スーパーで肉を買って、自宅で調理するとなぜか硬くジューシーに仕上がらない、なんだかおいしくない…となってしまうことも。どうしたら普通の肉をレストランのようにおいしく調理できるのだろうか。そのコツを『肉屋が教える肉料理 ちょっとした工夫でいつもの肉料理が劇的においしくなる秘伝のレシピ』(マイナビ出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

まずは肉の部位や特徴を知る


私は80 年続く肉屋の4 代目としてお店に立っています。
いらしたお客さんは口を揃えて「やわらかい肉が欲しい」と要望されるのですが、
ひと口にやわらかい肉といっても、焼く、煮る、蒸す、揚げるなどの調理方法によって、
やわらかく仕上げるために最適な肉の部位やカットの厚みが変わります。
ただ、そのことを知らない人が多いのかもしれません。
例えば、料理をするとき、どんな肉を買えばいいのか分からず迷ったり、家庭で作るのは難しそうだからと、諦めたりしたことはありませんか?
まずは、肉の部位と特徴を知ることが大切です。
せっかくやわらかい肉を手に入れても、火入れを間違ってかたく仕上げてしまってはもったいないですよね。
高級肉を使う必要はありません。ちょっとした工夫だけで、いつもの肉料理が劇的においしくなるんです。



牛肉の部位と特徴


豚肉や鶏肉に比べて高価なので部位と特徴を知って、その部位のよさを最大限に引き出す調理を心がけましょう。

★和牛・輸入牛・交雑牛の違いは?
和牛は日本で飼育される黒毛和種など最も高価で肉質がよいもの、輸入牛は海外から輸入されたもの、交雑牛は黒毛和種とホルスタインを交配させた雑種のことをいう。

和牛サーロイン
適度な脂肪があり、やわらかくて風味もあるので、高級部位とされている。切ると大きさが揃うので、ステーキで食べるのがおすすめ。



輸入牛イチボステーキ肉
外ももの上側に位置し、適度な脂肪がある部位。やわらかくて風味があるので、ステーキや焼肉で食べると肉の味が楽しめる。



和牛内もも肉
後ろ足のつけ根に位置し、筋肉質だが赤身の中では比較的やわらかい部位。赤身のうま味が味わえるローストビーフにし、薄く切って食べるのがおすすめ。



和牛すね肉
ふくらはぎ近くに位置し、運動量が多いので筋が多くて非常にかたい部位。煮込み料理などに使うことで、やわらかくジューシーになる。



和牛リブロース肉
最も厚みのある部位で、きめが細かく、やわらかい。風味が濃厚で甘みがある。薄く切ってすき焼きや、しゃぶしゃぶにするとより甘みを感じられる。



牛切り落とし肉
肩やももを、一定の厚みで切り落とした部分。厚みが揃っていて赤身を楽しめるので、焼肉や牛丼などの肉がメインの料理に使うのがよい。



交雑牛ヒレ肉
背骨の内側に位置し、脂肪が少ない部位。きめ細かく、やわらかくて風味もよいので、ステーキやカツレツなどにするとやわらかいまま食べられる。




激安肉をやわらか高級肉に変える
輸入牛ステーキ


下処理と少しの手間だけで高級な肉に早変わり。ご家庭で高級店のような味をお楽しみください。



材料 2人分
輸入牛イチボステーキ肉… 250g
塩・こしょう… 各適量
にんにく… 1 かけ
→薄切りにする
シャリアピンソース… 全量
牛脂… 1 個
イタリアンパセリ… 適量

Point:手に入れば和牛の牛脂を使うことで、より風味がよくなり、安肉っぽさが消える。


作り方
1:牛肉は調理する30 分前に冷蔵庫から出し、常温に戻す。ペーパータオルで水けを拭き取る。
Point:解凍したあとや、時間が経つと出てくる水けが臭みの原因になるので、必ず拭き取ること。



2:牛肉の筋を断つように、1㎝間隔で切り込みを入れる。
Point:牛肉を焼いたときの反り返りを防ぐことができる。



3:牛肉の両面に塩、こしょうをふって下味をつける。
Point:2、3の工程は焼く直前に行うことで、肉汁やうま味を閉じ込められる。



4:フライパンに牛脂を中火で熱し、ある程度溶けたら取り出す。にんにく、牛肉を入れ、にんにくはきつね色になったら取り出して牛肉は片面1 分30 秒ほど焼く。ひっくり返して弱火にし、1 分30 秒ほど焼く。



5:アルミホイルで包み、3 分ほど休ませて余熱で火を通す。薄切りにして器に盛り、ソースをかけて4のにんにく、パセリを添える。
Point:焼いた時間と同じくらい休ませる。焼く時間を5 割、余熱時間を5 割で火を通す。



『肉屋が教える肉料理 ちょっとした工夫でいつもの肉料理が劇的においしくなる秘伝のレシピ』(マイナビ出版)

肉屋が教える肉料理

2023/4/20

1,738円(税込)

単行本 ‏ : ‎ 128ページ

ISBN: 978-4839981600

創業80年の肉屋4代目による人気YouTubeチャンネル「肉屋が教える肉料理」初の書籍化。ちょっとした工夫で市販の肉が劇的に美味しくなる秘伝のレシピを公開します。一口に柔らかい肉と言っても調理法によって、やわらかく仕上げるために最適な肉の部位やカットの厚みは変わるもの。
「肉は自分で焼くと、どうしてもかたくなる」という悩みに応えて、肉屋秘伝のレシピを公開し、独自の調理方法を詰めたのが本書です。


豚肉編はこちら(6月2日10時公開予定)