7月16日、集英社新書から『完全解説 ウルトラマン不滅の10大決戦』(古谷敏/やくみつる/佐々木徹・著)が発売された。同書は、ウルトラマンマニアの漫画家・やくみつる氏が、ウルトラマン全39話の中から、怪獣との戦いに焦点を当てて10大決戦を選出。そのバトルにについて、ウルトラマンのスーツアクターを務めた古谷敏(ふるや・さとし)氏に撮影時の心境や裏話などを聞き、『ウルトラマン』という作品の新たな一面を描き出そうというものだ。

ところがこのベスト10には、『ウルトラマン』でもっとも有名な怪獣が入っていない! バルタン星人、レッドキング、メフィラス星人である。これには読者および著者の1人であるライター佐々木徹氏も、どうにも納得がいかんだろ!......ということで、佐々木氏自ら番外編として、この3大決戦の舞台裏を聞き出すことにした。

『完全解説 ウルトラマン不滅の10大決戦』は集英社新書より好評発売中
『完全解説 ウルトラマン不滅の10大決戦』は集英社新書より好評発売中

原点にして頂点――。

どのジャンルにおいても、よく使われ、すでに手垢の付いたフレーズではあるけれど、7月16日に出版された『完全解説 ウルトラマン不滅の10大決戦』(集英社新書)に携わったことで、よりリアルに初代ウルトラマンが「原点にして頂点」だったと感じている。

では、何が原点で頂点なのか。

その点に触れる前に、まずは異色ともいえる、この新書について説明しよう。

今年、テレビ放送55周年を迎えた『ウルトラマン』。放送当時、平均視聴率30%を記録した、誰もが知っているヒーローであり、日本のテレビ史にも燦然とその名が輝く『ウルトラマン』には当然のことながら、関連する書籍、ムック本、グラビア誌などが数多く出版されている。

しかし、ウルトラマンvs怪獣・異星人の戦いがメインの番組なのにもかかわらず、戦い模様に特化した書籍、例えばウルトラマンはなぜ、あの怪獣に対して相撲技を多用したのか、なぜスペシウム光線を放たなかったのか......などを考察したものは、これまでに存在していなかった。

長年、なぜだろう?と、どうしても解せなかったのだ。こうなると、自分で解決してみるしかない、と思い立ち、制作がスタートしたのが『完全解説 ウルトラマン不滅の10大決戦』だった、というわけだ。

そこで初代ウルトラマンのスーツアクター、古谷敏さんを招き、聞き役として小学校2年生のときにリアルタイムで『ウルトラマン』を観て以来、今も憧憬し、愛情を注いでいる4コマ漫画の大家やくみつる先生に参上願った。

なにせ、やく先生は相撲道には一家言お持ちだし、他の格闘技にも造詣がある。なにより、クイズ王の名に裏打ちされた雑学と並外れた記憶力、そして、ウルトラマンへの深き愛情が古谷さんの記憶回路をも刺激し、戦いの舞台裏を鮮明に浮かび上がらせることができると確信していた。

ちなみに私、佐々木徹は表面的には司会進行だったが、単におふたりの対談における箸休め? 太鼓持ち? ペット? 賑わし役のポジションを必死に務めさせていただいた。

要するに、その対談の前に全39話の対決シーンを精査すべく、改めて見直してみたのだが、どの回も今もって新鮮で、色褪せていないのが凄い。

脚本の勧善懲悪ではくくれない内容の濃さはむろんのこと、必然性のある怪獣・異星人の出現の演出、カメラワークの巧みさ、特撮技術の説得力。もちろん、ウルトラマンと怪獣・異星人たちの痛さやダメージがモロに伝わってくるスリリングな攻防。

他にも毎回、子供を思いやっているストーリー展開なのに、安易に子供たちにおもねっていない潔さ、などなど。そうだ、忘れちゃいけない怪獣・異星人の斬新な造形の見事さ。

どれを取り上げても、その後のウルトラ・シリーズの作品らが追いつけないクオリティの高さとオリジナル性を誇っている。だからこそ、胸を張って主張できるのだ。

初代ウルトラマンは"原点にして頂点"である、と。

さて、以上のような経過をたどり、原点にして頂点のウルトラマンの戦いを、プロレス・格闘技の観点などから3人で解説、考察した結果は、できれば『完全解説 ウルトラマン不滅の10大決戦』をご購入していただき、じっくり読み込んでもらえると嬉しい限り。

