カタールW杯で日本代表の中心として奮闘する守田英正。W杯での活躍の裏にはポルトガルに海外移籍しての着実な成長があった。ポルトガル現地メディアや識者、ファン、監督からの守田の評価がうなぎのぼりだという。ポルトガル在住の井川洋一氏がその現状を伝える。

ポルトガルで「中盤のボス」に君臨


「ポルトガルでは彼のような選手を、パタラオン・オ・メイオカンポ(中盤のボス)と呼ぶんだ。守田(英正)は今のスポルティングの中心だと思う」


ポルトガルリーグでも評価急上昇中 写真:REX/アフロ


かつて筆者が働いていた『UEFA.com』の元同僚で、現在はポルトガルのフットボールデータサイト『GoalPoint.com』を運営するペドロ・ゴンサルベス記者は、日本代表MFの守田英正についてそう話した。現在27歳の守田は“ミッドフィールドのパトロン”、つまり“中盤のボス”という意味の言葉で語られるようになっているというのだ。

今季からポルトガルの3大クラブのひとつ、「スポルティングCP」に移籍した守田は、実に重要な役割を任されている。なにしろ、昨季までの中盤に君臨したジョアン・パリーニャとマテウシュ・ヌネスという二人のポルトガル代表選手がどちらもプレミアリーグのクラブに引き抜かれ、チームの中央に大きく空いた穴を補填しなければならなかった。

守田が加入した時点でヌネスはまだチームに残っていたが、その後クラブ史上最高額の4500万ユーロ(約64億円)の移籍金でウルヴァーハンプトンへ移籍。このポルトガル代表MFは、現地の識者やファンの誰もが「いずれワールドクラスになる」と信じて疑わない凄まじいポテンシャルを宿す選手だ。


現地記者も守田のプレーに一目惚れ


守田自身、「僕も6番(守備的MF:昨季のパリーニャの背番号)として加入したと思っていましたが、8番(より攻撃的なセントラルMF:昨季のヌネスの背番号)の選手が移籍していったので。自分としてはどっちもできると思っています」と話していた。


中盤をユーティリティーにプレーできる 写真:森田直樹/アフロスポーツ


スポルティングのルベン・アモリム監督も同様のことを言っている。そして前述のゴンサルベス記者は次のように続けた。

「私は仕事柄、少なくともポルトガルの1部リーグの状況を網羅しなければいけないので、守田のことは2021年1月に川崎(フロンターレ)からサンタクララに入団した時から知っていた。そして、彼のプレーを一目見てからは、興味を持って追いかけるようになったよ。とても知的で、試合展開を適切に予測し、味方のポジションが常に頭に入っている。テクニックやキックの精度も高いので、パスワークでチーム全体に良いリズムを生み出せる選手だ。

個人的には、6番よりも8番が向いていると思う。守田は出足の鋭いプレスなどで、ディフェンス面の貢献もできるが、ちょっとファウルと警告が多い気がするし、(190cmの)パリーニャのようなサイズとフィジカルの強さはない。だから6番は(マヌエル・)ウガルテに任せて、守田は高いスキルと走力を生かし、攻撃面で違いを作るような選手を目指したらいいと思う」

それは守田自身も感じているところで、チャンピオンズリーグのトッテナムとのホームゲーム(2-0の勝利)の後に、「ボールを運ぶことや得点に絡むこと、相手を剥がすことを求められている」と語っている。「まだまだできていないことの方が多いですけど」と、しっかり足元を見つめながら。

今やチームの重要な選手のひとりに


守田にできることと、そうでないことを的確に説明してくれたのは、『CNNポルトガル』のジョアオ・パイバ記者だ。

「守田は必ずしも、パリーニャの後釜候補で加入したわけではないと思う。なぜなら、おそらくスポルティングは昨季、パリーニャが離れていくことを予想して、特に後半戦はウガルテを6番で起用することが多かったんだ。だから率直に言うと守田は当初、先発候補ではないと見られていた。でもヌネスが移籍したことで、守田に白羽の矢が立ったわけだ。そして彼はこれまでのところ、うまくやっていると思う。

ただしヌネスのように、中盤で相手ボールをパワフルに奪い切り、そのまま豪快に持ち運び、強烈なシュートを決めるようなプレーは、守田にはできないと思う。少なくとも今のところはね。でも、逆に守田には別のクオリティーがある。創造性とスキルには特別なものを感じさせるし、特に前方へのパスはチームの攻撃の生命線になっている。加えて、相手の懐に鋭く入る守備もいい。

守田が昨季まで所属していたサンタクララとスポルティングでは、中盤の選手に求められることが違うので、当初は彼がどこまでやれるか、私たちにもわからなかった。しかし、その能力とハードワークでレギュラーの座を勝ち取り、今やチームの重要な選手のひとりになっているね」


ポルトガル人指揮官も守田をベタ褒め


こうした意見は、ポルトガルのメディアや識者、ファンに通じるものだ。そして中には、「守田はよくやっている。でも昨季の中盤と比べると、今季のスポルティングは見劣りする」という意見もあったりする。共にポルトガル代表の6番と8番の穴は、当然ながら、簡単に埋まるものではない。

それでも守田がリスボンの名門で、刺激に満ちた充実の日々を送っているのは確かだ。国内にはベンフィカとポルト、それにブラガという同レベルのチームが存在し、チャンピオンズリーグではイングランド(トッテナム)やドイツ(鎌田大地と長谷部誠が所属するフランクルト)、フランス(マルセイユ)のクラブと鎬を削っている。間違いなく成長の余地は大いに残されており、残り2カ月を切ったとはいえ、彼がカタールW杯が始まるまでに進歩を遂げれば、それは日本代表にも還元されるはずだ。


日本代表でも中核を担う選手に成長した 写真:ムツ・カワモリ/アフロ


「そのためには、多くの日本人選手が悩まされてきたコミュニケーションを、積極的に取ることが大事だろうね。特にスポルティングは団結力を重視するチームだから」とパイバ記者は続けた。

でも個人的に、その点についてはあまり心配しなくていいような気がしている。試合では仲間と話している姿をよく見るし、アモリム監督は「守田は常に仲間に敬意を払い、一日に1000回も謝ったりするんだ」と懸命に適応しようとする彼を満面の笑顔で称えていた。

11月下旬に開幕するカタールW杯では、今よりももっと有能な“中盤のボス”が観られるような予感がしている。

取材・文/井川洋一