M−1で優勝した錦鯉も月間チャンピオンだった
M−1で優勝した錦鯉も月間チャンピオンだった

2015年4月、深夜に始まった30分のラジオ番組が「出世番組」と話題になっている。番組に出演した月間チャンピオンの中から、M−1、キングオブコントなど賞レースのファイナリストや優勝者が数多く誕生しているのだ。なぜ、スター芸人たちを続々発掘できるのか? 番組制作者に直撃した。

■芸人たちが自由にネタがやれる場を

――『マイナビLaughter Night(以下、ラフターナイト)』は毎月およそ40組の若手芸人たちがライブでネタを披露し、観客の投票によってオンエアを決めるラジオ番組です。番組立ち上げの経緯は? 

志田卓プロデューサー(以下、志田) 番組が始まったのは2015年の4月。当時のお笑い芸人の活躍の場所はバラエティ番組のひな壇ばかり。ネタを披露する番組がほぼありませんでした。キングオブコントやR−1は開催されていましたが、M−1はなかった。「ネタ番組が最近全然ないからやってみたいね」みたいな感じで。

プロデューサー・志田卓氏。TBSラジオで24時台の番組を統括。『空気階段の踊り場』『ほら!ここがオズワルドさんち!』『マイナビLaughter Night金の国のたまごどんぶり』などの番組を担当
プロデューサー・志田卓氏。TBSラジオで24時台の番組を統括。『空気階段の踊り場』『ほら!ここがオズワルドさんち!』『マイナビLaughter Night金の国のたまごどんぶり』などの番組を担当

越崎恭平ディレクター(以下、越崎) 前年までM−1が休止していて『THE MANZAI』がそれに代わる大会としてあった頃ですね。

志田 それで、芸人がライブでどんなネタをやっているか見に行ったら面白くて。

越崎 メディアに出るチャンスがない芸人たちがライブでやっているネタのレベルが高かった。

志田 これなら大丈夫と思って番組を立ち上げました。

ディレクター・越崎恭平氏。フリーディレクター。TBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』『空気階段の踊り場』『ほら!ここがオズワルドさんち!』、文化放送『宮下草薙の15分』などを担当
ディレクター・越崎恭平氏。フリーディレクター。TBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』『空気階段の踊り場』『ほら!ここがオズワルドさんち!』、文化放送『宮下草薙の15分』などを担当

――立ち上げの年に、まだまだ無名で若手のメイプル超合金やモグライダーが、翌年には空気階段が月間チャンピオンになりました。

越崎 モグライダーは去年のM−1で注目されて、いろんなテレビ番組に出ていますが、芝さんのツッコミは7年前からすごかったですね。空気階段はハマったときの爆発力がハンパなかった。確か錦鯉(にしきごい)も6年前の月間チャンピオンです。当時からM−1で優勝したときと同じぐらいウケてました。

モグライダー
モグライダー

――その空気階段がキングオブコント、錦鯉がM−1で優勝。モグライダーもM−1でインパクトを残したことで、番組に出演する芸人を選ぶ番組スタッフの選球眼の良さを称賛する声もあります。

志田 そんなことありません。

越崎 一般的なお笑いライブではネタ見せがあって、それを通った人が合格したネタを舞台でやるけど、この番組のライブはネタ見せなし。僕らもどんなネタをやるのかわからない。

志田 効果音などを使うコントは段取りが必要なので、どんなネタをやるのか事前に少しだけわかりますが、出来上がったネタを見るのは番組収録の舞台が初となります。

メイプル超合金
メイプル超合金

――ラジオなので音で伝わるネタを。そんな制約があるのにネタ見せなしでやっても大丈夫なんですか?

志田 出演者には、そのあたりをしっかり伝えているので。

越崎 ただ、なかには音では伝わらないネタをやってしまう人もいます。公共の電波を使って放送できないようなネタをすることもあります。でも、そういうネタがオンエアされないことに気づいて、キッチリ修正してくる。だからダメ出しすることもありません。

志田 ライブのように自由にできる環境をつくっているだけなんです。

越崎 今はコロナなのでやっていませんが、コロナ前は100人の観客が審査員というスタイルでやっていたので、「たくさんの人の前でやるのは初めて」とか「普段のライブではウケないけど、ここに来るとウケるので自信がつく」と言ってくれる芸人もいるのですが、お客さんに関してはラジオを聴いて応募してきた人を選んでいるだけで。

志田 ラジオを聴いてくれる方って、普段からいろんなパーソナリティの話を聴いているからなのか、笑いどころをしっかり待ってくれて、ドカンと笑う。リスナーと演じる人がすごいんです。

カミナリ
カミナリ

■野宿してラジオ局へ。空気階段・鈴木もぐら

――年に一度開催される「チャンピオンLIVE」。ニューヨーク(15年)、オズワルド(20年)といった優勝者の面々もすごい。特に空気階段(16、17年)はTBSラジオでレギュラーを獲得するなど、番組が発掘したスターといえる存在ではないでしょうか。

越崎 初めてコントを見たときは、ウケてなかったけどインパクトがすごかった。番組のライブに出てもらうようになってからも、お客さんの反応に当たり外れがありましたが、ほかにどんなネタがあるんだろうっていう個人的な興味だけで呼んでました。

初出場から1年くらいで、カミナリや錦鯉を抑えてチャンピオンLIVEで優勝。そこから冠特番を経て、ラジオのレギュラーを獲得しますが、メディア出演の経験がほぼゼロで最初は大変。もぐらは野宿してそのままTBSラジオに来るから悪臭がすごい。かたまりはお菓子のゴミを散らかして帰る。「お風呂に入る」「ゴミはゴミ箱に捨てる」というところから始めました。

ただふたりのいいところは、そんな欠点を隠さない、隠せないところだと思います。番組を続けるうちに「こんなやつらも頑張って生きてるから自分も頑張ろう」って思うリスナーが増えた気がします。

空気階段
空気階段

――オンエア争奪ライブを見せてもらいましたが、テレビで見る機会が少ない人が多い印象でした。

志田 「リスナー投票型の『芸人発掘』ラジオ」がキャッチコピーなので、今後もまだ世間に知られていない面白い人たちをどんどん見つけていきたいですね。

【『マイナビLaughter Night』とは?】
毎週金曜24:00〜25:00放送のTBSラジオの番組
・24:00〜24:30⇒「オンエア争奪ライブ」の中から観客投票上位の芸人をオンエア
・24:30〜25:00⇒年間チャンピオンの冠番組(2021年の年間チャンピオン・金の国が現在担当)

■熱い戦いが繰り広げられる「オンエア争奪ライブ」の流れ
・月に1回、TBSのスタジオでライブを開催
・エントリーフォームで応募されてきた中から、スタッフが選んだ芸人が参加しネタを披露(40組ほど)
・ライブの観客投票でオンエアされる芸人が決定(20組ほど)
・ネタは毎週4、5組ずつ、1ヵ月かけて放送
・オンエアされたものはYouTubeにアップ
・リスナー投票やYouTubeの再生回数などで月間チャンピオンを決定
・月間チャンピオンは年に一度開催されるチャンピオンLIVEに出場
・チャンピオンLIVEで優勝するとTBSラジオで冠特番を放送する権利を獲得

取材・文/渡辺雅史(リーゼント) 撮影/下城英悟