堂安 律が兄・憂と共に運営しているフットボールスクール「NEXT10」と、堂安 律の初書籍『俺しかいない』とのコラボイベント
堂安 律が兄・憂と共に運営しているフットボールスクール「NEXT10」と、堂安 律の初書籍『俺しかいない』とのコラボイベント

アジア杯で活躍中のサッカー日本代表10番・堂安 律が、兄・憂と共に運営している、未来の日本代表10番を育成するフットボールスクール「NEXT10」と、堂安 律の初書籍『俺しかいない』のコラボイベントが、昨年、実現。小学3〜6年生の約200名に向けて、"堂安先生"が行なったスペシャル授業の模様をお届けする。

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憂 初書籍『俺しかいない』で特に堂安 律らしさがギュッと詰まった、濃いエピソードを3つ厳選しました。律自身はこの授業で子供たちにどんなことを学んでほしい?

律 今すぐ理解できなくても、大人になってから、「堂安選手、あんなこと言ってたな」と思ってもらえる機会になったらいいなと思います。

小学生にとっては難しい話もあるかもしれないけど、中学生や高校生になって思い出してもらえたらいいかな。今日は厳しい世界の話もしていくので。

LESSON 1 挫折だらけのサッカー人生〜小4でセレッソ大阪アカデミー不合格〜
LESSON 1 挫折だらけのサッカー人生〜小4でセレッソ大阪アカデミー不合格〜

憂 まずはレッスン1。「人生初の挫折〜小4でセレッソ大阪アカデミー不合格〜」。これがサッカー人生で初めての挫折なの?

律 サッカーを始めてから一番大きな壁だった。特に悔しかったのは俺の知り合いがセレッソに受かったのに、俺だけ落ちたこと。一番わかりやすい敗北でイライラしたし、「なんで俺じゃないねん」って思った。

憂 そのときは落ち込んだ?

律 いや、落ち込んだというよりもムカついた。ここにいるNEXT10のみんなと同い年くらいやったから。みんなも負けたら、イライラするやん? ムカつくやん? 俺はそういう感情は絶対に出したほうがいいと思ってて。

ほかのサッカースクールの教え方は知らないし、「感情を抑えよう」「人に迷惑をかけない」って教えるところもあるかもしれないけど、小学生は迷惑をかけてなんぼやと俺は思ってる。だからコーチがいるわけだし、だから大人がいるわけだし。

負けて悔しかったら泣いてもいい。暴力はアカンけど、イライラしたら、「ムカつく」って声に出していい。とにかく感情を出していいと思う。昔から俺は感情をむき出しにしていたし、今でも感情むき出しでやっているけど(笑)、みんなにも大事にしてほしいかな。

憂 落ち込む時間はもったいないもんな。まあ、落ち込むことも大事かもしれないけど、落ち込みながらも、一生懸命やらなきゃいけない。

律 俺は練習試合でも負けたら泣いて、レフェリーに怒りに行ってたから。みんなもその1試合にかける思いとかは持ってほしいかな。

憂 律はホンマに小学生の頃から審判に怒りに行ったりしてたからな。アカンことかもしれないけど、やっぱりそれくらいの気持ちは大事だと思う。ちょうどみんなも小3、小4、小5、小6でセレクションに受かったり、落ちたりしていると思うけど、律はその当時、どんな思いでサッカーをしていた? 

律 セレッソを見返す。それだけ。小4で落ちたから、ジュニアユースに上がるタイミングでセレッソから声をかけてもらって断る、ということだけを考えてた。「俺を落とした人を絶対に見返してやる」というモチベーションで小学生の頃はずっとサッカーをしていたかな。

憂 実際にセレッソからオファーは来ましたか?

律 はい。速攻で断りました。

憂 話は変わるけど、『俺しかいない』で「常に誰かしら上の存在がいる」というキャリアをこれまで歩んできた、と書いていたよね?

律 それこそ、小学生のときには兄貴の憂がいたし、ガンバに入ったときには宇佐美貴史さんや井手口陽介さんがいたし、常に上に手が届かないと思うような人がいた。俺はそういう先輩たちを目標にしていたし、「絶対に抜いてやる」という気持ちで頑張れた。

憂 サッカーってやっぱりそういう気持ちがないとうまくならないと思うしね。ただ、俺は昔から近くで見てきて、律はサッカーに対してものすごくストイックだと思ってるよ。上の存在がいなくてもプロになれたんじゃないかと思うけど、自分ではどう思う?

