お笑いコンビ・金の国のふたり。写真左が渡部おにぎりで、右が桃沢健輔
お笑いコンビ・金の国のふたり。写真左が渡部おにぎりで、右が桃沢健輔

坊主頭で野球部出身の体育会系で、いつもニコニコ明るい渡部おにぎりと、メガネをかけた漫画研究会出身の文科系で知的でクールな桃沢健輔が組む、お笑いコンビ・金の国。

彼らは9月に放送された、今年活躍が期待される芸人を集めた大会『ツギクル芸人グランプリ2021』(フジテレビ)で優勝を果たし、10月16日には『マイナビLaughter Night』(TBSラジオ)のグランドチャンピオン大会でも優勝。今、大注目のこのふたりが、どのような変遷を経てコンビとして出会ったのかは、10月30日に配信した前編で触れた。

その後編となる本記事では、コンビ結成後、勢いがついてきた「金の国」に降りかかった試練について、芸人とライターの二足の草鞋(わらじ)を履くインタビューマン山下が話を聞いた。

***

――前編では、渡部さんが今年の「R―1グランプリ」(関西テレビ系)で準決勝に進出したところまでお聞きしました。そこで事件が起きてしまったそうですが。

渡部 そうなんです。準決勝の行なわれた会場が大きなホールだったんで、リハーサルの時に「声をかなり張らないと聞こえないな」と思ったんです。それで本番を迎えて、ネタが始まって10秒ぐらいのところで、大きな声を出すセリフがありまして。

大声で叫んだ途端(とたん)に、軽い酸欠になって頭がクラクラして一瞬気を失ったんです。すぐに元の状態に戻ったんですが、頭が真っ白で、セリフも全く思い出せなくなって。

桃沢 このネタは僕が考えたし、気になって配信で見てたんですよ。冒頭の1番大事なつかみで「全滅だ!」ってセリフだったんですけど。それを叫んだらパーンってセリフが飛んじゃって。頭の中の情報も"全滅"しちゃったようです(笑)。

渡部 ワハハハ! その後は自分が一瞬、何をやってるのか分からないぐらいだったので、ネタはもう思い出せないと思ったんです。でも何かはやらないといけないというのがあって、ネタに全くない自作のオリジナルの曲を歌いだして。

桃沢 自作の曲とか、そんないいもんじゃないよ(笑)。僕は、渡部が歌いだした時に「準決勝で爪痕を残すために、めちゃくちゃなことをやりだしたのかな?」って思いました。

渡部 そんな度胸ないよ(笑)。

桃沢 その後、泣きながら電話が来たんで「ああ、そんなんじゃ、なかったんだ」って(笑)。

渡部 結局、30秒ぐらいで舞台を降りてしまって。だから、会場もざわざわしてたんですけど、MCの方が出てきてくれて「賞レースはこういうことがあるんですよ。彼も緊張してたんですね」ってフォローしてくれたんです。

桃沢 僕は、次にネタをやる芸人さんに影響でないかなと思って心配で。でも次が吉住さんだったんですけど、信じられないぐらいウケてました(笑)。それで安心しましたね。

渡部 しっかり後日、吉住さんに「すいませんでした」って謝りました(笑)。

桃沢 渡部のポンコツぶりは、それだけじゃないですよ。昔コントの衣装が濡れてるのに、そのままカバンの中にぶち込んで2日ぐらい放置してて、カビて臭くなってたんですよ。その衣装を別の日のライブでそのまま着てたんで、僕は臭いがお客さんにバレるんじゃないかと思って、舞台が暗くなった時に手で「後ろに下がれ」って指示したんです。

けど、渡部が勘違いして僕のほうに近づいてきちゃって。それで照明がついたら、思った以上に僕と近かったんで、渡部がパニクってネタを全部飛ばしたんですよ(笑)。

いろいろポンコツなんでしょうけど、渡部さんに大声で笑われるとすべてを許してしまう
いろいろポンコツなんでしょうけど、渡部さんに大声で笑われるとすべてを許してしまう

――渡部さんは、結構ネタ飛ばしてますね。逆に。渡部さんから見た桃沢さんは、どんな人だと思いますか?

渡部 相方って、周りから暗いとかクールって言われるんですが、実は、熱いところもあるんですよ。今年の『キングオブコント』(T B S)の予選で、2回戦を突破した時に、普段は感情をあまり出さいない桃沢が、僕に「やったね!」ってスゴい喜んでて。

桃沢 そら喜ぶでしょ。

渡部 そうなんだけど、普段はそんな感じじゃないじゃん。

桃沢 「暗いクセに無理してんじゃねぇよ」って(笑)。

渡部 そんなことは思ってないよ(笑)。あとは『マイナビLaughter Night』で優勝した時も、僕は普通にガッツポーズしてたんですが、相方はジャンプして喜んでたんですよ。

――その桃沢さんがジャンプした瞬間をとらえた画像を見ました。桃沢さん全然暗くなかったです(笑)。凄く躍動感が出てたので、カメラマンさんは良い写真が撮れて「これは使えるな」って、なったと思いますよ。

桃沢 そうですよね。そう思って頂きたかったというのもあるんですよ。

渡部 そんなことないだろ(笑)。

桃沢 そこで"はしゃごう"と思ったのは、その前の『ツギクル芸人グランプリ2021』で優勝ってなった時に「この後、仕事がいろいろ入ってきたらうまくできるかな」とか僕の性格上、先行きが不安になって来て、ワァー!て喜べなかったのをスゴく後悔してたからなんですよ。

――めちゃくちゃ冷静ですね。

桃沢 でも、勝った人はちゃんと喜んだほうがいいって思い直して。だから、勝った時は絶対に飛びあがるって決めてたんです(笑)。

渡部 そうだったんだ?

