問題になっている子どもの読解力低下。それだけではない。イメージ力やコミュニケーション、自己肯定感など…。こうした力を家庭教育で養うにはどうすればいいのか。

その一つの解が子どもへの「読み聞かせ」だと語るのが、七田式教育を主宰するしちだ・教育研究所の七田厚氏だ。

七田氏が上梓した『子どもの脳を刺激し、将来の選択肢を増やす「七田式」究極の読み聞かせ』(幻冬舎刊)は、読み聞かせの効果、方法そして読み聞かせに向いている絵本を紹介したブックリストまで網羅する一冊。
今回はそんな七田氏にお話をうかがい、子どもの能力を引き出す「読み聞かせ」の力について語っていただいた。

(新刊JP編集部)

■子どもの能力を読み聞かせが引き出す。その6つの力とは

――本書では幼児期における親からの絵本の読み聞かせの重要性や効果について語られています。七田さんご自身もお子さんたちに読み聞かせを行っていたそうですが、どういうきっかけだったのですか?

七田:この本は、自分の教育の経験を踏まえて書かせていただいていますが、実は読み聞かせの効果について私自身最初から分かっていたわけではなく、子どもたちを本好きに育てたいという目的があって読み聞かせをしていたんです。

七田式の創始者であり、私の父でもある七田眞が「子どもを読書好きに育てたら親の仕事の半分は終わりだ」と言っていましてね。それはどういうことかというと、七田式教育の考え方の中に「才能逓減の法則」という理論がありまして、人間が持って生まれた才能が100だとすると、年を重ねるごとに少しずつ逓減していくというものなんですが、早い段階から才能に対して働きかけをすることが大切なんです。

若かりし頃、病を患っていた父は闘病中に教育の理論と実践について書かれた本を読み、この「才能逓減の法則」に出合い、閃いたわけです。病気が治ったら、この研究をしようと。その後、さらに別のある本と出合って自分なりの健康法を実践し、一命を取り留めて、結婚し、私が生まれるわけですが、そうした経験から父はどんな本と出合うかが人生を決めると悟っていたんだと思います。

――なるほど。「子どもを読書好きに育てたら親の仕事の半分は終わりだ」という言葉の真意が見えてきました。

七田:子どもに小さい頃から本を読んであげて、本好きに育てる。そうすると、自分が亡くなったあともきっとこの子は本に救いを求めるだろう。良書との出会いがこの子を助けてくれるだろうと。そうした意味でその言葉を言ったのだと思います。このことを私も最近気づいてきました。

――ただ、読み聞かせの効果は本好きになるだけではなく、もっと多岐にわたっていた。その効果について教えてください。

七田:絵本の読み聞かせによって身につくことはたくさんありますが、今回は6つの力をご紹介しましょう。

まずは「語彙力」ですね。語彙が増えると表現力が豊かになり、人間関係も良くなる。言葉足らずで人を傷つけてしまうということがなくなるし、これは良いけどこれはダメというようなグレーの部分を表現できる言葉も見つかります。

七田式教育では、絵が書かれたフラッシュカードを使って右脳を鍛えたりするのですが、カードで見せるものってだいたいは名詞か形容詞なんです。一方、絵本には副詞をはじめ、絵に表現しようのない言葉たちがたくさん載っています。だから、どんどん語彙や表現力がタ深まっていくわけですね。絵本をたくさん読んであげると、これから必要だと言われている思考力の基礎が高まっていくので、読み聞かせは非常にいいんです。

次は「イメージ力」です。アニメや動画も子育てには使われますが、絵本は動画と違って絵が動いていないので、自分の想像力で場面をつないでいかないといけません。また、親御さんが絵本を読むとき、1人で何役もこなすと思いますが、子どもは頭の中で別の人だと認識しながらそれを聞いています。

――つまり、絵本の読み聞かせをしてもらっている子どもは、イメトレをやっているような感じですね。

七田:そういうことです。今やイメージする力はトップスポーツや医療など、さまざまなところで活用されています。例えばフィギュアスケートの羽生結弦選手は試合のために移動をする国際線の飛行機の中で、試合の日の一日の流れをイメージしていると聞いたことがあります。そのイメージが成功を手繰り寄せるわけですね。

まずは絵本のストーリーをイメージできるようになり、そこから自分が上手くいくイメージ――ピアノの発表会で間違えずに弾けるとか、入学試験で日頃の成果を発揮できるというように、発展的に使えるようになるのは、やはり読み聞かせの力ではないかと思いますね。

3つめは「読解力」です。私は、この読解力というのは幼児、あるいは小学生時代に身につけることができる力だと考えています。読解力って要は内容を理解する力ということですが、小学1年生のお子さんにとって実は文章を読みながら理解することって、とてつもなく難しいことなんですよ。

ピアノを弾きながら歌うとか、ギターを弾きながら歌うって、楽器を修得するよりもさらに難しいですよね。一握りの人しかできない芸当です。実は、読みながら理解するって、それと一緒なんです。読み始めの頃って文字を追うのに必死で、何が書いてあるのかまでは追いついていません。

ただ、読み聞かせをすることで、自分で読まなくてもいいので、文章の理解に傾注できるため、どんどん内容をイメージしながら理解できるようになります。それに理解するだけなら、絵本に書いている推奨年齢の2歳上程度くらいならできると言われています。だから、幼児期から読み聞かせをしていれば、自然と自分より上の年齢向けの本が理解できるようになり、小学校入学時には、教科書を読みながら理解する能力をすでに備えた状態になっているということがありますね。

――それはすごいですね!理解する能力を高められるのが読み聞かせの力というわけですね。

七田:そうですね。そして、4つめの力です。これは提案になりますが、どうせ読み聞かせをするなら「集中力」や「聞く力」を育てませんか? ということです。

つまり、お父さんお母さんが絵本を読んでいる間に、子どもに質問をさせない。分からないところは、読み終わったら教えてあげる。それを事前に言っておいて、相手が話しているときは口を挟まないという習慣を読み聞かせを通してつけていく。黙って親がする話にじっと傾聴できる。それによって集中力が磨かれます。傾聴する時間は年齢プラス1分と言いますが、4歳くらいの子でも6〜7分の話が聞けるように育ちます。

また、今は少子化傾向もあって一人っ子も多いですけれど、兄弟げんかをしたことがない子って、我慢するとか謝るといった経験もしづらいですし、兄弟の関わりから学べるものも学べない。そういうときは絵本を読んであげて、主人公や登場人物の行動や言動を通して疑似体験をさせてあげるんです。

その意味で育っていくのが、5つめの力である「コミュニケーション能力」ですね。

――では、最後の6つめの力は何ですか?

七田:これが一番の絵本の読み聞かせのメリットになりますが、読み聞かせは親の愛情を感じ取ることができるコミュニケーションタイムなんです。絵本の読み聞かせって片手間にやるものではないし、しっかりと子どもと向き合ってやるものだと思うんですね。私の時間をあなたにあげる、といった具合に。

だから、読み聞かせをされている子どもは、自分は大事にされている、愛されているという感覚を持てると思うんです。こうして自己肯定感が高まるわけです。

――これまでのお話をうかがって、大人になったときに必要な力がすべて読み聞かせに詰まっていますね。読解力をはじめ、自己肯定感、集中力、語彙力、イメージ力、コミュニケーション力と。

七田:そうですね。

(後編に続く)