多くの男性が毎日のように行っている髭剃り。電動にしろ手剃りにしろ、たいていの人は独学で覚えた剃り方をなんとなく続けてきているだろう。だが、実は髭剃りには正しい剃り方があり、それを実践することで肌荒れなどを防ぐこともできる。髭剃りのプロフェッショナルである株式会社カミソリ倶楽部の常務取締役・竹内教起さんに、あらためて正しい髭剃りの方法を聞いた。

6枚刃だからといって、深剃りできるわけではない


髭剃りには2種類ある。1つは電気カミソリ(シェーバー)を用いた電動式、もう1つがT字カミソリ等による手剃り式だ。どちらも同じ「髭剃り」の手段ではあるものの、電動と手剃りでは原理が大きく異なっている。

「電気カミソリは、生えている毛を網刃の目に入れて、その中のカッターで切るという仕組みです。そのため、そもそも網目に入らないくらい柔らかな産毛などは処理できません。“剃る”というよりも、草刈りなどの“刈る”に近いイメージです。
一方で、文字どおり髭を“剃る”のが手剃りです。皮膚の角質ごと、毛を剃り落としていきます」(竹内さん)


一般的なT字カミソリと電気カミソリでは、ツールとしての原理がまったく異なる

電動と手剃りには、それぞれメリットとデメリットがある。

たとえば、毛をしっかりと剃れるのは、やはり手剃りのほう。電動は網目に入った部分しか処理できないため、どうしても毛の根本が残ってしまうのだ。最近は電動カミソリも進化してパワフルになっているが、それでも原理的に剃れ具合では手剃りに敵わない。

ただし、刃物を直接肌にあてる手剃りには、常に怪我の危険性があるうえ、人によっては肌荒れを起こすこともある。そこで、カミソリと肌の摩擦を減らすためにジェルやフォームを使うわけだが、その分手間や時間がかかってしまうのが手剃りのデメリットといえるだろう。

また、気になるのがカミソリの選び方。1枚刃から6枚刃まで刃の数もさまざまだが、竹内さんによると「刃が多いからといって深剃りできるわけではない」という。

「刃が多いことによるメリットは、肌への負担が少なくなることです。同じボックスの中に刃が多く入っているわけですから、刃が多いほど圧力が分散されます。その分、肌に優しく剃れるのです」(竹内さん)

ただ、カミソリの刃は消耗品なので、定期的にカートリッジを交換する必要がある。刃の数が多いほどカートリッジは高価になるため、何枚刃を使うのかは自分の肌や財布と相談して決めたい。


カミソリの刃の枚数が多いほど、肌への負担が減る

では、電動と手剃り、それぞれの特徴を踏まえたうえで、正しい髭剃りのやり方を聞いていこう。


竹内さんが常務取締役を務める「カミソリ倶楽部」は、明治36年創業のカミソリを中心としたメンズグルーミング専門店。約120年もの間で培ってきた専門性を活かし、「髭剃り」技術や用具の監修を行っている(https://www.kamisoriclub.co.jp)


電気カミソリは「シャワーを浴びる前」がベスト


まず、非常に重要なのが「プレシェービング」だ。これは髭剃りを行う前準備のことである。

「手剃りで大事なのが、先に毛を濡らすことです。というのも、実は髭の毛は銅線と同じくらいの硬さがあって剃りにくいからです。濡らすことにより水分を含んだ毛は柔らかくなり、カミソリで切断しやすくなるんです。

たとえば床屋さんで髭剃りをしてもらう場合、先に蒸しタオルをあてますよね。あれは髭に水分を与えているわけです。ただ、ご家庭で髭を剃る分には、蒸しタオルまでやらなくても、顔を洗うだけで十分です」(竹内さん)


T字カミソリで髭を剃る前は、必ず濡らして髭に水分を与えよう


ちなみに冬場の場合は、水よりもお湯で洗顔するほうがいいという。

「夏は水で構いませんが、冬に冷たい水で顔を洗うと肌がキュッと締まってしまい、髭剃りで痛くなることがあります。髭剃り後に水ですすいで毛穴を引き締めるのはいいと思いますが、髭剃り前はお湯をおすすめします」(竹内さん)

