本間至恩について語った宮澤ミシェル
本間至恩について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第262回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、本間至恩(ほんま・しおん)について。今夏、アルビレックス新潟からベルギーのクラブ・ブルージュに移籍した本間に宮澤ミシェルは大きな期待を寄せているという。

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ヨーロッパの2022−2023シーズンの開幕を控えて日本選手の移籍も活発になってきたね。

南野拓実がイングランドのリヴァプールからフランスのモナコへ移籍したでしょ。吉田麻也がイタリアのサンプドリアからドイツのシャルケへ移って、そのシャルケで昨季は1部復帰に貢献した板倉滉は古豪ボルシアMGに移籍した。堂安律も今季からフライブルクのユニフォームに袖を通すから、ブンデスリーガでは日本代表同士の対決が数多く見られるから楽しみだよな。

スペインでも久保建英がレアル・マドリードからレアル・ソシエダへ移籍し、橋本拳人がヴィッセル神戸からスペイン2部のウエスカに新天地を求めた。守田英正もポルトガルの名門スポルティングでさらなる飛躍を期すことになったよね。

こうした日本代表クラスの選手たちの移籍は、11月に開幕するワールドカップ・カタールを睨んでる部分が大きいと思うよ。

上田綺世の移籍なんて典型例じゃないか? 今シーズンはJリーグで得点ランキングのトップを走っていて、6月にベルギーのサークル・ブルッへに移籍した。キャリアのステップアップという気持ちはもちろんあっただろうけど、それ以上にW杯日本代表メンバー入りのために海外リーグでいいアピールをしたい狙いがあったはずだよ。それだけ懸ける気持ちを強く持っているんだから活躍を楽しみにしたいよな。

こうした選手たち以外にも今夏に海を渡った選手がいるんだけれど、ベルギーのクラブ・ブルージュに移籍した本間至恩には大ブレイクを期待しているんだよ。

本間はアルビレックス新潟にアカデミー時代から含めて9年半いて、背番号10を託されてきた新潟の星。私は新潟で仕事をしている関係で、彼のことは若い頃から見てきたんだよね。まあ、いまだって彼はまだ21歳と若いんだけども(笑)。

チョコマカチョコマカしたドリブルがすごくてさ。私が現役だったら対峙したくないし、ファウルしちゃうだろうって思うくらいチョコマカしている(笑)。それが一番輝いたのは2020年シーズンだったけど、そこからずっと移籍の噂はあったんだよね。

でも、これまで移籍はしなかった。本間としたらアルビレックスサポーターと一緒にJ1へという気持ちがあったんだと思うんだ。移籍せずにチームに残ってくれて、チームの主力として一生懸命にやってきた。本当、よく頑張っていたよ。

彼の能力や先々のサッカーキャリアを考えたら、もっと高いレベルで勝負したい気持ちはよくわかる。だから、アルビレックスサポーターとしたら、J1昇格に向けて頑張ってるシーズン途中に本間が抜けるのは痛いけれど、彼の決断をしっかり応援する気持ちになっているんじゃないかな。

そうした気持ちになるのは、移籍先がほかのJ1クラブではなく、海外クラブってのも大きいだろうね。

たとえば昨季まで新潟の指揮官をつとめたアルベルト・プッチ・オルトネダ監督が率いるFC東京あたりなら、本間の持ち味を理解しているし、本間も監督の思考がわかるから、上手くいくんだろうなって感じでしょ。でも、それだと挑戦という選手の思いを応援するよりも、サポーターにしたら引き抜かれたっていう感情が上回っちゃう。そうなると気持ちよく繰り出せなかったりもする。それがサポーター心理だと思うんだよね。

今回、本間が移籍するブルージュはベルギーリーグの強豪で、チャンピオンズリーグへの出場権も持っている。本間は移籍後はセカンドチームでプレーするようだけど、初めての海外移籍で不慣れだから、スタートはそこで問題ない。焦らずに環境に慣れていけばいいと思うよ。

プレー面は通用すると思うから心配してないんだけど、大柄な外国人選手と日常的に対戦することでの疲労度の蓄積具合をしっかり体で覚えてもらいたいね。本間は164cmと小兵だから、体のぶつけ合いが重なってくると疲れから故障する可能性はあるからさ。あの才能が怪我で台無しになるのは見たくないからね。

本間がトップチームに上がったらと想像すると楽しくて仕方ないんだよ。大男たちの間を小刻みなボール扱いとすばしっこさですり抜けていく本間に、ベルギーの人たちは度肝を抜かれるんじゃないか、ってね。

日本代表クラス以外にも、本間のような海外で日々精進する選手たちがいて、ひとりでも多く脚光を浴びる活躍を見せてもらいたいよ。新シーズンはそれも楽しみにしていきましょうよ。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太