乗客同士のケンカあり、理不尽なクレームあり、と日々電車を使う身としては、こうした事案に日々対処する駅員や車掌という仕事はつくづく大変な仕事だと感じる。

元JR東日本の車掌である関大地さんの『車掌出てこい! 英語車掌が打ち明ける 本当にあった鉄道クレーム』(マキノ出版刊)からは、そんな過酷な仕事の実態が見える。乗客として目にする電車や駅でのトラブルはほんの一端。毎日多くの乗客と対峙する鉄道関係者の気苦労は計り知れないものがある。

■車掌が目にした「特急料金逃れ」の驚きの言い逃れ

特急列車に乗る時は「特急料金」が発生する。それを高いと感じるなら普通列車を使えばいい話なのだが、中にはこんな「不届きもの」もいるようだ。

ある日、高崎線上り、高崎発上野行の特急「スワローあかぎ号」に乗務していた関さんは、乗車していた女子高生に特急券の有無を確認したところ「えっ?この列車、お金掛かるんですか?」という返事が返ってきた。

女子高生いわく、普通列車とまちがえて特急に乗ってしまった、とのこと。しかしたとえまちがって乗ってしまったのでも、特急券は必要だ。

「次の駅で降りますから」と言い続ける女子高生に、それでも特急料金はかかると説得する押し問答になってしまったが、最終的に女子高生は怒り出し「昨日の車掌さんは“まちがったなら次の駅で降りて”と言ってくれましたよ」と食ってかかったそう。

昨日も同じ手口で特急に乗っていたのなら、まちがいでもなんでもない。女子高生は自らのクレームでボロを出してしまったのである。

この女子高生に限らず「車掌に見つからなければラッキー」というつもりで特急券を買わずに特急に乗ってしまうケースは非常に多いのだそう。特急列車には普通列車と同じ駅に停車したり、一駅しか飛ばさない区間もある。「特急料金逃れ」は、こういった区間で起こりやすい事例なのだとか。

■知らずにやっていることも多い不正乗車

「特急料金逃れ」は当然不正行為だが、多くの場合は本人に不正をしている自覚があるはずだ。一方で不正だと知らずにやってしまう不正乗車もある。本人も悪いことをしたと思っていないので、車掌に注意されたりすると話がこじれやすい。

よくあるのが、朝の通勤時間の混雑を嫌い、座って通勤するためにあえて会社と逆方向の始発駅に行くというパターン。これは「折り返し乗車」という立派な不正乗車である。

同様に、飲み会帰りでつい帰りの電車を乗り過ごしてしまったため、あわてて反対方向の電車に乗るのもNG。座って通勤したいから始発駅に行く時も、乗り過ごして戻る時も、一旦精算してから方向転換しないといけない。

これ、案外知らずにやっていた人が多いのではないだろうか?

車掌として体験したトラブルやクレームを集めただけではなく、対処法にまで踏み込んで紹介してくれる本書。時間帯や曜日ごとに変化をつけている車内アナウンスの手法や、迷惑客への声がけの際の配慮などは、サービス業、接客業その他顧客対応に関わる人なら参考になる部分は多い。

トンデモクレームの数々には読んでいて驚いてしまうものも多々ある。対処している鉄道関係者の仕事ぶりに頭が下がる一冊だ。

(新刊JP編集部)