で、本題はここから。

本書の特色のひとつに、戦いをランク付けしたことが挙げられる。やく先生が1戦1戦、丁寧にバトルタイムを計り、そこで繰り広げられた技の数々を吟味、後世に伝えるべき戦いを10位から1位にランク付け。ランクインさせた、やく先生独自のエビデンスは本書を読んでいただければ、ご納得してもらえると思っているけども、どこか釈然としていないのも事実。

では、どこが釈然としないのか。いや、何がスッキリとしないのか。

これはもう、ネタばらしになってしまうが、私のお気に入りのメフィラス星人がランク外だったのだ。

今でも、多少ムッとしている。そりゃ、やく先生的にウルトラマンvsメフィラス星人の戦いには、特筆すべき攻防がなかったかもしれない。派手な技の掛け合い、激しい肉弾戦もなかったかもしれない。それでも、大事な何かが忘れ去られてしまった寂しさが拭い去れない。

というか、もっとぶっちゃけてしまうと、人気のレッドキングもバルタン星人も、悲しきランク外。

これは、いかがなものか。果たして許されてよいものだろうか。

すでに本書をお読みになった方々の中にも、そのような異議を唱えている人が少なからずいるはず。

こうなりゃ書き方が少し乱暴になりますけど、メフィラス星人やレッドキング、あの"フォフォ"のバルタン星人は、今でも老若男女に大変な人気と支持を集めているんだぜ。

ウルトラマンの放送以降、この50年以上もの長き歴史にわたり、常にTシャツや雑貨類などにも登用され、愛され続けてきたメフィラス星人、レッドキング、バルタン星人をないがしろにしていいわけがない。その戦いの舞台裏を明らかにされないのは、実にもったいないではないか。

となれば。

この『完全解説 ウルトラマン不滅の大決戦』制作の"原点"に戻り、人気ウルトラ怪獣の〝頂点〟であるメフィラス星人、レッドキング、バルタン星人のウルトラマンとの戦い模様を直接、古谷敏さん、いや、ウルトラマン本人から、改めてうかがうしかないと思ったのである。

人気ウルトラ怪獣の名誉を守るためにも、いざ、出撃!なのだ。

 * * *

古谷 今日は何かな?

佐々木 えっと、んと、畏れ多いことではございますが、やく先生のランク付けに文句がございまして。

古谷 根拠ある素晴らしいベスト10だったじゃないですか。僕は文句などありませんよ(笑)。

古谷敏(ふるや・さとし) 1943年生まれ。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢さ れ、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。翌年、『ウルトラセブン』 ではアマギ隊員を好演。『ウルトラマンになった男』(小学館)
古谷敏(ふるや・さとし) 1943年生まれ。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢さ れ、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。翌年、『ウルトラセブン』 ではアマギ隊員を好演。『ウルトラマンになった男』(小学館)

佐々木 それはそうなんですけどね。それでもメフィラス星人、レッドキング、バルタン星人といった日本国民に人気の高い連中がですよ、ランク外というのは許されるもんじゃないと思う次第でございまして。

古谷 ハッハハハ。

佐々木 そこで彼らのためにも、ここはひとつ、古谷さんに当時の戦い模様を語っていただければな、と。そうすれば、彼らも報われるのではないか、と。

古谷 はい、わかりました(笑)。まあ、それぞれに観る視点によって変っていきますよね、ランク付けは。やくさんの場合、戦いの攻防にフィーチャーした結果、あのようなベスト10となった。でも、人気という視点に立てば、レッドキングもバルタン星人も当然、ランクインしますものね。

佐々木 まずは、私の好きなメフィラス星人についてなのですが。

古谷 知的な異星人でした。ただ、知的ではあるけれど、何をするかわからない不気味さを秘めた星人でもあったと思います。

佐々木 ああ、人間にもいますよね。一番ヤバそうなタイプといいますか。

古谷 そうそう(笑)。普段は紳士的なんだけど、キレた瞬間に、何をするかわからないというね(笑)。

佐々木 実際に、メフィラス星人と戦ってみた感想は?

