久保建英について語った宮澤ミシェル
久保建英について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第216回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、久保建英について。今シーズンから再びマジョルカにレンタルになった久保建英。開幕からハツラツとしたプレーを見せる今季の久保に宮澤ミシェルは期待しているという。

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久保建英から『今年が勝負のシーズンだ』という気迫が漲っているよ。

FC東京からレアル・マドリードに移籍して3シーズン目の今季は、ふたたびマジョルカへのレンタル移籍になったけど、ハツラツとしたプレーを見せている。

ベティスとの開幕戦は途中出場だったけど、第2節のアラベス戦からはスタメンに名を連ねた。チームの2勝1分けの好スタートに貢献しているよ。

久保のスタートの位置は右サイドMFだけど、ポジションにとらわれることなく、中央にも入っていってゲームを組み立てる。チャンスメイクもするし、シュートも貪欲に打っている。持ち味の視野の広さや判断力の早さを存分に発揮しているね。

ゴールになってもいいような惜しいシュートもあったんだけど、それを決め切れないところが彼の課題ではあるよな。だけど、シーズンが進むにつれて、解消されていくんじゃないかと思っているよ。だって、今年は久保のところにパスがちゃんと集まってくるからね。ここが昨季とは大きく違うところだよ。

昨シーズン所属したビジャレアルでもヘタフェでも、久保がフリーになっていてもパスが出てこないことが頻繁にあった。久保にしたらストレスの溜まる状況が多かったと思うよ。ただ、久保がすごいのは、そのなかで自分らしさを発揮しようとしていたこと。普通ならパスが出てこないんじゃ集中力を切らしても不思議はないのにな。

今季のマジョルカには、2シーズン前に久保が所属したときのメンバーもたくさんいて、チームメートが久保の実力はどれくらいかを知っている。だから、シンプルに久保のところにパスが出てくるし、チームメイトから信頼されていることが伝わってくるね。

東京五輪に出場していたことでチームへの合流も遅れて、開幕前にチームと合わせる時間も少なかったけど、その不安は感じられないね。試合を経るごとに連携面はこれからもっと高まっていく気がしているよ。

伝え聞くところによると、今季のレンタル移籍先の候補にはレアル・ソシエダもあったらしいね。ソシエダは昨季のラ・リーガで5位。今季もUEFAヨーロッパリーグにも出場する。久保の保有元のレアル・マドリードにしたら、久保にはソシエダでヨーロッパの舞台でも経験をしてもらいたかったようだね。

でも、久保はきっと「もう経験を積む時期じゃない」と、覚悟を決めてマジョルカにレンタル移籍したんだろうな。いま必要なのはラ・リーガでレギュラーとしてコンスタントに試合に出場して、「これだけやれるんだ!」というのを証明することだよな。

今季1部に昇格してきたマジョルカは、ソシエダに比べたら攻撃のバリエーションも少ない。でも、だからこそ久保には「自分がなんとかしてやる!」っていう思いがあるだろうし、それができたら久保の実力が際立つことになるよな。

ただ、久保のすごいところは、なんでもかんでも「俺が! 俺が」って感じさせないところだろうな。若い選手、特にラ・リーガの下位チームに所属する選手たちは、自分で決めて目立ってやろうとしすぎて、結果的にチームの勝利が後回しになることも少なくない。

でも、久保はそういうのがないんだよな。チャンスとあらばシュートは打つんだけど、味方を使った方が得点の確率が高まるときにはちゃんとパスを出す。チームを勝たせたうえで、自分の成績もしっかり残そうというスタンスが見える。もとからそういうタイプではあるんだけど、今シーズンはさらに大人のプレーをしている気がするんだよな。

久保が牽引するマジョルカがどんな成績をおさめるのか。シーズンはまだ始まったばかり。チームは好調なスタートを切ったけれど、勝てない時期も必ず来る。そうしたときに真価を発揮できるように久保には成長を遂げていってもらいたいね。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太