「待ってました!」今年の月見!
満月に見立てた目玉焼きをサンドしたハンバーガーの月見商品はすっかり秋の定番。
毎年、月見商品が販売される時期になるとSNS上では「待ってました!」と言わんばかりに喜びを露わにする声も少なくない。
今回、取り上げる月見商品は、マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキン、ロッテリア、ウェンディーズ&ファーストキッチン、ファーストキッチン、コメダ珈琲からピックアップ。番外編としてバーガーキングからひとつ選出している。

各社ともにたまごをサンドしていることは共通しているが、興味深いことに8商品のうち4商品が半熟たまご。月見商品の王道であるマクドナルドの「月見バーガー」は、黄身が固まった目玉焼きであるため、この現状には少々驚いた。
では各社の月見商品の味わいについてレビューしつつ、バーガーの断面をカットし、たまごの状態も見ていこう。
半熟強しか…マック、モス、ケンタッキー、ロッテリア

まず紹介するのが、月見商品の王道中の王道であるマクドナルドの「月見バーガー」(420円〜、税込以下同)だ。
厚い目玉焼きとビーフ100%のパティ、ベーコンをトマトクリームソースで味付けした元祖・月見バーガー。ほんのり酸味のあるソースがこんがり焼かれたパティの旨みを引き立てている。ベーコンの塩気もちょうどよく、バーガー全体の味を引き締めていた。
たまごは黄身が完全に固まったハードボイルド仕様。蒸し焼きにされているので、白身はぷるぷる、黄身はほくほくとした食感へと仕上がっており、優しい味わいになっている。

次はモスバーガーの「月見フォカッチャ」(580円)。昨年、期間限定で販売がスタートし、売れすぎてわずか2週間で販売中止になった注目の人気商品だ。
キャベツとソーセージに、なすの入ったバーベキュー風のソースをかけ、半熟たまごをトッピングし、フォカッチャで挟んだ一品。甘いトマトベースのソースがとにかく濃厚で、みずみずしいキャベツとよく合う。プチッと弾けるソーセージは噛めば噛むほど肉の旨みがあふれ出てきて、これまた美味。
モスの半熟たまごは、白身がやや柔らかめで固まっており、中の黄身は完全にとろとろ状態。ソースとの相性は抜群で、各々の具材の味わいがよりマイルドに。全体のバランスアップにもつながり、これは間違いなくたまごのおかげであると断言できる。

続けて、ケンタッキーフライドチキンの「とろ〜り月見チーズフィレバーガー」(490円)を紹介。
ケンタッキー自慢のオリジナルチキンとチェダーチーズ、目玉焼き風オムレツ、レタスにマヨソースをかけ、バンズでサンド。スパイスをふんだんに使用したジューシーなチキンはチーズとマヨソースのおかげでクリーミーな味わいへと変化し、より食べ応えが増した。
目玉焼き風オムレツからは卵黄ソースがとろけだしており、一口頬張ってみるだけで黄身の濃厚なコクがたまらない。チキンがさらにまろやかな味わいになり、満足感が格段にアップしている。

ロッテリアの「半熟月見 和風絶品チーズバーガー」(570円)も外せない。
粗挽きパティの上に、ゴーダ、レッドチェダーチーズを乗せ、半熟たまごを重ねている贅沢なバーガーだ。和風しょうがソースは、香ばしくしょっぱめの味となっており、チーズ、たまごと合わさることでソフトな口当たりに変化。パティも肉厚で噛み応えたっぷりで、一気に食してしまった。
バンズを割ると、半熟たまごからドロッと黄身があふれ出てくる。黄身の濃厚さはピカイチで厚めのパティにも負けないコク深さと存在感。ねっとりとしているので、ソースとよく絡むのもポイント高い。
ボリュームがすさまじい、ウェンディーズ、ファーストキッチン、コメダ

ウェンディーズ・ファーストキッチンから発売されている「月見C.B.P.バーガー」(970円)は、パンチの効いた刺激的な一品だ。
肉厚なビーフパティに2種類のチーズ、アップルウッドで燻したベーコン、よく火の入った目玉焼き、そして丸いハッシュポテトを2個乗せたビジュアルはインパクト抜群。ほくほくとしたポテトのジャンクな食感と塩気の効いたカリカリのベーコンがアクセントとなり、食べ進めながらも食欲がどんどん刺激されていく。
たまごは若干小さめなので存在感は薄め。それぐらいポテトや肉類の主張が強かったワケで、がっつりとしたバーガーを食べたいときにぜひおすすめしたい。

