栄えるものは、いつか衰退する。それは事業も同じで、永久に成長し続ける事業はない。ビジネスを取り巻く環境は常に変化し続ける。時にはその環境がガラリと変わることもある。

近いところでは、新型コロナウイルスの感染拡大を原因とする緊急事態宣言、外出自粛、休業要請、入国制限などによって、壊滅的な影響を受けた業界があった。飲食業界や旅行業界はその最たる例であり、多くの企業がその影響を受けた。

それだけではない。人口構造の変化、外国資本の台頭、AI化など、環境の変化をもたらす要素は数多くあり、これから未知のものも登場するだろう。こうした変化に対して、自分の身を守るのは自分しかいない。経営者は事業の再構築や新規事業を常に模索する必要があるのだ。

では、実際に「事業の再構築」「新規事業の展開」を進めていくにはどうすればいいのか。

経営コンサルタントの中野裕哲氏による『「事業の再構築」を考えたときに読む本』(日本実業出版社刊)は、ノウハウを教えてくれるとともに、実際に検討するための思考のフローを整理してくれる一冊だ。

本書では、順を追って事業再構築の考え方と実務のフローを説明している。その手順は下記の通りとなる。

①現状の把握・分析をする
②どのように変えることができるか考える
③新しいビジネスを具体的に仮説・検証する
④集客・マーケティング戦略を考える
⑤活用できる補助金・助成金を調べる
⑥資金計画を練ってみる
⑦計画全体を事業計画書に書き出す
⑧実行計画・個別相談をする

現状の把握・分析から始まり、新しいアイデアの生み出し方、新規事業や事業再構築についての具体的な仮説・検証と、おざなりにしてはならない部分をしっかりカバーしており、ワークを通して自分の考えが整理できるので、ぜひ読み進めながら考えてほしい。

■中小企業は「チャレンジ資金」をフル活用しよう

事業の再構築を進めるうえで必要不可欠なものは何か。新たなアイデアやビジネスモデルも必要だが、それを実現するために忘れてはならないものがある。資金だ。
本書の特徴はまさにその資金の部分、つまり事業を再構築するにあたっての補助金・助成金の説明が充実していることにある。

著者の中野氏は「中小企業の業績は、補助金・助成金の活用で飛躍的に伸ばすことができる」としている。補助金や助成金は融資とは違って基本的に返済不要。効率的に活用できたならば、資金繰りも楽になり、新たなチャレンジに対するリスクの低減にもなる。中野氏が「チャレンジ資金」と呼ぶほど、活用しない手はないのだ。

ただ、補助金・助成金といっても、さまざまなものが存在する。また、その2つ以外にも給付金というものがある。それぞれの特徴を簡単に説明しよう。

(1)給付金
国民や事業者を救済する目的で、緊急的に国や自治体が給付するお金のこと。例としては、新型コロナウイルス禍によって支給された持続化給付金や特別低額給付金がある。

(2)助成金
雇用維持、雇用促進、労働者の職業能力の向上などの施策を目的に、主に厚生労働省が実施する助成金のこと。要件を満たしてれば、審査員の審査で落とされることはない。例としては、雇用調整助成金、トライアル雇用奨励金などがある。

(3)補助金
起業促進や地域活性化、中小企業振興などの施策を目的に、経済産業省が行う補助金。応募要件を満たしたうえで応募し、審査を通過することが必要となる。合格率は補助金によって異なる。例としては、IT導入補助金や小規模事業持続化補助金など。

このうち、助成金と補助金を活用できるシーンはパターン化されている。事業再構築のために特に押さえておきたいのが新分野展開や事業転換、事業再編の際に活用できる「事業再構築補助金」だ。

■手堅く、わかりやすく。「事業再構築補助金」の事業計画書のポイント

「事業再構築補助金」とは、経済社会の変化に対応するために、思い切った事業再構築に取り組む企業を対象に最大で1億円が支給されるという補助金である。

本書では、申請できる条件や何をもとに審査をしているのか、この補助金の注意点といったことから、どのような事業計画書が採択されるのかなどが詳しく説明されている。

例えば、「夢のような計画」と「手堅い計画」ではどちらが採用されやすいのかという問いに対しては、中野氏は「手堅い計画」であると断言する。やはりバラ色の計画では無理があると判断されやすいようだ。
また、「わかりやすさ」も大事だという。1ヶ月という短い審査期間の中で、実務的に審査員がひとつの応募案件について審査にかけられるのはせいぜい10分程度。だからこそ、シンプルでわかりやすい計画が審査を通過するための肝となる。

その具体的なイメージは、本書に掲載されている実際に採択された2つの事業計画書を見ると分かるだろう。
その他にもさまざまな補助金が紹介されていたり、助成金の情報が掲載されているため、新しいチャレンジを踏み出そうとしている経営者にとっては心強いはずだ。

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著者の中野氏は「事業をしていれば、必ず事業の再構築をしなければならないときがくるのです。どんなに上手くいっていても、気づかない間にゲームチェンジが起こり、危機が迫っているのです」と語り、現在の事業の見直しと再構築の必要性を訴える。そして、実際このコロナ禍によって、多くの経営者がその必要性を強く実感したはずだ。

環境は常に変化し続けている。だからこそ、企業自体も常に変化に対応していく必要があるだろう。本書は計画の実行に至るまでをサポートしてくれるので、手元に置いておくと心強い一冊だ。

(新刊JP編集部)