日本との間に領土問題を抱え、東シナ海など日本近海への勢力圏拡大の野心を隠そうとしない中国、慰安婦問題がいまだに尾を引いている韓国、そして核保有への道を進む北朝鮮に北方領土問題のロシア。

日本と近隣国の間には、安全保障上の火種になりうる問題が山積している。近隣に「関係円満」な国がないこと自体は珍しいことではないが、身近な脅威にさらされながらもここまで危機意識が低い国民は珍しい。参議院議員であり、安全保障・外交分野の専門家として知られる青山繫晴氏の『いま救国――超経済外交の戦闘力』(扶桑社刊)は日本が今置かれている現実に鋭く切り込む。

■自衛隊拠点の付近の土地を中国が“爆買い”中

青山氏が日本の安全保障上の脅威となりうる事例として警鐘を鳴らしているテーマの一つが、中国による日本の国土への侵食だ。

中国が日本の国土を買いあさっているという噂はかねてからあるが、その実態はあまり明らかにされてこなかった。ただ、青山氏が挙げている事例を見ていくと、現実はかなり深刻だといっていい。日本の安全保障関連施設の近隣の土地が中国の手に渡っているからである。

キーワードは「太陽光パネル」だ。
日本政府が創設した「再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(通称:FIT)」に加入している中国資本は実に1500件以上。この制度を利用して太陽光パネルを設置することが、中国人が日本の安全保障施設の近隣に広い土地を確保する口実になっていると青山氏は指摘する。

ちなみに、この制度は太陽光や風力で発電した電気を、電気会社が高い固定価格で買い取ることを法で義務づけたもの。その固定価格は国際基準の二倍にも達する額であり、電力会社が買い取るといっても、それは日本国民が払った電気料金である。中国からすると日本の安全保障施設の目の前の土地を入手できて、さらに日本国民からお金をもらえる構図になっていることは知っておくべきだろう。

中国はこの手法で、北海道・稚内の自衛隊レーダーサイト付近や、沖縄県・宮古島の陸上自衛隊宮古駐屯地と航空自衛隊の宮古島分屯基地の付近の土地を確保しているという。実際に購入したのは中国の一企業だが、その内実は日本国内の中国領事館とのかかわりが強く、中国共産党の息がかかっている企業と見ていい。

陸上自衛隊拠点港や米軍基地とも近い長崎県・西海市の竹ノ島、同じく陸上自衛隊の駐屯地がある北海道・旭川市、そして市ケ谷の防衛省本省を一望できるタワーマンションの一室など、日本の戦略的重要拠点の付近の土地・場所を中国が取得する例は数多くある。

これらの拠点から日本の自衛隊施設を監視するのか、あるいは他のはたらきかけをするのかは不明だが、用途がどうであれ不気味なのは確かだ。こうした状況に青山氏は警鐘を鳴らし、日本人の意識変革と日本の外交・安全保障政策の適正化を促す。

もちろん、脅威は中国だけではなく、先述の通り韓国にもロシアにも、北朝鮮にも日本は目配りしながらやっていかなければならない。そのために、日本はどんな外交方針を打ち出し、どんな政策を実践していくべきなのか。本書で掲げている青山氏の提言から学べるところは大きい。

(新刊JP編集部)