初代『ウルトラマン』(1966〜1967)の放送以降、国民的な人気を誇るウルトラマンシリーズ。その最新作『ウルトラマンデッカー』が話題だ。8月8日に発売された「週刊プレイボーイ」34・35合併号では「ウルトラマンヒロイン大集合!」と題し、歴代のウルトラマン美女たちが登場した。最新水着グラビアだけでなくインタビューなども収録し、それぞれがシリーズへの愛を披露してくれている。

その特集より、歴代ヒロイン4名のインタビューを、4日間連続で週プレNEWSにて再掲載。今回は『ウルトラマンネクサス』(2004〜2005)で、西条凪役を演じた佐藤康恵さんが登場。西条凪は、地球解放機構「TLT」に属する対ビースト(怪獣)要撃チーム・ナイトレイダーAユニット副隊長。ビースト(怪獣)に対して強烈な憎悪を抱いており、任務遂行に関しては冷徹すぎる態度をとることも。作品から得たものや当時の心境、そしてウルトラマンシリーズの魅力を語る。

佐藤康恵さんが演じた西条凪
佐藤康恵さんが演じた西条凪

――『ウルトラマンネクサス』は、裏切りや死も生々しく描かれ、隊員たちの人生の背景も丁寧に紐解かれるなど、シリアスな人間ドラマが盛り込まれていることが大きな特徴でした。

佐藤 大人が見ても、真剣に入り込める作品ですよね。もう18年前の作品ですけど、時代を感じさせない作品だなというのも、すごく感じています。実際、私の同級生の子どもが、今『ネクサス』にハマっているという話を聞いていたりもしますし。

――最初は、どういう経緯でオファーがあったんでしょうか?

佐藤 監督のなかのひとりだった小中(和哉)監督からのお話でした。『ネクサス』の前に、小中監督が手がけた映画『なぞの転校生』に出演させていただいた経緯もあり、何かこう私に挑戦してほしい、一緒に作っていければ素晴らしい女性隊員像が作れるんじゃないか、そんな監督の気持ちを受け止めての出演でした。でも、台本を読む前は、女性隊員だし、いわゆるキャピっとした役なのかなとか、そんな想像もしていたんですけど(笑)。

――ところが、佐藤さんが演じた西条凪は、冷静沈着な副隊長で、隊員に対して冷酷非情とも思える言動も辞さない人物でした。強くて凛としていて、でもどこか切なくて儚さも時折垣間見せる。そんな表情も印象に残っています。

佐藤 そうなんです。私が演じる西条凪は、過去にビースト(怪獣)に親を殺された経験があって、心に深い闇を抱えた女性でした。しかも、演技の上ではその闇をわかりやすい喜怒哀楽で見せるのではなく、静かな心の動きで表現し、その上で怒りや憎しみの裏にある強さを出すことをスタッフさんに求められたんです。そんな役を演じた経験のない当時は、本当に苦心しましたね。

――そこは、どうやって克服していったんですか?

佐藤 まず、一人で台本を読んでいるだけじゃ、絶対に正解に辿り着けないんです。なので、撮影現場では意識して監督さんたちと「このセリフを言っている時の凪の心情は?」など、細かく話すようにしました。その上で、照明さんやカメラマンさんからアドバイスをいただくんです。「ここ、もっと冷めててもいいんじゃん?」とか「凪は性格的に真っ直ぐで裏表がないから、怒ってたらもっと怒った顔になっていい」とか。

――監督以外のスタッフが、撮影中にそこまで細かいアドバイスをくれるんですね。

佐藤 本当に熱いんですよ。それ以外にも、「奥に秘めている恨みとかの感情が強いからこそ、前面に出ないように」とか「強いセリフだからこそ、冷め気味に」とか。あとは、「もっと体の角度を意識しろ!」だったり、動き出しに関してもですね。

――「動き出し」というと?

佐藤 ウルトラマンシリーズでは、自然の流れで動いている見せ方ではなく、何か決意のようなセリフを言って、その気持ちがあるからこその次の動きだということですよね。

――例えば、「絶対に負けない!」というセリフを言ったあとに、力強く前を向いて走っていくというような。

佐藤 はい。そういった動きの意味やタイミングも、いろいろとアドバイスしていただきました。たくさん怒られましたけど、良かった時はすごく褒めてくれるんです(笑)。怒られるときは、「女優なんだから、もっと(立ち姿が美しく見えるように)姿勢を意識しなきゃダメだ!」とか。褒められるときは、「目線がいいぞ!」などと言われました。怒られたり褒められたりしながらも、とにかく和気あいあいで、家族みたいでしたね。そこにいる全員が作品にがっつり関わって、距離がないっていうか。撮影が終わったあとのスタッフさんたちは、いつもみんなで飲みに行く感じでしたし(笑)。

