公園で見つけた毒グモ、道端に生えている野草、ドブで釣ったサメ……ホモサピさん(20)は私たちの身近な自然界から、動植物を問わず自ら捕獲採集して食べることをテーマにした人気YouTuberだ。なぜ彼は「獲って食べる」ようになったのか。今までいちばん美味かったものは? まずかったものは?

初めて作った野草の味噌汁の味は


――最初に食べた自然のものは、お祖母さんの手作り料理だったそうですね。

「そうです。うちは両親が共稼ぎだったので、近くに住んでいる祖父母がやってきて面倒を見てくれていました。それであるとき、祖母が近所の駐車場に生えていたヨモギを摘んできて、それでヨモギ団子を作ってくれたんです。6歳くらいだったかな。オママゴトじゃなくて、本当に道端で生えている『草』でこんな美味しいお団子ができるんだって、子ども心にも衝撃的でした。それからは自分でヨモギを取ってきて、祖母に作ってもらうようになりまた」

――自分で一から作った初めての料理はなんですか。

「なんだろうな、野草で作ったお味噌汁かな。中1ぐらいのとき、河川敷に行って、もうそのころは野草についての知識はある程度もっていたので、『これは食べられる』『これはダメ』って適当に選んで摘んで、家に帰ってとりあえず全部鍋にぶち込んで煮て、味噌を入れて味噌汁にしました」

――それが美味しかった?

「いや、まずかったですね(笑) テンションだけで作ったから、出汁もなにも入れてなかったんですよ。でも『食えるんだな』っていう手応えはありました」

――でもまずかったら、普通そこで止めにしませんか。

「野草を料理するYouTubeをすでに見ていたから、『これは本当は美味しいはずで、調理方法が悪いだけなんだろうな』と思いました。僕の動画を見て、真似して料理を作って『まずかった』で1回で止めてしまう人が多いんですが、不思議です。やり方次第で味は変わるのに」


「家族は食べません」


――ヨモギ団子から入って野草を食べるというのはわかるんですが、そこから昆虫を食べる方向に行くのは、大きなジャンプがあるのでは(笑)

「そんなことないですよ、郷土料理でイナゴとかハチの子を食べるじゃないですか。僕も初めて自分で昆虫を調理して食べたのは中2で、近所の林で取ってきたハチの子を適当に塩・コショウで炒めて食べました」

――本格的に「獲って食べる」ことにのめり込みだしたのは……。

「高校生のとき。バイト先の店長に霞ヶ浦(茨城県)に連れて行ってもらって釣りをしたんですよ。そこで釣ったアメリカナマズを持ち帰ってフライにしたら、もう、とんでもなく美味かった。それで『うわ、やべえ。生き物ってうめえ』と思って、そこから自然のものを獲って食べることが加速した気がしますね。夏休みなんかほとんど毎日、何かを獲ってきて食べていた気がします。それまでは昆虫を獲って満足、飼って満足だったんですけど、新たな道を切り開いている感じがしました」

――そういう、息子が毎日、虫とか野草をとってきて食べている姿を見てご両親はなにかおっしゃいませんでしたか。

「別に何も。ただ母親からは『調理道具は家族のものと分けるように』と厳命されました。でも一緒にしていましたけれどね(笑) 家族は、いくら美味い美味いと言っても、僕が調理した虫を食べたことはないと思います。別に食べたくない人が無理に食べる必要もないので」


現在は登録者数が110万人を超える人気YouTuberのホモサピさんだが、本によると、子どものころは朝起きるのも勉強をするのも苦手で、自分はダメな人間だと思い込んでいた。それが救われたのは、進学した定時制高校のおかげだった。

「先生が良かったですね。やっぱりいろんな生徒を見てきているので、けっこう柔軟で熱心でした。たとえば遅刻してきても、中学なら頭ごなしに怒鳴られていたのが、まずちゃんと理由を聞いてくれる。そのあと怒られても、なにか愛を感じるんですよ。それまでの先生が悪いっていうんじゃなくて、僕は定時制高校の先生と相性が良かったと思います」


50冊の図鑑で蓄えた知識


――「獲って食べる」ことだけでなく、ホモサピさんの本や動画を拝見していて驚いたのは、動植物への広範な知識をお持ちなことです。たまたま見つけたカメムシの種類を即座に当てるとか。その知識はどうやって身につけられたんですか。

「図鑑ですね。動植物を中心に50冊ぐらい持ってますよ。なかには繰り返し読み過ぎてボロボロになったものもあります。小学生のころ宿題で、図鑑の好きなページをイラストや説明文をノートに模写して、自分がさらに得た知識を書き加えるということを毎日していたんですよ。2年間それを繰り返していくうちに、図鑑をまるごと覚えてしまいました。やっぱり読むだけでなく手で書き写すと覚えますね」

――調理も上手ですよね。大きな魚をさばいたり、味噌に砂糖を練り込んでタレを作ったり。その技術は?

「もともと料理好きなのと、高校生のころ中華屋さんでキッチンのバイトをしていたので。炒飯が得意です」

――ネットに動画投稿を始めたのは高1、16歳のとき。たまたま憧れていた有名YouTuberさんと出会い、彼の仕事を手伝うようになりました。そして高3で「ホモサピ」として本格的にYouTubeでデビューでした。

「ほんとYouTubeの世界があって良かった。なかったら今ごろ何をしていたんだろうって、ぞっとしますよ」


「3000円出しても食べたい」


――約2年間で投稿した動画が63本(2022年9月4日現在)。今まで自然から「獲ってきたもの」を料理した中で、いちばん美味しかったもの、お店で出して良いレベルのものはありますか。

「いっぱいありますよ。ぱっと思いつくのは、アメリカザリガニのエビクリームパスタって相当美味かったです。これはもうね、お店で3000円でも頼んじゃうぐらい美味しかったです」

――逆にいちばんきつかったのはどれですか。

「ハクレン。中国の魚なんですけど、荒川の中でもあったかい下水の処理水が流れ出る水路にいたんですよ。素揚げして食べてみたんですが、臭くてダメです。現地の養殖のハクレンは普通に美味しいらしいんで、多分場所の問題なんだろうな」

――では普通の食材や料理で苦手なものってありますか。

「(即答に近い速さで)チーズと塩辛、レバーのような内臓系。臭覚が敏感なので、ニオイの強いものは苦手なんですよ。血のニオイとか発酵したものとか」

――でも動画ではドブでさらった魚とかよく食べてますよね?(笑)

「ドブのニオイは、ある程度受け入れられるので(笑)。オエッとはなんないんで(笑)」

現在はYouTubeの活動だけでなく、タガメなど絶滅危惧種の水棲生物再生のために全国に湿地を作るプロジェクトに取り組みたいと考えている。

「プロジェクトとかって言っていますけれど、要は水たまり作ったらどんな生き物がやってくるかなって、自分が知りたいだけです(笑)。本にも書きましたが、子どものころ、家の近所に生物園という生きた生物を展示する施設があったんです。そこに通って職員さんにいっぱい質問したり、展示前のクモの飼育を見せてもらったりしていました。祖父母もそうだったんですけれど、子どもの『知りたい』『やってみたい』をダメって禁じるんじゃなくて、純粋な好奇心に付き合ってくれた大人の存在が、今も自分の心の中に残っています。だから今の子どもたちのために、自分もそういう大人になりたい、というのが目標です」

(インタビュー・文/神田憲行)


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