ある社員が辞めたのをきっかけに、連鎖的に主力社員の退職が続く。新しい人を採用してもその穴は簡単に埋まらず、会社の業績に影響が出はじめる。

この「連鎖退職」のケースは、どんな職場にとっても他人事ではない。

青山学院大学経営学部教授の山本寛氏の著書『連鎖退職』(日本経済新聞出版社刊)は、同じ組織、部署内で次々に何人もの退職者が続く「連鎖退職」の実態を、事例を通して解き明かしていく。

■どの会社でも起こりうる「連鎖退職」の2つのパターン

実際、人の退職理由は様々だ。個人のキャリアプランニングや明確な個人の意思によるだけではない。

山本氏はヒアリングを行った元人材サービス会社スタッフの「(退職は)雰囲気、風土や業績に影響を受けるのかなと思いました」(本書p.11より)という声を取り上げる。そして、そうした空気を作り上げるものの一つが「あの人も辞めた」「先輩や同期がどんどん辞めていく」という現象であり、「この会社は危ないのかもしれない」という思いが、もやもやした退職願望を行動に移す上でのきっかけとなるのだろう。

連鎖退職は大小問わず様々な組織で起こり得ることだが、中・小規模の組織になると社員の半数が短期間のうちに辞めてしまうケースも出てくる。山本氏は連鎖退職には大きく分けて2つのパターンがあるという。

まずは中小企業やベンチャーで起こりやすい 「ドミノ倒し型」 だ。
ギリギリの人員で仕事を回している職場で起こりやすく、誰か一人が辞めたあとの引継ぎや人員補充が上手くいかず、残った社員の負担が大きくなり、潜在的な不満が噴出。次から次へと人が辞めていく。

もう一つの 「蟻の一穴型」 は大企業で起こりやすいパターンだという。
誰かの退職によって職場の問題がクローズアップされて辞めていくというもので、不合理な仕事上の慣習、理不尽な人事評価、隠ぺい体質やコンプライアンス面の問題などが起因になる。そして、こうした問題に疑問を持っている社員が多いのにも関わらず手を付けないままでいると、社員は「このままここにいても」という気持ちになりやすくなるのだ。

また、かならずしも連鎖退職はこの二つのうちのどちらかというわけではなく、「ドミノ倒し型」と「蟻の一穴型」のハイブリッドもあるという。

人手不足が叫ばれる昨今について、社員の連鎖退職は会社にとって致命傷となり得る可能性がある。「今までそれで回ってきたから」と自社の空気の悪さや問題を放置し続けると、経営者は足元をすくわれるかもしれない。

本書では、どんな人が連鎖退職の引き金になりやすいのか、そのとき管理職はどう手を打つべきか、火種を見逃さないようにするためにどうすべきかなどを解説している。
「上が変わらずに失望した」という声があがってからではもう遅い。今見直せるものがあるならば見直していく。それが人手不足時代を生き残るために企業がすべきことなのだろう。

(新刊JP編集部)