――当時の佐藤さんにとって、間違いなく新境地だった。

佐藤 そうですね。闇を抱えている役なんですけど、物語が進むにつれて、その闇に刺さっているトゲを一本一本抜いていくような、まとわりついている糸のようなものをちょっとずつ解きほぐしていくような演技をさせていただけたと思います。「冷静沈着な副隊長だけど、男性ではないんだから女性らしさはなくさないようにしよう。強さや正義を語るんだけど、そこには正しさやまっすぐさだけじゃなく、必ず切なさがあるようにしよう」。そんなことを意識して、演じていたと思います。

――監督たちと頻繁に話したり、スタッフからのアドバイスを糧にして、そういう演技にたどり着いていたということですよね。そんなふうに西條凪を演じて、その後の女優活動にはどんな影響がありましたか?

佐藤 演じることが、より楽しくなりました。のめり込むことが楽しくなったし、話し合いながらみんなと作り上げていく楽しさも『ネクサス』の現場で学びました。「ここは、こう見せるんだ」と、自分を客観視しながらお芝居をする楽しさ、深さも学べたと思っています。

――佐藤さんに大きな影響を与えた『ウルトラマンネクサス』という作品、西条凪という役柄ですが、『ネクサス』や西条凪が与えてくれたものとは?

佐藤 今も心に強く残っているのは、「諦めるな!」というセリフです。「諦めるな!」は、最終回で主人公の孤門が闇の世界に飲み込まれそうな凪にその言葉をかけたり、逆に凪が孤門に「諦めるな!」と言う回があったり、シリーズ全体を通して要所要所で発せられる『ネクサス』を象徴するセリフです。そのセリフが今も心に残っているのは、撮影が過酷で貧血で倒れてしまったり、心に闇を抱えた役を演じるために四苦八苦していた自分を、鼓舞する言葉だからだったかもしれません。今も仕事などで辛い時は当時を思い出して、自分に対して「諦めるな!」と心の中で叫んでますし、自分の子にも「諦めるな!」と声を掛けることもよくあります。そんなとき、今も凪は私の中に生きていると感じるんです。

――そんなに頻繁に?

佐藤 いつも聞こえてきます(笑)。特に母親になってから、余計に自分に響いているというか。

――2019年8月には放送15周年イベントが開催され、盛況のうちに幕を閉じるなど、『ネクサス』にはファンも熱い思いを抱いています。そんなファンの声で、佐藤さんの力になっているのは?

佐藤 数年前に、「凪の言葉のおかげで、僕はここまで来れました」という学生さんに出会いました。「諦めるな!」以外にも、「自分の命は自分だけのものじゃない!」とか、「自分の命は自分で守らなきゃいけない!」とか、強いものが多かったですからね。でも、当時の私はただただ演じるのに必死で、そんな影響を与えているなんて思っていませんでした。そういう出会いがあってこそ、あの言葉は必要だったんだな、言って良かったなって感じられるし、今の自分への力にもなりますね。

――その学生の方とは、どこで出会ったんですか?

佐藤 私は自分でジュエリーのブランドをやっているんですけど、それを渋谷のデパートで売っている時に来てくれました。「凪副隊長に会いに来ました!」って(笑)。それ以外にも、凪の言葉に助けられた、奮い立たされたという手紙もいまだにいただきますし、「ネクサス」に携われたことは私の人生の誇りですね。

――一生モノの作品ということですよね。

佐藤 あ! 今思い出したんですけど、撮影中に撮影所近くの病院を訪れたことがありました。そこには、うちのいとこの子どもが白血病で入院していたんですけど、何かできないかとみんなに声をかけたら、撮影がお休みの日にみんなで集まって、闘病中の子どもたちを励ましてくれることになったんです。しかも、みんな役の衣装で集まってくれて、『ネクサス』まで登場してくれました。子どもたちは大興奮だったし、本当にうれしかったと思います。そこまでやってくれるんだなって、感動しました。そのいとこの子どもは、今はもう元気になっているんですけど、ありがたかったですね。

――すごくいい話ですね。

佐藤 『ネクサス』の大きなテーマは"絆"ですけど、当時のキャストやスタッフには本当に"絆"があったんです。

――15周年に続いて、20周年も楽しみにしています!

佐藤 今も、みんなの"絆"は続いていますから! 20周年、またみんなで集まって、この時代を少しでもスッキリさせられるようなイベントがしたいですよね!

(©円谷プロ)

●佐藤康恵(さとう・やすえ)
1978年12月7日生まれ 埼玉県出身 身長168cm 特技=クラシックバレエ、日本舞踊 趣味=アクセサリー作り、料理
○14歳でモデルデビューし、現在は子育てと芸能活動を両立中

取材・文/大久保和則 撮影/山上徳幸