律 いや、難しかったと思う。みんなライバルっていると思うけど、めちゃくちゃ大事だから。ライバルがいないと絶対に成長できないし、俺はそういう人たちのおかげで成長できた。

海外へ行ったらすごいヤツばっかりだったし、同い年のエムバペはすごいヤツだけど、今でも負けたくないと思ってる。小学生の頃から何も変わらず、ギラギラした闘争心を持ってやってるよ。

LESSON 2 どんな逆境でも自分を信じ続けられるか〜カタールW杯ドイツ戦の同点弾〜
LESSON 2 どんな逆境でも自分を信じ続けられるか〜カタールW杯ドイツ戦の同点弾〜

憂 レッスン2は「どんな逆境でも自分を信じ続けられるか〜カタールW杯ドイツ戦の同点弾〜」。このゴールを決めたとき、実際どんな感じだった?

律 ホッとした気持ちが強かったかな。ずっと日本代表の試合で点が取れていなくて。W杯にかける思いは強かったし、ゴールを決められてうれしいというよりも、今まで努力してきたことがやっと結果に出た、というホッとした気持ちが強かった。

憂 「スペイン戦のゴールがすごかった」ってみんな言うけど、律はドイツ戦のゴールのほうがうれしかったんやろ? その理由を聞かせてほしい。

律 それまで挫折だったり、苦しい期間が長かったりした分、あのゴールは特別だった。ゴール前で詰めるだけの簡単なゴールやん? でも、俺はそれにすごく意味があると思ってて。

あのタイミングであそこにボールが転がってくるのは、今までちゃんとやってきたヤツだけだと思うし、運と言われがちだけど、俺は運じゃないと思ってるから。

みんなが大人になったときにわかるかもしれない。挫折をいっぱいする中で、継続した努力の先にその感覚がある。今はまだわからないと思うけど、継続して努力すれば、自分で運を引き寄せられる。これはサッカーだけじゃなく、人生においてめちゃくちゃ重要なことだと思う。

憂 サッカーにおいて、運はあると思う。でも、やってきたヤツにしか運は転がってこない、と俺も思う。命をかけてやっていないヤツには運は巡ってこない。そういうことですよね?

律 まさにね。

憂 スペイン戦のゴールも律らしかったけど、あの大舞台で、あのタイミングで、あのシュートを決めるのがすごい。どんな練習をしてきたの?

律 あのシュート、あの角度しか練習してなかったよ。プロになったら1時間も2時間もシュート練習をやれないから、自分の中でコントロールしながら、全体練習が終わってから一日5分のシュート練習を毎日続けてきた。

居残り練習を1時間、1週間限定でやるんじゃなくて、練習の最後に5分間だけのシュート練習を10年続けたほうが絶対に意味があると思う。

みんなサッカーが大好きだと思うから、飽きることはないと思うけど、「今日はちょっとカラダがしんどいな」という日も投げ出さずに継続すること。そういうときにこそ、真価が問われると思う。

LESSON 3 夢をかなえるために〜海外で壁にぶつかってわかった今の大切さ〜
LESSON 3 夢をかなえるために〜海外で壁にぶつかってわかった今の大切さ〜

憂 レッスン3は「夢をかなえるために〜海外で壁にぶつかってわかった〝今〟の大切さ〜」。ここにいるみんなはサッカー選手になりたいという夢を持っていると思うし、その夢をかなえるためにこのスクールにも来てくれていると思う。

律もまだ夢を追いかけている途中かもしれないけど、小さい頃から言い続けてきた「日本代表になってW杯でゴールを決める」という夢をかなえた。そんな律に聞きたい。夢をかなえるためにはどんなことをすればいいと思う?

