アルビレックス新潟について語った宮澤ミシェル
アルビレックス新潟について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第264回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、アルビレックス新潟について。30節ほどを消化し、昇格争いも激しさを増しているJ2リーグ。その中でも宮澤ミシェルが注目しているのがアルビレックス新潟だという。

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J1リーグは残すところ10節ほどになって、残留争いが混沌としてきたね。18クラブで争っている今季は、下位2クラブが自動的に降格。16位のクラブはJ1参入プレーオフを制したJ2クラブと対戦し、そこで勝てば残留できる。でも、16位でも居心地は悪いから、どのクラブも安全圏に浮上しようと必死だよ。

一方のJ2リーグはどうかというと、全42節のうち12試合ほどを残している。上位2クラブが自動昇格で、3位から6位のクラブでJ1参入プレーオフを戦って、そこで優勝するとJ1の16位クラブと来季のJ1の座をかけた天王山に臨めるんだけど、上位陣はだいぶ絞られてきたよ。

首位は昨季までJ1だった横浜FC。それを勝ち点1差でアルビレックス新潟が追い、新潟との勝ち点1差でベガルタ仙台が食らいついてる。4位のファジアーノ岡山は横浜FCから勝ち点差9まで離されてるんだけど、残り試合数からJ2優勝という点を考えると、ここがボーダーラインだろうね。

その岡山からJ1参入プレーオフ最後の1枠の6位までの勝ち点差は1しかないし、さらに、その下の11位あたりまでのチームも勝ち点差は小さい。だから、残り試合の勝敗次第ではどこが参入プレーオフに食い込んでもおかしくない状況。ここからの戦いは、J2の見どころでもあるよな。

このなかで私が注目しているのが、アルビレックス新潟。もう長いこと新潟ローカルの番組でサッカー解説の仕事をしているんだけど、そろそろJ1へ戻ってもらわないと、新潟のサッカー熱が高まってこないからね。

今季の新潟は新たに松橋力蔵監督のもとで戦っているんだけど、昨季まで2年間チームを率いたアルベル・プッチ・オルトネダ監督(現・FC東京)のもとでコーチを1年つとめたことが上手くチームを引き継げている要因な気がするね。アルベル監督が蒔いた種は、昨季も開花しつつあったけど、松橋監督のもとでしっかり根付いたよ。

だからこそ、新潟の希望の象徴だった本間至恩をシーズン途中の海外移籍もできたんだと思うよ。本間は移籍するまでJ2で22試合に出場したけど、途中出場が6試合あって、左サイドアタッカーのポジションはほかの選手も出場機会があったからダメージは小さいんだよ。

そのポジションをつとめているのが今季から完全移籍で加入した伊藤涼太郎。浦和レッズでは出番に恵まれなくてプロ入り後は長く水戸ホーリーホックでプレーしていた選手だけど、トップ下でもプレーできるだけあってチャンスメーカーになれる。それに今季は6得点をあげているけど得点力もあるのがいいよ。彼の獲得がいい補強になったよな。

トップ下は今季も高木善朗。お父さんは元プロ野球選手の高木豊さんで、お兄ちゃんが高木俊幸(ジェフユナイテッド千葉)で、プロ入りした頃から注目されたけど、もう29歳なんだよな。ただ、プレーのほうは年々、研ぎ澄まされている印象があるよ。昨季は10得点14アシストと抜群の結果を出したけど、今季も6得点。ここからの試合では欠かせない存在になっているよ。

1トップは谷口海斗が開幕前に残留したのが大きかったよ。昨季13得点をマークした得点力は今季も健在で、25試合で7得点をあげて新潟の上位進出の原動力になっていたからね。ただ、不安なのは移籍しちゃわないかってことだよな。本人はSNSで残留を発表していたけど、何が起きるかわからないのが移籍だからね。8月12日(金)に移籍ウィンドーが閉まったときに谷口が残っていて、一緒にJ1を目指して戦ってくれたら心強さは何倍にもなるよな。

その谷口と1トップで併用されているのが鈴木考司。もう33歳だよ。町田ゼルビア時代はJFLを経験したり、アキレス腱断裂を繰り返したりと苦労人でさ。30歳のときにC大阪でキャリア初のJ1でプレーして川崎フロンターレ戦で初得点を決めたんだよ。で、2021年から新潟でプレーしているんだけど、シュートに持ち込む技術や執念には唸らされるものがあるんだ。今季もすでに9得点だからね。暑い夏場を乗り切ってもらって、来季はもう1度J1でプレーさせてあげたい選手なんだよ。

守備陣も頑張っているんだよ。総失点数の少なさでは徳島ヴォルティスには及ばないけれど、手堅い守りをしている。だからこそ、総得点と総失点の差がJ2で圧倒的に多くなっているんだよな。リーグ戦が大詰めになったところでは、得失点差が多いことも大事になってくるからね。新潟はこの部分ではライバルよりアドバンテージがあると思うよ。

ただ、まだ10試合以上も残っているから、不安で仕方ないよ。主力選手にケガ人が立て続けに出たらチーム状況は苦しくなるし、連敗するとそこからの立て直しはやっぱり難しくなる。それだけにこの夏場は体力的にシンドイだろうけど、頑張ってもらいたい。そして秋口には、2017年以来6年ぶりとなるJ1復帰をよろこぶ彼らと新潟県民の姿を見られると期待しているよ。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太