人気の海外ガイドブック「地球の歩き方」が、コロナ禍を経てようやく約2年ぶりの復活を遂げた。8月に『ハワイ編』『ニューヨーク編』をリニューアル刊行。今後も続々と改訂版が発売される予定だ。『ハワイ編』を担当した編集者に現地の最新情報やコロナ対策を聞いた。

ハワイ編、ニューヨーク編が同時に刊行


あの『歩き方』が復活−−。海外旅行ファンにとっては大きな、そして待ちに待った出来事だろう。

世界的にwithコロナの意識が強まってきた2022年春、『歩き方』編集室も取材や編集作業を再開。そして8月4日、『地球の歩き方・ハワイ編』『ニューヨーク編』の改訂版が発売となったのだ。実に2年ぶりの刊行だった。全世界160の国と地域を網羅し、約120タイトルを誇る『歩き方』の先陣を切って、まずハワイとニューヨークから〝復活〟ということになったのだが、その理由をコンテンツ事業部の日隈理絵さんはこう話す。

「リピーターが多く、待ち望んでいる人が多かった地域であること。旅行者の受け入れ態勢や、万が一のときの医療や検査体制がしっかりしていることから決めました」


『地球の歩き方』改定復活第一弾となったハワイ編とニューヨーク編。ハワイ編の「ただいま!」が印象的


2年ぶりの、それもコロナ禍を経た後の現地はどうなっているのだろう。

「空気感や街の雰囲気はコロナ前と同じでした」

と、ハワイ編の取材・制作を担当したオフィス・オハナの原万有伊(まうい)さんは言う。

「着いたときに、いつものハワイだなと感じました。閑散としているんじゃないかと思ったんですが、コロナ前よりもむしろ賑わっているかもしれません」

外国人が減ったぶん、アメリカ本土からの旅行者が増えているのだという。そしてまだまだ少ない日本人に安心して旅行してもらおうと、ハワイでは州をあげて衛生管理に取り組んでいる。

「アメリカではいまマスク着用の義務はないのですが、それでもホテルやレストランなどのスタッフはしっかりとマスクを着けています」(原さん)


2年ぶりの改訂を喜ぶ日隈さん(左)と原さん(右)(撮影:室橋裕和)


欧米とアジアではマスクの着用基準についての温度差があって、欧米は比較的緩やかだといわれている。だが、ハワイではマスクを重視する日本人をはじめとするツーリストに配慮しているのだ。それに入店前の消毒やソーシャルディスタンスを保つための表記なども、日本と変わらない。こうして日本人の回帰を待っている。

「取材先でも、日本人はいつ戻ってくるの? とよく言われましたね」(原さん)

いちばんの苦労はやはり、観光客にはおなじみのアラモアナセンター内をはじめ、店がずいぶんと変わってしまったこと。日本人向けの和食フードコートや、日本人経営のショップやカフェなども撤退したところが目立つ。

「2020〜21年版と比べると、今回最新版の2023〜24年版では3分の1の店情報を入れ替えました。それでも、新しい店がどんどんできているので本全体のボリュームは変わらなかったのが、ハワイの底力ですよね」(日隈さん)


炎天下の中、ひたすら歩いて地図チェックをする原さん。なくなった物件の差し替えがなによりたいへんだった(写真提供:『地球の歩き方』編集室)


そして受け入れる側でも、コロナ禍を経て変わったことがある。人気の観光地であるダイヤモンドヘッドやハナウマ湾自然保護区では、オンライン予約システムを取り入れて入場者を制限し、自然を守りながら密にならないようにしているという。ウミガメの観察は3メートル、イルカは45メートル離れるというルールを作るなど、海洋生物を守り、自然を見つめ直そうという考えも広まってきた。

「コロナ禍で旅行者が減ったことで、ハワイの海はこれまでよりさらにきれいになったんです。それをキープして、サステナブルな旅先に、という取り組みが進められています」(日隈さん)

また移動の面でも「よりエコに」とハワイ州政府観光局ではシェアサイクルを推奨。ワイキキ周辺だけでも100か所以上のポートがあり、旅行者のアシになってくれる。そんな情報も最新版の『歩き方』には盛り込んだ。


ハワイではシェアサイクルが推奨されている(写真提供:『地球の歩き方』編集室)


コロナ対策のページも充実


全体的には以前の『歩き方』と変わらないテイストと情報量だが、やはり感染症対策のページもしっかりと入っている。巻頭部分では日本語が通じるクリニックやPCR検査所を紹介。また『歩き方』といえば巻末の詳細な「旅の準備と技術編」も特長だが、ここでも渡航の際に必要な書類についてガイド。ワクチン接種証明の取得方法や、日本出発時に提出する宣誓書のフォーマットなども掲載した。

「とくにMySOSというアプリはワクチン接種証明や誓約書などをまとめて管理でき、帰国時の日本入国がスムーズです」(日隈さん)

このアプリを活用すれば日本入国の前に検疫手続きの一部を済ませることができるので、帰国時の混雑を避けられるそうだ。

ニューヨーク編では「PCR検査を受けたいです」なんてコロナ関連の英会話集も発見。各所に感染症に対抗する情報が散りばめられているのだ。

とはいえ、コロナの感染状況や水際対策はどんどん変わっていく。そこをカバーするために「地球の歩き方」ホームページとの連携を強化しているという。


感染対策や、コロナ関連書類の準備の情報もばっちり(画像提供:『地球の歩き方』編集室)


まさに大きなリニューアルとなった『歩き方』だが、この新刊を持ってシルバーウィーク・年末年始に旅するという人もいるだろう。そんな旅行者たちに向けて原さんは、こうアドバイスする。

「日本帰国時のPCR検査も9月7日から不要になり、ストレスフリーで旅ができるようになったと思います。空港でのチェックインはワクチン接種証明などの確認に時間がかかり混み合っているので早めに。あとは万が一感染したときのために海外旅行保険にしっかり加入して、余裕を持ったスケジュールで、楽しんできてほしいですね」


注目は現地のスーパーマーケットの記事?


『地球の歩き方』は今後、9月にオーストラリア、10月にドイツ、12月にパリ、グアム、それにバンコク、年明けにシンガポールやカナダ東部など、少しずつ刊行を再開していく予定となっている。その中では「新型コロナウイルス」対策だけでなく、「円安」対策も力を入れている。

「その全タイトルで、スーパーマーケットの記事を増やしていこうという方針なんです」

と日隈さん。お金をあまりかけなくても旅を楽しめるような方法も提案していくのだそうだ。

出来上がったばかりの『ハワイ編』を手に取った。表紙には「ただいま!」の文字が踊る。発案した日隈さんが、しみじみと言う。

「いろいろ不安はあったんですが、現地に行ってみて、実際に作ってみて、『ただいま』『おかえり』と言い合えるような、とくにリピーターの方ならそう感じられる状況だと思ったんです」

そろそろ海外へ。日本人も本格的に、旅立っていいころなのかもしれない。

取材・文/室橋裕和