世界中を熱狂させた2022年を象徴する映画『トップガン マーヴェリック』。ソフト化&配信リリースを記念し、36年前の1作目に捧げられたオマージュシーンや、作品をより深く楽しめるトリヴィアを解説する。【本記事には映画『トップガン』『トップガン マーヴェリック』に関するネタバレの記載があります。ご注意ください】(トップ画像Photoshot/アフロ)

2022年、世界中の映画館を音速で貫いて観客を熱狂させ、14億8千万ドルの興収を上げて世界最大のヒット作となった『トップガン マーヴェリック』(2021)が、ついにソフト&配信でリリース。これは劇場で興奮を味わったファンには嬉しい限り。

劇場公開時、主演のトム・クルーズをはじめ製作陣は口をそろえて“スクリーンで見てこその作品”と語っていたし、それはもっともなのだが、好きなときに好きな場所で見られる配信ならではのよさがあるのもまた事実。何より、じっくりと見ることでディテールにも目がいき、より作品を好きになれるじゃないか!

ご存知のとおり、本作は1986年の大ヒット作にしてトムの出世作となった『トップガン』の36年ぶりの続編。この続編には前作へのオマージュがふんだんに盛り込まれているのは、ファンならすでにご存じだろう。

そこで『トップガン マーヴェリック』に宿るそんな名シーンや、トリヴィア的な小ネタを改めておさらいする。ソフトや配信で、じっくりチェックする際の参考になれば幸いである。


【1】伝説のプロデューサーコンビ復活!


冒頭のカンパニークレジットには、2本の稲妻のロゴとともに“DON SIMPSON/JERRY BRUCKHEIMER FILMSの文字が。“ドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーの製作会社による作品”……ということだが、実際にプロデューサーを務めたのは後者のみ。シンプソンは96年に世を去ったが、それまでは、ブラッカイマーと共に十数年にわたり『トップガン』などの多くのヒット作を放ってきた人物だ。

シンプソンの没後、ブラッカイマーは1本の稲妻ロゴでカンパニークレジットを背負い、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ(2003〜)などのヒット作を生んだ。今回は彼らのコンビの代表作でもある『トップガン』の続編であることから、このクレジットが復活!


【2】女性もトップガンになれる!


“トップガン”の意味をテロップで説明する冒頭。この解説文は前作とほぼ同じだが、違っているのは“men”が、“men and women”になっていること。前作が公開された1986年、米海軍には女性のトップガンパイロットはおらず、『トップガン』でも候補生はすべて男性だった。

本作の公開後、女性もこの分野に進出するようになり、しばらくは禁止されていた女性パイロットの戦闘への参加も1993年に認められるようになった。そんな現実が、この解説、そして本編の設定にも反映されている。


【3】オープニング、そして「デンジャー・ゾーン」に燃える!


まずは空母から戦闘機が飛び立ち、また着陸して、艦上のクルーたちが忙しく動き回るさまを威勢よくとらえているオープニング。この場面はケニー・ロギンスのヒット曲「デンジャー・ゾーン」へのフィーチャーを含め、前作の冒頭を再現したものだ。

もちろん、戦闘機は36年前とは異なる現行機である上に、撮影技術が進歩した現代らしい見せ方となっているが、それでも「デンジャー・ゾーン」に彩られると、前作がフラッシュバックしてしまう。ちなみに細かいネタになるが、この曲は前作のフィーチャー時より、イントロが短く編集されている。


【4】36年前のフライトジャケットが!


モハーヴェ砂漠の格納庫に住み込んでいるマーヴェリックが、外出に際して身にまとうのは、前作でおなじみとなったボア付きのフライトジャケット。がさつな生活をおくっているようにも見える彼だが、このレザージャケットは丁寧に保管されている。大事な物を着て外出するということは、なんらかの決意のあらわれ、なのだ!


【5】出世には興味ナシ!?


格納庫に飾られたプレートにはピート・“マーヴェリック”・ミッチェル大佐の文字が。前作では大尉だったが、本作では大佐にランクアップ。しかし同期のアイスマンが将軍に出世していることを踏まえると、出世のスピードは遅い。本来なら少将になっていてもおかしくないが、後に明かされるとおり、みずから出世を拒み、飛び続けることを選んだようだ。


【6】愛車のバイクも復活!


前作でマーヴェリックが乗り回していたバイク、カワサキGPZ900R、通称“ニンジャ”は本作でも健在。トップガン養成所に戻った場面では最新型のニンジャH2カーボンも登場。


『トップガン』で登場し話題となったカワサキGPZ900R
Album/アフロ


【7】テスト飛行からわかるマーヴェリックの立ち位置


テストパイロットとしてマッハ10の壁に挑むマーヴェリック。その挑戦に、1983年の名作『ライトスタッフ』を連想した映画ファンは少なくない。不可能に挑む宇宙飛行士たちの群像を描いた同作では、それになれなかったテストパイロットが音速の壁を突破しようとする。
これに照らし合わせると、マーヴェリックの海軍のアウトサイダー的な立ち位置がよくわかる。ちなみに、『ライトスタッフ』で飛行士のひとりを演じていたエド・ハリスが、本作ではマーヴェリックの上官役で出演。


【8】ヒロイン、ペニーは前作にも出ている!?