古谷 う〜ん、戦ったといっても、メフィラス星人とは体を使ってのがっぷりよつではなく、互いの光線技の応酬でしたし。だから、やくさんはランク外にしたんでしょう。逆に聞くけど、どうしてそんなにメフィラス星人にこだわるの?

佐々木 結果的にウルトラマンと引き分けたことも大きいんですが、やっぱり、あの名言です。

古谷 はいはい。

佐々木 ウルトラマンとの攻防中に、メフィラス星人が口にした「よそう、宇宙人同士が戦ってもしようがない」のセリフ。痺れましたねえ、マジに。それまで戦いはお互いに、バッコンバッコンやり合うものだと思っていた子供が、メフィラス星人のその言葉で違った決着の付け方を教わった? 学んだような気がします。

佐々木徹(ささき・とおる) 週刊誌等でプロレス、音楽などのライターとして活躍。格闘技、特撮ヒーローもの、アニメ、ブルース・リー映画などに詳しい。『週刊プレイボーイのプロレス』(辰巳出版)
佐々木徹(ささき・とおる) 週刊誌等でプロレス、音楽などのライターとして活躍。格闘技、特撮ヒーローもの、アニメ、ブルース・リー映画などに詳しい。『週刊プレイボーイのプロレス』(辰巳出版)

古谷 そのときの衝撃が、今も忘れずに心の中に刷り込まれているわけだ?

佐々木 そういうことです。

古谷 話し合いも、突き詰めていけば"戦いである"ことを学んだ?

佐々木 はい。大人になってから。とくに女性とのヒリヒリした話し合いのとき、リアルにそう感じております。

古谷 ワッハハハ。

佐々木 ホント、あの言葉はどんな光線技よりも、少年の心を震わせましたよ。

古谷 結局は、大人の駆け引きなんですけどね。ただ、見た目は激しい攻防ではなくても、ウルトラマンはメフィラス星人と、見えない精神的にキツい攻撃のやり取りをしているんですよ、あの一言のせいで。

佐々木 というのは?

古谷 メフィラス星人に"よそう、宇宙人同士が戦ってもしようがない"と語りかけられた瞬間、彼の余裕とでもいえばいいのかな、そういう雰囲気を感じ取るわけです。つまり、"ウルトラマン、あなたは強いだろうが、自分もかなりなもんだぞ"ってことがヒシヒシと伝わってくるセリフでもあるわけです。

佐々木 ええ。

古谷 これが実は厄介でね。ウルトラマンはあのとき、"本当にそうだろうか? メフィラス星人はウルトラマンと同等か、それ以上の強さを持っているのかも?"と疑心暗鬼になる。もしかしたら、それが結果的に、彼の狙いだったかもしれない。戦いにおいて、そうやって疑心暗鬼になるのは心の負けにつながるんです。心の負けは肉体の負けよりも、ダメージが大きい。

佐々木 ええ、はい。

古谷 だから、心が負けないように、あのときウルトラマンはなんとか精神的に優位を保とうとしているんですよ。メフィラス星人が〝よそう〟と提案してくるのなら、"戦えば間違いなく自分が勝つだろうし、負けるわけがない。だったら、提案を飲もう。ウルトラマンは絶対に無駄な殺生はしない。今回は引き分けでもよい"と自分の気持ちに決着をつける。

裏を返せば、そうやってメフィラス星人より精神的優位に立とうと、ウルトラマンはいろんな考えを巡らせ、気持ちを奮い立たせなければいけないほど精神的に追いつめられていたということ。あの戦いの本当の勝負所は、そんな心理的な攻防のやり取りにあったと思います。

そういう意味でも、メフィラス星人は知的でありながら、どこか油断ならぬ狡猾な異星人、不気味な強敵だったことは確かでしょう。

撮影/鈴木昭寿