子どもの頃から絵本やアニメなどでなじみがあるのが昔話や言い伝えの類。
「昔々、あるところに…」と出だしで言われてしまうと、ストーリーに「あれ?」と思うことがあっても、「まあ、そんなものか」とスルーしてしまったりするのだが、冷静に考えると、昔話にはツッコミどころはたくさんある。

たとえば「浦島太郎」で、乙姫は浦島太郎に、なぜ開けてはいけない玉手箱を渡したのか?物語を読み返してみても、渡した理由やいきさつなどはよくわからない。

■「玉手箱」は乙姫の報復だった?

江戸よりもっと時代を遡ると、人々は口伝えで物語を楽しんでいた。昔話は世代を超えた娯楽であり、暖炉裏端を舞台としたエンターテインメントだった。大人の娯楽でもあった、ということは、嫉妬、不倫、策略など、物語の背後に大人の事情が見え隠れしたりもする。昔話は決して「子ども向け教訓話」というだけではないのだ。

『ツッコミ読み 裏切りの日本昔話』(ながたみかこ著、笠間書院刊)では、「浦島太郎」「桃太郎」「鶴の恩返し」など、有名な昔話を中心に12話を取り上げて、裏読みしたりツッコんだりしつつ、考察していく。

乙姫に「決して開けてはいけません」と念を押されて手渡される摩訶不思議なアイテム「玉手箱」。竜宮城から村に帰った浦島太郎が、玉手箱を開けると、紫色の煙が立ち上がり、白髪の老人と化してしまい、300年の月日が流れていたことを知る。

よくよく読むとめちゃくちゃ理不尽な話ではないか。開けてはいけないのなら、最初から渡さなければいいじゃないか。乙姫のねらいは何だったのか。

浦島太郎の原話と言われる『丹後國風土記』は、釣りをしていたイケメンの浦島太郎が亀を釣り上げ、船の中に亀を置いてみると、美人の乙姫となった、というストーリーである。広く伝わっているバージョンとはちがって亀はいじめられていないし、子どもも出てこない。

では、なぜ浦島太郎がイケメンなのかというと、外見について「人となり姿容秀美(うるわ)しく風流(みやび)なること類なかりき」とあるからだ。浦島太郎が類い稀なイケメンだったので乙姫のお眼鏡に適い、竜宮城へ誘われ、夫婦となる。贅沢三昧の浦島太郎だったが、3年が過ぎた頃、地上に戻りたい旨を伝え、乙姫は嘆き悲しむも玉手箱を渡す。

となると、玉手箱は、自堕落に過ごしたあげく、突然離婚を言い出した顔がいいだけのダメ男の浦島太郎に対する乙姫の制裁、復讐だったのではないか、と本書では玉手箱問題の結論を出している。

日本昔話の疑問を感じるところを掘り下げ、考察してみるのも楽しいかもしれない。真剣にいろいろ想像してみると、新たな気づきもあるはず。大人の楽しみ方を試してみてはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)