一方で電気カミソリの場合は、逆に水やお湯をつけない乾いた状態で剃る方がいいという。

「電気カミソリは網目に髭を入れないといけないので、水を含ませて柔らかくするのは逆効果なんです。なるべく硬い状態で毛を立たせて網目に入れるためにも、洗顔の前に剃るようにしましょう」(竹内さん)

朝にシャワーを浴びる際、ついでに髭を剃る人も多いはず。その場合、手剃りならシャワーを浴びた後か、シャワーを浴びながら剃るのがいいだろう。昨今は防水タイプの電気カミソリも数多く販売されているが、電動の場合はシャワーを浴びる前に剃るように心がけたい。


電動カミソリの場合は、シャワーや洗顔の前に行うのがベター


洗浄力が強すぎる潤滑剤はNG


次に大切なのが、手剃りの場合は潤滑剤を必ず使うことだ。「市販品ならジェルやフォームでもいいし、石鹸でも構わない」と竹内さんは指摘する。

「僕が使っているのは、植物性の石鹸。実はジェルやフォームでなくても問題ないんです。そもそも、それらがなかった時代の人は石鹸を使っていたわけですからね」(竹内さん)

ただし薬用石鹸など、洗浄力の強すぎるものは使わないほうが無難だという。肌を強力に洗浄したところにカミソリを滑らせると、肌をダイレクトに刺激してしまうからだ。ちなみに、ジェルとフォームについては好みで選んでいいそうだ。


肌への刺激を低減させるためにも、なるべく肌に優しい石鹸などを利用しよう

「順剃り」をしてから「逆剃り」をすること


手剃りの場合、剃る方向にも注意したい。毛の流れに沿って剃る「順剃り」と、毛の流れに逆らって剃る「逆剃り」があるが、必ず「順剃り→逆剃り」の順番で行うべきと竹内さんは言う。

「逆剃りを先にやってしまうと、伸びている髭を引っ張る形になってしまいます。すると、自分の肌も一緒についてきてしまうんですね。すると、カミソリの刺激が大きくなり、カミソリ負けの原因になってしまいます。

大切なのは、まずは順剃りで長い髭を落としてあげること。そのあとにもう一度潤滑剤をつけて、残った毛を逆剃りで剃るようにしてください」(竹内さん)


髭を剃るときは、必ず「順剃り」→「逆剃り」の順番で

さらに気をつけたいのが、お酒を飲みすぎた翌日の髭剃りだ。

「アルコールを摂ると脱水して、肌から水分が失われます。お酒が完全に抜けていればいいのですが、水分が不足気味の二日酔いの状態で逆剃りしてしまうと、いつもよりも肌を痛めてしまうのです。

なので、お酒を飲んだ翌日は順剃りだけにするか、または電気カミソリで軽く剃る程度にしたほうがいいでしょう」(竹内さん)


お酒を飲みすぎた翌日などに逆剃りをしてしまうと、肌をいつもより痛めてしまう


顔の“溝”をしっかり保湿しよう


髭を剃ったあとのケアも重要だ。特に冬場は乾燥しやすく、肌荒れを起こしがち。そこで、髭剃り後はすぐにアフターケアとして保湿を行いたい。

「顔の皮膚はシワなどもあり、凸凹しているものなんです。そういった溝部分をしっかり保湿してあげないと、肌がカサカサしてしまいます。

若いころはまだ皮脂がたくさん出るので天然の保湿ケアができますが、30代後半くらいからはもう皮脂が少なくなってくるので、保湿はしっかりとしてください」(竹内さん)



保湿といえば化粧水や乳液などさまざまな選択肢があるが、その点については髭剃りに関係なく、自分の肌に合ったものや好みで選んで問題ないという。

すでに化粧水や乳液を使っているなら、それを髭剃りのアフターケアとして使えばいいし、ふだん保湿をしていないなら、これを機に使い始めてみるのもいいだろう。

*********

電動と手剃りの違いや、髭剃りの前後で行うべきことなど、意外と知られていない正しい髭剃りのやり方。髭のプロフェッショナルである竹内さんのアドバイスをもとに、日々の髭剃りを見直してみては?


取材・文/山田井ユウキ