ダブル・シンジをフカボリ!
ダブル・シンジをフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第38回目のテーマは、香川真司と岡崎慎司。ともにベルギーリーグのシント=トロイデンでプレーする"ダブル・シンジ"に福西崇史も注目しているという。

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香川真司と岡崎慎司が一緒のユニフォームでプレーする姿をまた見られるとは、正直言って想像だにしていなかったですね。

2018年ワールドカップ・ロシア大会まで長きに渡って日本代表の"顔"だった両選手が、今シーズンはベルギーリーグのシント=トロイデンでプレーしています。

ふたりが同じユニフォームに袖を通すのは、その2018年以来のこと。ここに至る道程は、ふたりとも紆余曲折がありましたよね。

両選手とも2018年W杯後にさらなるステップアップとして、スペイン1部リーグでのプレーを希望しましたが、なかなか思うようには進まなかった。

香川はドルトムントで構想外になって、2019年1月からトルコのベジクタシュでプレーし、2019−2021シーズンは念願かなってサラゴサと契約しましたが、結局はスペイン2部リーグから昇格できずに、ラ・リーガでのプレーは叶いませんでした。昨季はギリシャのPAOKに所属しましたが、出場はわずか5試合に終わり、今年1月からシント=トロイデンに移籍しました。

岡崎もプレミアリーグのレスターを2018−2019シーズンで退団すると、2019−2020年からスペイン2部のウエスカに移籍しました。2シーズン目の2020−2021は念願だったラ・リーガで25試合に出場しましたが、チームが降格となった昨季は同じく2部のカルタヘナに移籍。ただ、1部昇格には導けず、シーズン終了後は構想外で契約満了となっていました。

今シーズンの香川は33歳で、岡崎は36歳。ふたりがどれほど輝かしい実績を持っていても、海外クラブで居場所を探すことは容易ではない年齢です。それでも海外でのプレーにこだわって新天地を探した末に行き着いたのが、シント=トロイデン。若い日本選手たちの海外挑戦の登竜門になっているクラブですからね。ふたりの活躍が若い日本選手たちに大きな刺激を与えてくれることも期待したくなりますよね。

シント=トロイデンを経営するのは日本企業のDMMで、海外挑戦する日本選手たちの登竜門として、過去には冨安健洋や鎌田大地も過去に所属し、ここでの活躍からヨーロッパの舞台でステップアップをしていきました。

そのクラブには現在もFW林大地、GKシュミット・ダニエル、DF橋岡大樹が所属していますし、ベルギーリーグ全体でもFW上田綺世(ブルージュ)、DF町田浩樹(ユニオン・サン・ジロワーズ)、DF渡辺剛とMF田中聡(ともにコルトレイク)、坂元達裕(オーステンデ)、三好康児(アントワープ)、森岡亮太(シャルルロワ)といった選手たちがプレーしています。

森岡をのぞけば、ほとんどがまだ20代半ば以下の選手たちで、ここから海外で経験を積みながらステップアップを狙っている選手たちです。同じリーグでプレーする岡崎と香川がバリバリやっている姿を見せつけてくれたら、若手選手たちにとって「もっと頑張ろう!」という刺激になるのではと思います。

もちろん、岡崎にしろ香川にしろ、彼ら自身はそんなことは考えていないでしょうね。彼らはただ、まだまだ海外でサッカーがやりたいし、通用することを証明したいというだけだと思います。

いずれにしろ今シーズンの彼らふたりには注目したいのですが、とりわけ岡崎がどんなパフォーマンスを見せてくれるかは興味深いですね。昨シーズン後半戦はケガがあったり、ベンチ要因になったりで満足にプレーできなかったなか、36歳になった岡崎が、どんなプレーを見せるのか。

野球やアメリカンフットボールなどは1〜2シーズン、満足にプレーできなかったとしても、競技特性を考えれば第一線でバリバリやれることが多いです。でも、サッカーの場合だとそれは難しく、さらに年齢という要素を加味すれば、岡崎の選んだ道はとても困難なものです。ただ、そうした困難を乗り越えてきたのが岡崎でもあるわけなので、彼のプレーやパフォーマンスというものに注目したくなるんですね。

シント=トロイデン加入後は3試合連続でスタメン出場をしていますが、現状のプレーが現時点での岡崎のベストな状態なのか、それともここからもっと高まっていくのかは気になるところです。

一般的に考えれば、36歳というのは体力的にもフィジカル的にも全盛期からの衰えを自覚できて、キツイ年齢なんですね。それでも走るだけがサッカーではないので、テクニックがあれば、さほど走らないスタイルに切り替えはできます。でも、岡崎の場合は、下手ではないですが、格別に上手いわけではない。

走って走って体を張って、ガムシャラにゴールを狙う。それが岡崎の最大の持ち味だったわけです。そうした選手が体力的な衰えによって、持ち味が通じない可能性がある。その場合にほかの何で補おうとするのか。それとも、もう一度体にムチ打って高めていくのか、それは可能なのか。そこにとても興味があります。

あと、FWにとっていいパサーがいるかはとても重要ですよね。上田綺世のようにリーグ戦でゴール前にタイミングよく動いてもパスが出てこなければ、FWとしての仕事ができないわけですから。

その点、岡崎には香川というパサーがいます。長年、日本代表で積み上げてきたコンビネーションもありますから、ふたりの攻撃が機能するようになってくれば、いま以上の成績をチームに還元するのではと思いますね。

それに、ふたりのホットラインからゴールがたくさん生まれるようになれば、日本のサッカーファンの目もベルギーリーグへともっと向かうのかなと思います。現状では海外移籍した時点で途絶えがちになってしまう日本のサッカーファンの目が、海外移籍後も継続して向けられるようになれば、選手たちの励みになることは間違いないですよね。

日本選手の海外移籍で偉大な足跡を残してきた"ダブル・シンジ"にも、今シーズンは注目してもらいたいと思います。

構成/津金壱郎 撮影/鈴木大喜