脱サラや勤めていた店からの独立など、飲食店経営を志す人は今も昔も多い。

しかし、よく言われることだが、これらのうち大部分は失敗する。飲食店を開くまではこぎつけられても、繁盛させるまでには大きなハードルがあるのだ。

となると、飲食店経営で大きな成功を収めている人がどのようにその状態を作り上げていったのかを知ることは、成功を目指す人の道しるべになるかもしれない。

■飲食店経営の成功者が「味」以上にこだわるところ

関東を中心に、大衆酒場「かぶら屋」を展開する株式会社かぶら屋を率いる内山九十九氏は、著書『串焼き1本80円でも年商1億稼げます』(秀和システム刊)で、飲食店が繁盛するか否かを分けるポイントを挙げている。

たとえば、来店した客が快適な時間を過ごせるかという「居心地」だ。「居心地のいい店」と言葉にするのは簡単だが、時間をかけてコース料理を味わうような店と、軽く一杯ひっかけてすぐに帰るような店では、「居心地の良さ」は異なる。

椅子一つとっても、前者の店が背もたれもクッションもない椅子を使っていたら客は落ち着いて味わえないだろう。逆に後者の店がゆったり座れるソファを使っていても、すぐに帰るはずだった客が帰りにくくなってしまう。

ちなみに「椅子」が店の雰囲気づくりに果たす役割は意外なほど大きい。テーブルの高さに比べて椅子が高ければ、客はテーブルから離れて座るため、向い合った客同士には距離が生まれるし、反対に椅子が低ければテーブルに肘をつきやすいため、向かい合う客同士の距離は接近する。

これはどちらがいい、悪いということではない。客層や店の作りたい雰囲気によって、適した椅子が変わるということだ。照明の色と明るさにも同じことが言えるという。店の雰囲気を作り上げるのは接客だけではない。料理や飲み物、そして店にある備品・設備全てである。こうした雰囲気づくりに失敗すると、「居心地の悪い店」ができあがってしまうのだ。

■求められるのは「味」とは限らない

料理の腕に自信がある人ほど「味」で勝負しようとしてしまう。これはこれでまちがったことではないが、おいしさと繁盛するかどうかはまた別の話だということは覚えておくべきかもしれない。

特に大衆酒場の場合、求められるのは「味」よりも「この店に入るとホッとする」という安心感だろう。その場合、料理の方は「ご馳走のおいしさ」よりも「毎日食べても飽きないこと」を追求する方が店のコンセプトと合致するはずだ。

「飲食店だから味が一番大事」と考えられがちだが、繁盛させるためには他に考えることが山のようにある。

どんな人が、どんな用途で、どんな時に、どんな頻度で訪れる店にするのか。

それを明確にして、客の行動を想像し、どうすれば快適な店になるのかを考え抜いてメニューや店の構造や雰囲気を決めていく。このシミュレーション能力こそが、成功する店とそうでない店を分けるのだ。

本書ではこの他にも内山さんが明かす、繁盛する店を作るために必要な考え方やポイントが明かされている。
「いつかは自分も」という人も、すでに自分の店を持っているも、学べるところは多いはずだ。

(新刊JP編集部)