『トップガン マーヴェリック』でジェニファー・コネリーが演じるヒロイン、ペニー・ベンジャミンは前作に登場していないキャラクターと思われる方もいるだろう。

が、実は『トップガン』でトム扮する主人公マーヴェリックのプレイボーイぶりを表わすエピソードとして、相棒グースや、その妻キャロル(メグ・ライアン)のセリフによって、その名が語られている。今回のペニーの前半の振る舞いを見ると、過去のマーヴェリックのヤンチャが許せていないようだが、そこから始まる新たなラブストーリーも味。


【9】オーティスの熱唱再び


バーでマーヴェリックが初めてグースに遭遇するシーン。ここで流れているのはオーティス・レディングとカーラ・トーマスのデュエット曲「トランプ」。前作ではオーティス最大のヒット曲「ドック・オブ・ザ・ベイ」が使用され、マーヴェリックの両親が好きだった曲と語られている。


【10】グースの息子役に扮した若手演技派俳優


前作で世を去ったマーヴェリックの相棒グース。その息子ルースターを演じたのが『セッション』(2004)でおなじみのマイルズ・テラー。彼はセットに現れたときから、グースと同様にアロハシャツを着て、口ひげを伸ばして役に入り込んでいた。そんな彼にトムは「君はグースの息子だ。(グース夫妻を演じた)アンソニー・エドワーズとメグ・ライアンの息子なんだ!」とハッパをかけ続けたとのこと。


『トップガン』でグースを演じたアンソニー・エドワーズ
Photofest/アフロ


【11】グースの息子はすでに前作に登場していた!


グースの息子ルースターの幼き日は、前作でも確認できる。父の弾くピアノの上にちょこんと腰をかけている小さな男の子こそ、ルースター。『トップガン マーヴェリック』では、そんな彼が父譲りのピアノの腕を披露するのだから、血は争えないというべきか。


『トップガン マーヴェリック』でグースの息子ルースターを演じたマイルズ・テラー
Photoshot/アフロ


【12】マイルズ・テラー、ピアノの特訓を受ける!


ルースター役のテラーはピアノの名手に見えるよう、7週間の特訓を受けたとのこと。その甲斐あって、バーの場面では、前作で父が弾いていたのと同じ曲「グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー」を自分で弾けるようになっていた!


【13】ピアノの腕は父グース譲り!


ルースターがピアノを弾き歌う「グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー」は、1957年に大ヒットしたジェリー・リー・ルイスのロックンロール・ナンバー。ルイスは2022年10月、『トップガン マーヴェリック』の公開を見届けるかのように、87歳で世を去った。


【14】高度の下限を突破して叱られるのはお約束?


飛行の指導中、マーヴェリックは訓練時に規定されている高度の下限を破り、教え子のルースターをもそれに巻き込む。そのため上官に叱責されるのだが、前作でも彼は危険な下限越えで、厳重注意を受けた。訓練時でも無茶ぶりは変わっていない!?


【15】CGナシ! 飛行はすべて本物!!


いまや、CGでなんでも映像化できてしまう時代だが、本作の航空シーンはすべて実写。製作陣は海軍と密に連携をとり、必要なショットがある役者たちを実際に戦闘機に乗せ、撮影を敢行。地上10メートルという超低空飛行の場面をも実写での撮影に成功したというから驚き!


【16】前作以上にやる気を見せたヴァル・キルマー


前作の主要なキャストで再び出演を果たしたのは、トムを除けばアイスマン役のヴァル・キルマーのみ。実はキルマーは、前作で出演のオファーを受けた際、主演しか経験したことがなかったので、この助演出演を拒み続けていたという。今回は続編の製作が発表になった頃から「続編への出演の準備はできている」とネットで発信し、やる気を示していた。


『トップガン』でアイスマンを演じていた当時のヴァル・キルマー(右)
Photofest/アフロ


【17】喉頭がんの演技は、ただの演技ではない


前作ではトップガンの座をかけてしのぎを削るライバル同士だったが、続編ではアイスマンは海軍の将軍に出世している。とはいえ、喉頭がんを患っており、余命いくばくもない……という設定。これはキルマーが実際に同じ病気を患っており、闘病生活をおくっている現実と重なる。


【18】マーヴェリックとアイスマンの胸アツハグ、再び!


