サンフレッチェ広島について語った宮澤ミシェル
サンフレッチェ広島について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第268回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、サンフレッチェ広島について。クライマックスも近づいてきたJ1リーグで、ついに首位に浮上した広島。好調の理由はなんなのか? ここまでのJ1リーグで気になったチームの印象とともに宮澤ミシェルが語る。

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サンフレッチェ広島が、ついにJ1リーグの首位に躍り出たよ。まあ、消化試合数で2位の横浜F.マリノスよりも3試合、3位の川崎フロンターレよりも2試合多い状況だから、あくまで暫定なんだけど、それでも首位っていうのは立派だよな。

今シーズンの広島は、ホームで安定した強さを発揮している。エディオンスタジアム広島では、ここまで15試合やって9勝3分け3敗。ここまでホームタウン制度のメリットを発揮できているクラブは多くはないよな。

要因のひとつに、守備陣が安定していることがあげられるだろうね。そのうえで前線の選手たちが、ミヒャエル・スキッペ監督のサッカーをノビノビとやっているように見えるよ。だから、相手はエディオンスタジアムだと受け身になってしまって、広島にいいようにやられているんじゃないかな。

個々の選手に目を向けると、好調なチームだけあって全員が目を引くプレーをしているんだけど、そのなかでも、3バックの中心の荒木隼人がいいんだよ。ガンバ大阪のジュニアユースから広島ユースと進んで、関西大を経てプロ入りした今季4年目の26歳なんだけど、個人的には9月の日本代表の海外遠征に選んでもらいたい選手のひとりだよ。

186cmあって、1対1にも空中戦にも強くて、相手の攻撃を読む目も備わっている。日本代表として7月のEAFF E−1選手権には中国戦に出場したけど、もっと海外勢との戦いでどこまでやれるか見たいと思わせるものがあるよ。

スケジュールや連携などの現実的な問題もあるから、荒木が9月の日本代表に選ばれる可能性は高くないけれど、その先の日本代表を支える存在になっても不思議はないよな。そのためにも、今シーズンのJ1リーグでACLの出場権を獲得して、来季は世界の舞台に打って出るチャンスを手にしてもらいたいよ。

そのACL出場権は、鹿島アントラーズや柏レイソルにもまだチャンスはあるよな。鹿島は8月に監督交代の大英断に踏み切ったから、岩政大樹監督のもとでなんとしてもACL出場権は手にしたいだろうな。

柏は、前半戦から飛ばしに飛ばしてきた疲れが6月に出て、3連敗したのが痛かったよな。7月に入って持ち直した感があったけど、8月は1勝1分け2敗。残留争いをしている清水エスパルスやジュビロ磐田から、勝ち点3を奪えなかったのが、この先で響いてこなきゃいいけどな。

残留争いも混沌としているね。ヴィッセル神戸は一時期のどん底状態は抜け出しているし、残り試合数は、ACLとの兼ね合いでほかよりも多いとはいえ、順位的にまだまだ危険水域だからね。このまま来季はJ2となってしまうと、イニエスタがどうなるかの問題が出てきちゃう。彼のプレーをもうちょっとJ1で見たいから、ここから頑張ってほしいとは思うよ。

ガンバ大阪とアビスパ福岡が、ちょっと息切れしてきたよな。両チームはここが踏ん張りどころだよな。ここから勝ち点3を1試合でも2試合でも手にできると、だいぶ楽になるんだけど、それができていれば、この順位にはいないわけだしさ。

湘南ベルマーレはここにきて、試合内容と結果が見合ってきたよな。シーズン前半戦は内容で相手を上回りながら負けたけど、ここに来て鹿島と引き分けて、川崎に勝利。あのサッカーを見ると、この順位にいるのが不思議なくらいだからね。ここから順位をさらに上げていくんじゃないか。

最下位に沈んでいるジュビロ磐田はきびしい状況だよな。8月半ばに監督交代に踏み切ったけど、チームが劇的に変わる気配はしないよな。監督は変わったものの、やっているサッカーに大きな変化はないし、大きく変えられるだけの陣容でもないのがシンドい。あれなら監督を変えずにやっていた方が、いいんじゃないかって思っちゃうよ。

巻き返すには劇薬を使ったほうがよかったんじゃないか? クラブレジェンドの中山(雅史)が今季からコーチ陣にいるのだから、彼に任せてもよかったんじゃないかと思うよ。降格争いのチームを任せて、そのままJ2に落としてしまうと、中山の看板に傷がつくのを恐れたのかもしれないけれど、サポーターはそんなふうに思ったりしないからね。

中山の監督としての手腕は未知数なだけに、どん底の状態でチームを任せてしまう手もあったと思うよ。それにさ、J2に落ちてしまったら、来季から中山のもとでJ1で勝てるチームづくりをしたらよかったんだよ。J2から昇格するだけじゃ、やっぱり磐田はダメだよな。あの強かった時代を知る誰もが納得する強さを、J1で見せてもらいたいからね。

なにはともあれ、J1リーグも残り7試合ほどになってきて、上位と下位はシビアな状況にある。ただ、それ以外のクラブだって安泰とは言えないからね。個人レベルで見たら、監督にしろ、選手にしろ、来季につながるプレーを見せなければいけないわけだから。クライマックスに向かって突き進むJリーグを、しっかりチェックしてくださいね!

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太