――え! あれは用意してたジャンプだったんですね。冷めましたわ(笑)。

渡部 そうですよね。今、僕も冷めましたもん(笑)。

桃沢 でも、喜びを作ったわけじゃないですよ。

――でも、ジャンプは用意してたんでしょ?

桃沢 確かに、自然発生的なジャンプではなかったかもしれません(笑)。

事務所に来るファンレターのほとんどは、桃沢さん宛なのだそう
事務所に来るファンレターのほとんどは、桃沢さん宛なのだそう

――桃沢さん、実はかなりの戦略家ですね。おふたりはお世話になってる先輩はいらっしゃるんですか?

桃沢 事務所は違うんですが、サツマカワRPGさん(「怪奇!YesどんぐりRPG」でブレイク中)が僕らのことを「面白い」って言ってくれてライブの主催者の方と僕たちをつなげてくれたんですよ。それでライブに出れる数が増えたんです。本当、1年半ぐらい前からものすごくお世話になってます。

渡部 そうだね、ありがたいね。あとは、事務所の先輩でいうとサンシャイン池崎さん。僕らが事務所に所属して1ヵ月ぐらいの時に、池崎さんの単独ライブにエキストラですが、ちゃんとセリフのある役で呼んでもらったんです。その時から「お前ら声もいいし、演技もいいな」って言ってもらって。そこから、毎年単独ライブに呼んでもらったり、お食事に連れて行ってもらったらりしてます。めちゃくちゃありがたいです。

桃沢 池崎さんと僕らは、芸歴10年ぐらい離れているんですけど、めちゃくちゃフレンドリーに接してくれるんですよ。

渡部 スゴい優しい方です。

おふたりに『週プレ』を差し上げたところ「え! DVDまでついてるのにもらっていいんですか」とのリアクション。インタビューは今回がほとんど初めてなのだそう
おふたりに『週プレ』を差し上げたところ「え! DVDまでついてるのにもらっていいんですか」とのリアクション。インタビューは今回がほとんど初めてなのだそう

――今後、やってみたい仕事はありますか?

桃沢 僕は、子供の頃からポケットモンスターが大好きなんで、ポケモンの映画の声優さんとかできたら最高だなって。

――会いたい声優さんはいらっしゃるんですか?

桃沢 山寺宏一さんは好きですね。あとは、花澤香菜さんが同じ大学出身でゼミの教授も一緒なのでお会いしてみたいです。

――桃沢さんは芸人になる前に漫画家のアシスタント経験もあるし、今でもインスタに絵をあげたりしてますが、マンガを描いてみたいとかはないんですか?

桃沢 マンガに対する気持ちはありますね。不完全燃焼のまま諦めた感じはあるので、やってみたいです。事務所の先輩であるハナコの秋山(寛貴)さんが絵を描いたりされてるんですけど、そのおかげで僕も絵の仕事をいただいたりしてるんです。だから、僕も漫画を描いて、それを才能のある後輩に還元できればいいなと思います。

渡部 僕は野球が大好きで、横浜出身というのもあって、横浜ベイスターズのファンなんです。だから野球関連のお仕事のオファーとか来ないかな〜と思って(笑)。『アメトーーク』さんの「プロ野球大好き芸人」とか出てみたいです。あとは、始球式に呼んでもらえたら最高です。

――その時は、名前が渡部おにぎりですから、おにぎりを投げるんでしょ。

渡部 めちゃくちゃいいですね(笑)。

桃沢 あぁぁ、それは勇気いるな。球場を汚くすることになるし、食べ物を粗末にしたって大炎上する可能性がありますね(笑)。

渡部 横浜スタジアムは人工芝がきれいだからな(笑)。

***

戦略家で、渡部のプロデューサー的立ち位置も担っている桃沢。誰にでも愛されるキャラクターを持つ渡部。養成所でふと出会ったふたりが、この先どんなお笑いの道を開拓していくのか、楽しみだ!

●金の国(K I N N O K U N I)
1994年生まれ神奈川県出身の渡部(わたべ)おにぎり、1993年生まれ新潟県出身の桃沢健輔(けんすけ)からなるお笑いコンビ。2017年に結成し、本年は『ツギクル芸人グランプリ2021』(フジテレビ)や『マイナビLaughter Night』(TBSラジオ)など、若手の登竜門的な賞を総なめしており、ブレイクが待たれる。金の国YouTubeチャンネル「金の国玉転がしチャンネル」(https://www.youtube.com/channel/UCZlpfTYv4tIKhQQ3vAqxtYw)もチェック

●インタビューマン山下(INTERVIEWMAN YAMASHITA)
1968年、香川県生まれ。92年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも17年に芸人を引退し、ライターに転身。21年、芸人に復帰し現在は芸人とライターの二足のわらじで活動している

取材・文/インタビューマン山下 撮影/榊 智朗