今年2月に総務省が発表した家計調査の中華そば外食費の最新データによると、山形市が1世帯あたり1万3196円で全国1位となった。2021年の調査では日本一の座を新潟市に譲ったものの、市をあげてラーメンに熱を注いできた山形市が2022年の調査で王座を奪還した。実は山形県は「人口10万人あたりのラーメン店の数」が日本一といわれている“ラーメン王国”。山形市をはじめ、各地に名店が点在するエリアだ。そんなラーメン王国・山形県で絶対に食べておきたい8つの名店を紹介する。

【関連】尼崎・日本最古のラーメン店


山形県で「食べログ」1位のラーメンは…?


■中華そば処 琴平荘(鶴岡市)



グルメサイト「食べログ」で山形県1位になっているのは鶴岡市にある「琴平荘」だ。

1965年に「旅館 琴平荘」として創業。 旅館の閑散期である冬期の集客を目的として、2002年から「中華そば処 琴平荘」の営業をスタート。旅館としての営業は終了したが、今でもラーメンを求めて全国からファンが集まっている。営業は10/1〜5/31限定だ。



「中華そば こってり」。具はチャーシュー2枚、メンマ、ノリ、ネギ。

昆布とシイタケがしっかりと効いたスープに、じんわりとエビやカニの旨味をプラス。清湯ながら素晴らしい奥行きのあるスープには感動の一言。
表面がボコボコした麺はこれぞ自家製という感じでまた嬉しい。

毎年変化していく味を楽しみにしているファンが全国にたくさんいる。


山形市名物のご当地ラーメン「冷やしラーメン」


■栄屋本店(山形市)



1932年創業の元祖「冷やしラーメン」のお店。もともとはお蕎麦屋さんで1949年から中華そばが加わり、1952年から冷やしラーメンを提供している。



「冷しラーメン」。具はチャーシュー、きゅうり、ノリ、ネギ、モヤシ、メンマ、カマボコ。麺は太麺。

牛肉を醤油で煮た後一晩冷まし、固まった脂を取り除き、植物性の油をプラス、蕎麦の和風ダシを加えている。見た目以上に醤油感と油感があり、ラーメンっぽい味わいだ。

モヤシやネギのシャキシャキ感と麺のモチモチ感のコントラストがあり、食べ飽きない。
冷やし中華ではなく冷やしラーメン。面白い文化だ。


蕎麦屋から生まれた創業160年以上の老舗「鳥中華」


■手打 水車生そば(天童市)



文久元年創業のお蕎麦屋さんで元祖「鳥中華」のお店。

最初は賄いだったが、1971年にグルメ本に掲載されたのをきっかけにメニュー化されたもの。



「元祖鳥中華」。具は鶏肉、天かす、笹がきネギ、三つ葉、細切りノリ。麺は太めでウェービー。

天かすが油がわりになっているのが面白い。旨い天ぷらを揚げている油だからか油自体が旨い。
甘めのそばつゆに胡椒を効かせてエッジを立たせている。鳥も柔らかくて美味しい。

三つ葉や細切りノリが和風で蕎麦感もある。面白い歴史だ。


鳥中華の進化系! 山形で最も勢いのあるお店


■新旬屋 本店(新庄市)



2006年創業。
東京ラーメンショーを始め、全国に山形のラーメンを広めている名店。山形テレビ『われらラーメン王国「とっておきの店」BEST30』で山形No.1にもなった。



「海老ワンタン入り 金の鶏中華」。「水車生そば」から始まった鳥中華をベースにブラッシュアップを重ねて完成させた一品。

毎日先着10名には卵殻を使った黄金の丼で提供。
具はさくらんぼ鶏、海老ワンタン、キンカン、ネギ、ナルト。麺は極太の手もみ麺。

鶏の旨味溢れる少し濁った清湯スープに主張のあるモチモチ麺が旨い。
山形は全体的にあっさりじんわりなラーメンが多い中、リッチなスープで贅沢感がある。

金色のどんぶりに黄金のスープという実におめでたい一杯。


山形といえば「ふわとろワンタンメン」


■福家そばや(寒河江市)



1957年創業の寒河江市のワンタンメンの名店。来店するほとんどの人がワンタンメンを注文していて、店内は年配のお客さんが多い。



「ワンタンメン」。具はワンタン、チャーシュー、かまぼこ、ネギ、メンマ、ノリ。麺は中太ちぢれ。
ワンタンは注文を受けてから手包みしている。

昆布の旨味と柔らかな醤油ダレが最強マッチング。じんわりとした旨味が口の中でふわっと広がる。麺の縮れ感が独特で、かたいところと柔らかいところがあって食感が楽しい。

ふわとろのワンタンは10個ぐらい乗っている。ちゅるっとした食感が素晴らしく、麺とのコントラストが良い。チャーシューも肉感しっかりで美味しい。

ノスタルジックながら、しっかり美味しい一杯だ。


赤湯温泉エリアのご当地ラーメン「からみそラーメン」


■赤湯ラーメン 龍上海(南陽市)



山形県南陽市の旧赤湯町を中心に広がるご当地ラーメン「からみそラーメン」。その発祥が1958年創業の「龍上海」だ。



「からみそラーメン」。具はチャーシュー、ナルト、メンマ、ネギ。麺は極太の縮れ麺。麺は多加水でモチモチの平打ちの太麺。

煮干の効いたあっさりめの味噌ラーメンで、中央に辛味噌が浮いているのが特徴。
味噌が結構強いのに煮干がビシッと効いていて、太麺にもよく絡む。
からみそをだんだん溶かし入れながら味変していくと辛さとともにコクが生まれてさらに美味しい。

神奈川・横浜にある「新横浜ラーメン博物館」でも食べることができる。


全国にファン多し! 山形が生んだ「ケンちゃんラーメン」


■ケンちゃんラーメン本店(酒田市)



1978年創業で、県内、秋田、青森まで10数店舗暖簾分けしている人気店。酒田市にその本店がある。



「中華そば 小盛」。小盛、普通、大盛、特盛とあって小盛でも200g相当と量が多い。味の濃さと油の量が選べる。

具はチャーシュー、メンマ、ネギ、ノリ。麺は平打ち太めのウェービーな麺。
煮干、昆布がじんわり効いていて動物系やラードで少しパンチを出している。麺は柔らかめに茹でられている。

ローカルっぽくて美味しい一杯。店舗によってはパワー系の「ケンちゃん」もあるので、食べ歩きも楽しい。


新庄エリアのご当地ラーメン「とりもつラーメン」


■中華そば 末広(新庄市)



新庄エリアには「とりもつラーメン」というプチご当地ラーメンがある。
創業から約50年の地元に愛される名店。



「スタミナラーメン 味濃いめ」。スタミナラーメンが「とりもつラーメン」のこと。
具はとりもつ、キンカン、ネギのみとシンプル。麺は細めストレートの真っ白な麺。

鶏ダシに醤油を合わせて、鶏油の浮いたじんわりとした味わい。鶏を炊いた上澄みの油をスープとともに入れてくれる。鶏油という概念がない頃からこの作り方なのだと思う。

これぞローカルの味。シャープさとか分厚さではなく、じんわりと感じる鶏の旨味はまさにこの店の歴史を表している。田舎にあるからこそのこういうお店の価値。素晴らしい。

エリアごとにそれぞれ特徴があり、食べ歩きには最高の山形県。
全国No.1の今こそぜひ訪れてみてほしい。

取材・文・撮影/井手隊長