鎌田大地について語った宮澤ミシェル
鎌田大地について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第255回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、鎌田大地について。W杯へ向けた強化試合を戦っている日本代表。そんな日本代表の中でも鎌田大地のプレーに宮澤ミシェルは注目しているという。

(※本記事の取材は、6月6日の日本×ブラジル戦以前に行われたものです)

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やっぱり鎌田大地はW杯で見たい選手だよなぁ。パラグアイ戦を見てそう思ったね。

今シーズンは長谷部誠とともにフランクフルトのEL制覇の原動力になってさ。準々決勝のバルセロナ戦では決勝点をお膳立てしたし、準決勝のウェストハム戦では決勝点を決めて。ただ単に在籍しているチームが優勝しちゃったわけじゃないからスゴイよな。

日本選手がELで優勝したのはフェイエノールト時代の小野伸二以来のこと。伸二もチームの主力だったよな。ちなみに酒井宏樹もマルセイユ時代にEL決勝まで勝ち進んでいるんだよ。ただ、マルセイユは決勝戦でアトレティコ・マドリードに負けたし、酒井宏樹も故障明けでコンディション的な問題があって決勝戦出場できなかったんだけどさ。

その鎌田だけど、今シーズンの序盤はコンディションが上がっていなかったから苦労したんだよ。原因はわからないけど、当初はステップアップになる移籍を考えていたのかもしれないよな。でも、それがうまく運ばなくてフランクフルトに残ることになってさ。

そういうのって心身ともに切り替えるのは難しいんだよ。そのタイミングでW杯アジア最終予選がスタートして、いきなりオマーン戦に負け。日本代表の歯車がうまく回らないなかで鎌田も苦しんだ。去年10月のオーストラリア戦は、フォーメーションを4−3−3に変更した日本代表が躍動したことで、鎌田の居場所がなくなっちゃったんだよな。

昨年11月のW杯アジア最終予選は招集されたけど2試合とも出番はなくて、年が明けてからは日本代表に招集されなくなっていた。ヨーロッパでプレーする日本代表選手は多いけど、鎌田よりもレベルの高いチームでプレーしているのは、リヴァプールの南野拓実くらいだからね。それほどの選手なのに日本代表で見られないってのは寂しいなと思っていたんだ。

パラグアイ戦の鎌田は、4−2−3−1のトップ下をやったり、4−3−3のインサイドハーフでプレーしたりしたけど、攻撃では「さすが!」と思わせるプレーを見せてくれたね。ゴール前での浮き玉で逆サイドに出したパスなんて最高だったよ。前田大然がシュートを決めきれなかったけど、あれは本当はその外側にいた三笘薫を狙ったパスだったんじゃないかな。相手DFが詰めてきている状況で味方の位置を把握する視野の広さと瞬時にあのパスを出せるアイデア。あれは日本代表では鎌田にしかない武器だよな。

それに、あの独特の絶妙な間が魅力的なんだよ。飄々とプレーしているように見えちゃう技術力があるのもいいよ。全力疾走している印象はない選手だけど、サッカーは全力疾走が必要不可欠なスポーツではないからね。要所要所でしっかりした判断ができればいいだけでさ。鎌田はそういうプレーができちゃうってことなんだよな。

あれほどのレベルの選手になると、インサイドハーフとしてプレーできるんだけど、それがほかの日本選手よりも上回るものが提示できるのか。攻撃はパラグアイ戦で見ることもできたけど、本当に見たかったのは、守備のところだよな。

パラグアイ代表は観光気分だったんだろうな(笑)。W杯グループリーグでの対戦国を想定した守備力を日本代表が試すようなシーンはほとんどなかったもの。鎌田がインサイドハーフで日本代表に居場所をつくれるかは、持ち越しになっちゃった気がするね。

やっぱり強度の高い守備が求められたり、守備に追われる時間が長くなったりしたなかで、どれだけ鎌田を使う意義をアピールできるかだよな。W杯グループリーグで対戦するドイツやスペインは、そういう相手だからね。キリンカップの残り2試合でそこが試されるような展開になると面白いし、そうなることを期待しているよ。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太