クーマン監督の解任について語った宮澤ミシェル
クーマン監督の解任について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第224回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、クーマン監督の解任について。今シーズンCLとリーグ戦ともに、苦戦が続いているバルセロナは、クーマン監督を解任。そんなクーマン監督に対して宮澤ミシェルは、この成績では仕方ないとしながらも、「評価してあげたい点もある」と語った。

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バルセロナがついにロナルド・クーマン監督を解任した。

10月24日にあったラ・リーガ第10節でレアル・マドリードとのクラシコに1−2で敗れ、第11節では格下のラージョ・バジェカーノにも負けた。これでバルセロナも我慢の限界に達したんだろうな。

今季のバルサは開幕前に大黒柱のリオネル・メッシがパリ・サンジェルマンに去って、攻撃力が大幅に弱まったことで不甲斐ない試合が続いていたから、仕方ないといえば仕方ないよな。

リーグ戦は開幕から格下相手に白星を取りこぼしたりして9位前後を低空飛行。チャンピオンズリーグでもグループステージ初戦でバイエルン(ドイツ)に0−3と圧倒され、続くベンフィカ(ポルトガル)にも0−3で敗戦。ディナモ・キエフ(ウクライナ)には勝って1勝2敗にしたけれど、全6試合の半分を終えた状況ではグループステージ突破に黄色信号が灯った状態にある。

メッシのいた昨季までにも序盤戦に出遅れることはあったんだよ。でも、メッシがバカンスモードから本調子に切り替わると勝ち星を重ね、終わってみれば優勝争いをした。だけど、今季はその頼みのメッシがいない。いまのままだと来季のCL出場権どころか、EL出場権の獲得だって危ないと思わせるほどだからね。切り替えるタイミングではあったと思うよ。

まあ、クーマンにしたら若手への世代交代を期待されて監督に就任し、ミッションを実行したなかでの解任だから、当然だけど悔しさはあるだろうな。

以前までのバルサは、メッシと昨季開幕直後にアトレティコ・マドリードに移籍したルイス・スアレスのふたりで、1シーズンで50得点以上を決めていた。昨季だってメッシは公式戦で38得点! その選手が抜けたら、そりゃあ今季は得点の匂いのしないチームになっちゃっうのも当然だよな。

メッシがいなくてもゴールを奪えるようにチーム戦術を構築するのが監督の仕事ではあるけれど、メッシの穴はあまりにも大きすぎたよ。監督の力量でどうにかなるレベルじゃないし、だからこそメッシが世界最高峰と讃えられるわけだしさ。

成績が伴わないからクーマンの悪い面ばかりに目が行きがちなんだけど、彼のやってきたことの全部が全部ダメなわけじゃないよな。若い選手を大胆に登用した点は評価してあげたいね。

昨季は18歳のペドリを重用して一本立ちさせた。そのペドリが故障で戦列を離れている今季は、そのポジションに17歳のMFガビを使っている。いくら能力がある選手といっても、まだ17歳だからね。起用するには勇気が要ると思うんだよな。そして、その機会にガビはしっかり存在感を示してスペイン代表にも招集されているんだよ。

今季からメッシのつけていた背番号10を受け継いだアンス・ファティだって、クーマンのもとで開花した選手だよな。トップチームに正式に昇格した昨季序盤戦の活躍は、スアレス退団で揺れたチームに光を当てた。ヒザの故障で昨季中盤戦以降は戦線離脱したけど、今季から復帰した。まだ19歳。これからが楽しみな選手だよ。

ペドリやガビ、ファティは、まだここから成長を遂げていかなきゃいけないけれど、彼らの才能が現時点でトップレベルで通用すると証明できたのは、クーマンが起用したから。どんなに才能があると評価される選手でも、試合で使ってもらわないことには始まらないからね。

メッシが抜けて、どん底に状態にあるバルサだけど、若い選手が希望の光ではある。彼らを生かして、どんなサッカーをすれば、ここから浮上できるのか。それが新監督のミッションになると思うよ。

その新監督にはシャビの就任が決まったと報道されている。シャビといえば、メッシやイニエスタとともにペップ・グアルディオラのもとで4年間で14個のタイトルを獲得した黄金時代の中心選手。監督としての力量は未知数ではあるけれど、我々がバルサと聞いて思い浮かべるスタイルを、ふたたび見せてくれるんじゃないかという期待値はある。

すぐに結果は出なくても、ここから新時代のバルサの黄金期が始まるんだと思って、しっかり見守っていきましょう!

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太