ファーストキッチンの「月見もっちバーガー」(870円)は、和のテイストを取り入れたバーガーに仕上がっている。
たまごとパティのほかに、なんと揚げ餅がトッピング。かつおと昆布の出汁にくぐらせた揚げ餅は、上品な香ばしさがあるが、弾力が強めなので食感はヘビー。厚めのパティと一緒に食べることで、見た目以上の満足感が得られる。味噌ベースの甘めソースも優秀で、全体のバランスを一気に「和」に傾けている。
本品のたまごも小さめで黄身が固まっているせいか、地味な印象を受けるかもしれない。だがトッピング自体がシンプルであるため、たまごの存在感はやや強く、味がさらにマイルドになっていた。

コメダ珈琲店の「お月見フルムーンバーガー」(750円〜)は、ボリューム満点の大満足な一品だ。
大きいバンズの中には、肉厚なパティと黄身がとろっとしたエッグオムレツが挟んである。パティに塗られたオーロラソースは、甘味と酸味のバランスに優れていて、具材によくマッチ。パティは肉々しさが薄めで、くどさがなく非常に食べやすい。かなりのボリュームになっているが、クセのない味なのでお腹の許す限りいくらでも食べられそうだった。
黄身が半熟というより完全にとろけているので、たまごのコクは存分に味わえる。そして、まろやかなオーロラソースと組み合わさることで、より病みつきになる味わいになるのも魅力。
番外編:甘いパイナップルを乗せた月見バーガー!?

最後に番外編としてバーガーキングの「パイン ツキミバーガー」(540円)を紹介。本品は“ツキミ”と謳っているが、たまごではなく、パインをツキミに見立ててバーガーにしている点が特徴だ。
直火焼きのビーフパティの上には甘いパイナップルがふたつ鎮座。一見すると合わなさそうな組み合わせだが、あふれ出るパインの甘酸っぱさにパティの旨みが乗っかることで、フルーティで肉の旨みが引き立つ味わいへと仕上がっていた。
月見商戦に真っ向から挑戦状をたたきつけるようなバーガーキング以外に、フレッシュネスバーガーやドムドムバーガーは月見を完全に無視した商品展開を広げている。あえて月見を選ばないユニークな商品となっているので、気になった方はチェックしてもらいたい。
評論家が語る月見の今と未来
今年の月見商品は、ふたを開けてみれば、バラエティ豊かな商品が揃っていたことに気づく。最後にハンバーガー評論家として活動している松原好秀氏に近年の月見商品のトレンドについて聞いてみた。
「やはり半熟たまご、ないしは卵黄ソースをサンドする企業が増えてきましたね。1991年にマクドナルドが『月見バーガー』を発売して以降、この10数年は月見のハンバーガーと言えばしっかり火が入った固焼きのフライドエッグが定番でした。半熟たまごがハンバーガーチェーン業界で注目されたのは、2005年にロッテリアが発売した『半熟たまごのてりやきバーガー』が最初で、以来『半熟』といえばロッテリアだったのです。
しかし近年は食品加工技術の向上も目覚ましく、店舗でも半熟たまごを提供しやすくなっています。また、ここ数年は、『月見』の商業化が急速に進み、ハンバーガーチェーンのみならず、牛丼チェーンや宅配ピザチェーンなど他業界でも月見商品が展開されるなど、月見が消費者にとっておなじみの存在となったことも大きい。
月見はお題が『たまご』と決まっていて、創意工夫しやすいバーガーなので、自社のオリジナリティを活かすアイデアを打ち出しやすい。各社、大元のオリジナルであるマクドナルドの月見バーガーを超えようと、何とか差別化しようとした結果、半熟たまごを導入する勢力が優勢になったのだと考えられます。そもそも皆さん、『半熟』には基本的に弱いですからね。一方でフレッシュネスバーガーのような素材重視のチェーンや、ドムドムハンバーガーといった独創性を重視するチェーンでは、月見と逆張りをするような商品を開発する形で、メインストリームとはまた違ったブランディングをする傾向にあり、面白いですね」

こうした月見の盛り上がりをよい流れと評価する一方で、ハンバーガー評論家としては月見の原点に立ち返った発想も忘れないでほしいようだ。
「このブームをさらに繫栄・発展させる上では、たまごそのもののおいしさやビジュアルの向上も求められます。個人的には月見バーガーが『すごくおいしい!』と思ったことは実はあまりなくて(笑)、たまごの部分だけ味が抜けたようになってしまうのを兼ねて問題に思ってました。
ビジュアルも本来であれば、たまごの黄身を月に見立てて『月見』と称しているワケですから、包み紙を開けた時に『月(黄身)が見えない』というのは正直淋しいですよね。月見と謳うからには月はきれいに出てほしいですし、できることなら黄身が見えるようにしてほしい。その辺り、企業も入念なマーケットリサーチをもとに商品開発を行っているはずなので、来年以降にアッと驚く月見商品が登場する可能性はありますよ!」
来年はよりパワーアップした月見商品に飛び“つき”たい!
取材・文/文月/A4studio