約を取り交わした大阪の人物、そして2度の転売先の相手方、3者それぞれを相手取った裁判が開始した。3者ともに悪意の買主であったことから、所有権は無事に所有者に戻ったものの、その間およそ2年。莫大な時間と費用がかかったという。

本案件は、偽造された運転免許証を信じた区にも落ち度があったことから、所有権を取り戻すにあたって不動産取得税は免除。しかしながら、登録免許税はしっかり課税されたという。

不正に売買された自分の土地を取り戻す。

当たり前のことを遂行するのに、時間も手間も税金もかかるというのが現実なのだ。それでも本案件は、不正な売買から1週間でその事実を知ることができたこと、弁護士が迅速に対応したことで被害は最小限に抑えられた。所有者はその後、所有権が戻った当該土地にすぐさまアパートを建築したという。

地面師詐欺は「空き巣」のようなもの……更地を持て余している場合は、十分に気をつけていただきたい。

取材・文/亀梨奈美