
温泉、名産品、和食…日本文化がずらり
当初2020年4月に開業予定だった「羽田エアポートガーデン」は、コロナ禍での延期を経て、2022年12月、2つのエアポートホテルや温泉施設などが先行オープン。
ホテルは、国内空港直結としては最大規模の1717室の客室数で、施設内にある「天然温泉 泉天空の湯 羽田空港」は宿泊者以外でも利用可能だ。
日帰り入浴は大人4800円(タオル、館内着、岩盤浴付き)と高価だが、地下からポンプでくみ上げる天然温泉や好天時には富士山を臨むロケーションが魅力。
空港直結の温浴施設としては、中部国際空港(2023年1月末現在臨時休業中)、新千歳空港に次ぐ国内3カ所目だ。
そして1月末、約80店舗の物販店と飲食店がそろい、約3年ごしの全面開業となった。


日本の伝統色を使用した暖簾(のれん)がかかり、施設全体に和を感じさせる意匠が散りばめられている。
ショッピングゾーンは主に、日本文化の名産品が並ぶ「ジャパンプロムナード」、お土産から旅の必需品までを取りそろえた「羽田参道」、美容用品など快適な旅をサポートするアイテムが並ぶ「ハネダコレクション」、日本食を中心としたレストランが入る「ハネダフードセレクション」で構成。
今回は、「羽田エアポートガーデン」の数ある店舗の中から、限定商品などの“ここだけ”を楽しめるお店を中心に紹介していこう。
福井洋傘
(2F ジャパンプロムナード)
1972年に福井県で創業した傘専門店「福井洋傘」。これまでは百貨店などでの催事出展やオーダーメイドでの生産を承っていたが、今回、初の直営店をオープン。
色とりどりの織物や染物を熟練の技で仕上げた洋傘は実に華やかだ。傘は古来より運気を広げる「末広がり」の意味を持つ縁起物といわれ、贈答品としても人気があるという。
繊維やメガネフレームなどの地場産業を活かし、一つひとつ丁寧に手づくりされる傘には、日本の豊かな文化を感じられる。



MSPC PRODUCT
(2F 羽田参道)
鳥居を模したデザインの羽田参道の入口に位置するのが、大阪市に拠点を置くバッグブランド「MSPC PRODUCT」。工場での製作風景を再現したジオラマが目を引く。
国内自社工場で製作されたオリジナルプロダクトは機能美を追求したデザインで、海外のファンも多いという。
羽田店限定カラーの「GAME バックパック」は、背負いながら荷物が取り出しやすい仕掛けを施した革製の軽量モデル。旅にも日常にも最適な、世界に誇れる“マスターピース”が満載だ。



山古志本舗
(2F 羽田参道)
日本の原風景が広がる美しい山あいの集落、新潟県長岡市山古志(旧山古志村)で生産されているコシヒカリ「たねすはら米」と、その米を使用した味噌や甘酒などの食品を取りそろえる「山古志本舗」。
たねすはら米は、アジア圏を中心に世界中に多くのファンを持ち、「羽田店のオープンを知った海外の常連のお客様から『お店に行くために日本に行きます』とのメッセージも届いているんです」とスタッフはうれしそうに話す。
今後、店内のモニターを通じて山古志発祥の錦鯉の販売も開始予定だという。スタッフから山古志の暮らしについても話を聞けて、まるで新潟に訪れた気分になれる温かい店だ。



KOKUYODOORS
(2F)
「日本の文具と出合うきっかけになる場所を」がコンセプトの「コクヨ」の直営店。
IoTを活用した文具の自動販売機や使い心地を体験できるコーナー、工場直送の原紙ロールへの試し書きと、文具の新しい買い方を提案している。
土産需要を意識した商品もそろえ、空の旅を想起させるショップ限定アイテムも扱う。社内に残されていた古い便箋や伝票など、1905年創業のコクヨの歴史を知れる小さな展示も必見だ。
見せ方一つで無機質な文具の印象が、ガラッと変わる。




紀ノ国屋
(2F)
関東圏ではおなじみのスーパーマーケット「紀ノ国屋」。羽田空港では第2ターミナルに次ぐ、2店目の出店となる。
ホテルの入口近くに位置するため、宿泊客に向けて日本産のワインやクラフトビールなどのドリンク類や、酒に合う食品のセレクトに特に力を入れる。
国内外から幅広く集めたクラフトビールの棚はさすが紀ノ国屋。人気の紀ノ国屋ブランドの焼菓子やスナック菓子も豊富だ。



五代目 花山うどん
(1F Haneda Food Selection)
1894年に群馬県館林市で創業したうどん店。群馬県内のほか、東京・銀座や日本橋などにも店舗を展開し、行列になることも多い人気店だ。
県産の小麦を使用した幅広の平たい麺のビジュアルに驚く「鬼ひも川うどん」が名物で、全国の名産うどんが集結する「うどん天下一決定戦」で3連覇を達成している。
二代目が昭和30年頃まで提供していたがしばらくメニューから消えていた鬼ひも川うどんを、当代の橋田高明さんが約50年ぶりに復活させたという。
館林が舞台のおとぎ話、分福茶釜にちなみ、たぬきの鉄器で提供されるのもユニークだ。「群馬県の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい」と橋田さんは話している。


海外旅行のときにはもちろん、休日に訪れても一日中楽しめそうな新スポットだ!
羽田エアポートガーデン公式HP>>
取材・文/高山かおり
撮影/等々力菜里