ネットから始まり、現在はテレビや雑誌に登場するほど人気が広まっているVTuber。可愛い(カッコイイ)キャラクターたちが、歌やゲーム実況で活躍する姿に熱狂する視聴者。その人気の秘訣はどこにあるのか、少年マンガ3大モットーの「友情・努力・勝利」から探る。

「友情・努力・勝利」とVTuber


少年マンガのモットー三本柱として「友情・努力・勝利」がよくあげられる。今も昔も、人気のあるエンタメ全般で考えることのできる要素だ。

テレビや雑誌でも話題が広がり続けている、アバターを用いて動画や配信活動をするVTuberの配信でも、この三本柱を人気の鍵として見ることができそうだ。

今回はその一例として、百数十人が在籍する大型VTuberグループ「にじさんじ」で見られる、VTuberならではの「友情・努力・勝利」のドラマを追ってみたい。


英語練習の「努力」で実を結んだ「友情」


日本人のVTuber、長尾景。彼は臆さずに英語話者VTuberの中に飛び込み、コミュニケーションを取ろうとした人物のひとりだ。


【雑談】Speaking English Practice w/Yugo【長尾景/にじさんじ】


長尾景がはじめたのは「誕生日までに英語で会話できるようになるケイナガオプロジェクト」。毎日30分、海外のあらゆるライバーを招待して英語のみで会話をする、という英会話の実践練習配信だ。

この行動力は国内外問わず、多くの人の心を動かした。彼は元々十分な語学力で話せたわけではない。たどたどしくも、笑顔で学習の努力を毎日続けた。英語圏のライバーで、彼の気概を高く評価した人は多かった。

長尾景の誕生日。配信には数多くの英語話者ライバーがお祝いに訪れた。彼は語学力とともに、たくさんの友人を手に入れた。


【#ながおたんじょうび】HBD初凸待ち配信【長尾景/にじさんじ】


彼自身は最初は、英語を話して交流したい、という一心だったのかもしれない。それが結果として、国をまたいで人の輪を広げ、友情を生むドラマとなった。彼の努力を観て、英語学習を始めた視聴者はかなりいたという。


「努力」して成長していく様を見る楽しさ


鈴木勝が始めたのは、Blenderというソフトをつかって3Dモデリングを行う勉強配信。インストールしただけの、全くの0からの状態で配信をスタートした。操作も含め一個ずつ手探りだ。


#2【Blender勉強会】「ミニチュアな部屋」を作りたい!【鈴木勝/にじさんじ】


なにより本人がひとつずつ努力して学び、作品を完成させることを心から楽しんでいる。最初は球をつくるところから始まるのだが、次第にミニチュアの部屋を再現し、次に人間型モデルの制作へと進歩している。

「目に見えて成長するのを見るのが楽しい」という旨のファンのコメントもあがっているシリーズだ。普段触れないであろう技術でも、彼の練習配信を観ながら同じことを順にやっていけば、同じだけの技術がリスナーにも身につく、という刺激を与えてくれる配信なのも魅力だ。


165時間描き続けた「努力」が見せてくれたもの


グウェル・オス・ガールは「0からシリーズ」と題して、全く自分がやったことないものに挑戦する配信を意識してコンテンツにしているVTuber。そのひとつが「にじさんじ五十音順に描いたら童田明治の時には画力上がってる説」という、Twitterで話題になったイラスト練習法の検証だ。


【165時間】にじさんじ全員描いたら画力爆上がりした【グウェル・オス・ガール】


実際に描いた人数は106人。累計配信時間165時間。一人目から順に描き続けていくことで、目に見えてイラストのクオリティが上がっていった。最初から上手じゃなくてもいい、やり遂げる姿勢の過程がエンタメなのだ、と彼は実証してみせてくれた。非常に長い配信シリーズながらも、彼の成長を追い続けたファンは多い。


「にじさんじ甲子園」が生み出す「勝利」の物語


にじさんじでは夏に「にじさんじ甲子園」というイベントが開催されている。ゲームの「パワフルプロ野球」で選手育成をして、育った選手同士で試合をするというもので、参加ライバーはそれぞれの高校の監督として出場する。昨年の決勝戦は275万回以上も再生されている大人気コンテンツだ。

「にじさんじ甲子園」自体は最後のリーグ戦同時視聴が一番盛り上がる。しかしこのイベントで重要なのは、監督たちが必死に育成する様子のすべてが配信で行われているということだ。

ユニークなのは最初にドラフトを行い、指名したライバーの名前を自分のチームの選手につけることができるというシステムだ。この遊び方がにじさんじ全体を巻き込み、大成功した。


にじさんじ甲子園2022 ドラフト会議【 #にじさんじ甲子園 】


ニュース速報的に練習(育成)の流れもまとめられており、毎日選手と監督たちの成長の様子を追うことができる。ゲームでの育成中、プレイ次第でいろんな事件が発生し、監督になったライバーたちは四苦八苦する。その努力や奇跡のすべてが、本戦での勝敗の物語につながっていく。試合だけ見ても楽しいが、本気で勝つための育成過程全てを見られるところに本領があるエンタメだ。


VTuberでしか観られない「友情・努力・勝利」


VTuberの見た目には、マンガのようなキャラクター性がある。生の配信内容は、ドキュメンタリーのようなリアリティがある。その両方の魅力をあわせ持った「友情・努力・勝利」のリアルタイムエンターテイメントが、VTuberの配信だ。

VTuberが起こすドラマは、生々しいがゆえに「応援をしたい」「最後まで観たい」「自分もやってみたい」「切り抜き動画にして他の人に見せたい」「起きた物語を二次創作イラストで描きたい」と多くの人に感じさせる熱量がある。その熱をファンがツイートすることで、バズが生まれる。

それらのコメントからVTuberたちはエネルギーを得て、ゲームの試合など「友情・努力・勝利」を伝えられるエンタメの努力をしようと新たな企画をする。この幸福なループが、ネットニュースなどのメディアを通じて、ファン以外の社会にも少しずつ波及してきている。


文/たまごまご


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