マーヴェリックと久しぶりに再会したアイスマンは、うまく声が出せないながらもコンピューターのモニターを使って対話し、ミッションを引き受けるよう説得。両者がしっかりとハグし合う場面は、前作のラストのように胸アツの名シーンだ。


【19】健康的でセクシーなビーチスポーツ


『トップガン』にはマーヴェリックとグースのタッグが、ライバルのパイロット、アイスマンと相棒のチームを相手にビーチバレーの熱戦を繰り広げるシーンがあった。この場面は上半身裸のトムの鍛え抜かれた肉体が映し出されたこともあり、女性ファンはもちろん、米国ではゲイのコミュニティで評判となるほどの人気を博した。
『トップガン マーヴェリック』では競技はビーチフットボールに変更されているが、トムはもちろん、トップガン候補生たちの肉体美が、夕陽に照らされた海辺の美しい景色の中に映えまくる。


【20】フットボール時の雄叫びに耳を傾けよ!


ビーチフットボールの場面では、前作のビーチバレーのシーンに出演したリック・ロソヴィッチの雄叫びがサンプリングで使用されていた! これはソフトリリース後、米国人の熱狂的な女性ファンが見つけたもの。じっくり耳を傾けないと気づかない、そんな大発見に、映画の製作陣もSNSを通して賛辞を送った。


【21】教えてくれ、グース


前作のクライマックスで窮地に追い込まれたマーヴェリックが、亡き相棒の認識票を握りしめながらつぶやく「Talk to me,Goose(=教えてくれ、グース)」。
このセリフは、今回も作戦直前、空母の上から海を見つめて、マーヴェリックがつぶやかれる。グースのような犠牲者をこれ以上出したくない、そんな彼の思いが伝わる場面だ。


【22】パイロット最大の肉体的試練=“G”とは何か?


劇中でしばし語られる“G”とは重力加速度のこと。地上で暮らす普通の人間のそれを1Gとすれば、3Gは体重の3倍の重力を受けている状態。本作でマーヴェリックは10Gを体感しながら機体を急上昇させるが、それは飛行士として厳しい訓練を受けていても気絶するほどの圧なのだ。


【23】若き役者たちvsG


飛行機の操縦の心得があるトムにとって、本作をリアルに見せるために必要だったのは、トップガン候補生たちを演じる俳優を、実際に戦闘機F/A-18に乗せて飛ばせることだった。
そのため、マイルズ・テラーら若手俳優たちはトムの組んだ戦闘プログラムに参加して訓練を積み、実際に7.5〜8Gを体感することになった。中には、その度に吐いてしまう役者もおり、飛行時の彼らの苦悶の表情は、ただの演技ではないのだ。


【24】36年前のマーヴェリックの愛機が再登場


機を失い、敵陣に紛れ込んだマーヴェリックとルースターは、敵軍の保管庫からF-14機を奪って脱出を図る。そう、前作でマーヴェリックが乗っていたのと同じ型の戦闘機だ。36年前には最新鋭だった、この機種も今や骨董品。それだけに脱出はスリリングに!


【25】F-14に重なる父と息子


前作ではマーヴェリックが操るF-14の後部座席には、つねに頼れる相棒にしてレーダー要員のグースがいた。今回のF−14飛行のクライマックスでは、その座席にグースの息子ルースターがいる。それだけでアツくならざるをえない!


【26】管制塔に挨拶を


前作でマーヴェリックはテスト飛行時の着陸前に、管制塔スレスレに飛行して管制官を驚かすという、茶目っ気にあふれた飛行をやってのけた。彼の無鉄砲な性格を表わす場面だが、『トップガン マーヴェリック』では歳をとって教官となったことだし、さすがにもうやらないだろうと思いきや、最後の最後にこれをサラっとやって見せる。


【27】帰還時の音楽も前作を踏襲


マーヴェリックとルースターが空母に帰還し、艦上の仲間の喝采に迎えられる場面では、前作のスコアがアレンジを変えてフィーチャーされる。もちろん、エモさは格別!


【28】愛のフライト機はトムの所有物!


ラストでマーヴェリックがペギーを乗せて飛び立つP-51Dマスタングは第二次世界大戦時にアメリカで使用されていた戦闘機。撮影には、トムが個人的に所有していたものが使われた。ちなみにお値段は5億円とのこと。


【29】映画音楽の巨匠がレディ・ガガをプッシュ


エンディングのフライトをロマンチックに彩るのはレディ・ガガのオリジナル曲「ホールド・マイ・ハンド」。音楽を担当したハンス・ジマーはトムら製作陣を自身の“音楽室”に招き、この曲を演奏して聴かせた。
「僕らがそのときに必要としていたものと、まさに一致していた」とトムは振り返る。


『トップガン』撮影時のトニー・スコット監督(左)とトム・クルーズ
Photofest/アフロ


【30】亡き前作の監督へのオマージュ


画面が暗転する直前のエンドクレジットには“トニー・スコットに捧げる“というテロップが。スコットは言うまでもなく前作の監督で、続編の製作初期には監督として本作に関わっていたが、2012年にこの世を去ってしまう。
彼に代わって監督を務めたジョゼフ・コジンスキーはスコットに敬意を表し、前作のトレードマークともいえる夕陽の美しい映像をしばしフィーチャー。ラストシーンも夕陽で締めくくった。


文/相馬学