律 難しいなあ。とにかく練習は大事。練習しまくらないと夢はかなわない。夢を持つことは大事だし、みんなにも人に笑われるぐらい大きな夢を持って、継続して努力を重ねていってほしい。

それは大前提なんだけど、でも最近気づいたのは、夢を見すぎて足元を見ていない人は成功しないということ。大きな夢を持ちすぎて、毎日努力できなかったら意味がない。

俺は大きな夢を常に持っているけど、最近は一日のゴールを決めるようにしている。「今日はこれをやり切ろう」というゴールを決めて、それを続けた先にその夢が待っていると思う。近道なんかないから。

だって、「今日めちゃくちゃ練習したら、サッカー選手になれる」って言われたら、みんなめちゃくちゃ練習するやん? でも、そうじゃないから難しいわけで。毎日の練習を続けても、サッカー選手になれるかわからない。だから、人は努力をなかなか続けられないんだけど。

でも、それでも続けないと夢は絶対にかなわない。やっぱり、毎日継続して、人よりも努力することだね。「今日は誰よりも点を決める」「今日の試合は全部勝つ」とか、一日の目標を掲げて、それをやり続けるしかないと思う。

憂 律はホンマに小学生の頃から「日本代表の10番になる」「W杯で点を決める」と言い続けてきた。俺はそれを聞いて、正直、「そんなんかなうわけない」って笑ったこともあったと思う。でも、今、律はそれをかなえているわけだから。

NEXT10は「未来の日本代表10番を育てる」ことを目標に活動しているけど、実際にこのあいだ初めてA代表の10番を背負ってみて、どうだった?

律 意外とうれしいというよりも、「なんとかしないと」「頑張らないと」って責任感のほうが大きかったね。夢って近づいていくときが一番うれしいし、楽しい。

でも、夢がかなったときって、責任感とか、次の夢を探さないといけないって気持ちにさせられるから、今まで感じたことのない気持ちになったかもしれない。

憂 でも、そういう逆境とかプレッシャーは得意なんじゃないの?

律 得意って言ってます(笑)。

憂 それはなんで?

律 根拠はないよ。これだけカッコつけて話してるけど、根拠は何もない。でも、根拠のない自信ってめっちゃ大事だから。小学生のとき、俺は根拠はないけど、「サッカー選手になれる」って周りに言ってたし、「なんでそんなこと言えるの?」って笑われてたけど、「いや、わからん」って返してたから。

憂 そもそもメンタルはもともと強かった?

律 強かったのかな? 根っからの負けず嫌い。俺よりもサッカーが好きな人がいたら許せなかったかな。

憂 サッカーはうまいけど、メンタルが弱い子とかは、どうやったらメンタルが強くなると思う?

律 俺から言わせてもらうと、そういう人は夢に対する気持ちが弱いんだと思う。その夢を本気でかなえたかったら、絶対に努力するし、その夢に向かっておかしいくらいに努力すると思うから。

「今日練習しなかった」「弱気なプレーをしちゃった」と言われたら、「どうせ、そのくらいの夢なんでしょ」と俺は思うかな。本気で夢を追いかけているなら、気持ちはブレない。夢をかなえるためには、本気の意志を高めることが大事だと思う。

憂 最後に、NEXT10の子供たちに向けて伝えたいことがあれば。

律 俺は今25歳で、みんなは8歳から12歳くらいでしょ。俺は35歳でもまだまだ現役でやっていたい。10年後、一緒にサッカーしよう。それが俺からのメッセージかな。

●堂安 律(どうあん・りつ) 
1998年6月16日生まれ、兵庫県尼崎市出身。ガンバ大阪、FCフローニンゲン(オランダ・エールディヴィジ)、PSVアイントホーフェン(オランダ・エールディヴィジ)を経て、2020年9月にアルミニア・ビーレフェルト(ドイツ・ブンデスリーガ)へ期限付き移籍。2021年には再びPSVアイントホーフェンでプレーし、2022年7月にSCフライブルク(ドイツ・ブンデスリーガ)へ完全移籍。2018年9月からサッカー日本代表としても活躍中。2021年の東京五輪では背番号10、昨年のカタールW杯では背番号8を背負った。2023年から日本代表の背番号10を託された。また、地元・尼崎市で実兄の憂と共に、未来の日本代表10番を育成するフットボールスクール「NEXT 10 FOOTBALL LAB」を運営中。

●『俺しかいない』 
定価:1650円(税込) 集英社

撮影/HIRO KIMURA(書籍) 写真提供/NEXT10 FOOTBALL LAB