ラ・リーガについて語った宮澤ミシェル
ラ・リーガについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第256回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、ラ・リーガについて。チャンピオンズリーグでは、レアル・マドリードが見事に優勝を果たしたものの、リーグとしてはどこか停滞している感のあるラ・リーガ。その理由はいったいなんなのか? 宮澤ミシェルが解説する。

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ラ・リーガにとって来シーズンは大きな分岐点になる気がするね。

レアル・マドリードが2021−2022のチャンピオンズリーグに優勝して意地を見せたけど、試合内容を見るとやっぱりイングランド勢が圧倒していたよ。まあ、それでも勝つのがレアル・マドリードらしさではあるんだけど、世界で一番スペクタクルなサッカーが見られるリーグは、スペインからイングランドに移りつつあるのは事実だよな。

ラ・リーガが停滞している感じがする理由は、やっぱりバルセロナだよな。数年前からリオネル・メッシ(現パリサンジェルマン)が衰えてきたことでCLの舞台ではなかなか結果が出せなくて、ついには開幕直前に退団になっちゃってさ。しかも、メッシを輝かせるために獲得したけどチームにいまいちフィットできなかった選手たちに使った負債が残っちゃってさ。その額が桁違いだもの。

過渡期ではあったけど、みんながバルセロナに幻影にとらわれたツケだよな。流れるようなパスワークと流動的なポゼッションで相手を翻弄するサッカーは確かに見ていて楽しかった。でも、それはメッシがまだ若かった頃のバルサであって、イニエスタなり、シャビなりがチームを去ってからは、メッシ頼みのサッカーだったんだよな。

それをロベルト・クーマン前監督が変革をしようとしたけど、シーズン前半で大きくつまずいて監督の座を追われて、代わりにクラブ・レジェンドのシャビが監督に就任した。バルサ黄金時代のメンバーだったシャビが監督になったことで、あの輝かしいバルサが復活するのを期待した人は多かったと思うけど、サッカーはそんなに簡単じゃないよな。

シャビ監督のもとでリーグ戦は2位になったけど、苦しさが目立ったね。ペドリが故障がちのなか、17歳のガビを起用して成長させたり、ウスマン・デンベレを復調させたりしたけど、やっぱり黄金期のようなサッカーは取り戻せなかった。ここ一番で働いたのはスピードのある選手だったり、高さのある選手だったりでさ。逆の見方をすれば、いまのバルサはそこに特長がある選手を使わないことには勝てないクオリティーのチームだってことだよな。

ただ、シャビ監督がシーズン頭から指揮する来季に向けて、今季と同じメンバーということはないからね。どういう補強をするかは気になるけど、ガビやデンベレが契約延長オファーをなかなか飲まないのは気がかりだよな。必要な選手が出ていく素振りを見せているのに、不要な選手は残ろうとする歪な状況なんだよな。

契約延長オファーを有望選手が結ぼうとしないのは、単にお金の問題もあるだろうけど、やっぱりサッカーが魅力的ではないってのもあるんじゃないか? レアル・マドリードもエムバペに契約目前でフラれたけど、ひと昔前のレアルやバルサでは考えられないことだもんな。

アラブのオイルマネーが桁違いのパワーを発揮しているのは間違いない。選手の評価は金額に表れるからね。でも、サッカー選手にとっては、プロキャリアの中で、どのチームでプレーして、どんなタイトルを獲ったかも大切な要素なんだよ。特にヨーロッパの場合、それがステータスでもあるからね。

レアルとバルサの威光に陰りがあるのかもしれないし、クラブに求めるものが時代とともにお金だけに変わってしまったのかもしれないし。ただ、出ていく人もいれば、新たに加わる人もいるのがチームだからさ。

バイエルンのロベルト・レバンドフスキ獲得の噂もあるけど、バルサにはサラリーキャップの問題もあるから、どうなるかはわからないよな。それにいまバルサに必要なのは、不要な選手をしっかり売却すること。まずはそこからだよな。

それにしてもバルサはやっぱり難しいクラブだよ。目先の結果を求められながら、内容まで問われてしまうんだから。レアルはそこまでサッカーのクオリティーは問われないからね。ただ、レアルだって今後はこれまで通りってわけにはいかないんじゃないか? 

バルサにしろ、レアルにしろ、昨シーズンまでのようなサッカーが新シーズンも続くようだと、世界屈指の選手たちに「あのユニフォームを着たい」と思わせたブランド力が落ちていくばかりだよ。それはラ・リーガの中継に長く携わる者として寂しいからね。

世界中の選手とサッカーファンが固唾を飲んで見守り手に汗握る、そんなサッカーを2022−2023シーズンのレアル・マドリードとバルセロナには見せてもらいたいね。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太