平成の終わりにかけて話題にのぼることの多かったワードの一つが、2010年に新語・流行語大賞にもノミネートされた「終活」だ。その中でも特に「相続」は本人だけでなく家族にも影響が及ぶため、早い段階からの対策が必要と言われている。

『結果に差がつく相続力 相続税を減らすコンサルタント活用術』(曽根惠子著、保手浜洋介著、総合法令出版刊)は、主に資産家向けに相続の流れや不動産の節税対策について説明する一冊だが、不動産関連の相続は税理士でも弁護士でもなく、専門の「相続コンサルタント」に任せることをすすめている。

「相続コンサルタント」とはどんな仕事をするのか? 共著者の一人で相続コーディネートを主業務とする株式会社夢相続代表取締役の曽根惠子さんにお話をうかがった。

(新刊JP編集部)

■円満に対策をしたいなら「生前対策」に力を入れるべき

――これまでの相続税対策の本というと税理士や弁護士が執筆しているというイメージがありました。共著者である保手浜さんは税理士の資格をお持ちですが、曽根さんは不動産コンサルティングマスターの資格をお持ちのコンサルタントです。相続におけるコンサルタントの仕事について教えて下さい。

曽根:まず相続というと節税対策、そして財産分配の問題が強いというイメージがあるかと思いますが、私たちは経済面だけではなくて感情面も大事だと思っています。ご家族内で争わないように円満に手続きをしていただくために、感情面と経済面双方から対策をサポートするというのが相続コンサルタントの仕事です。私たちは「相続コーディネート」と言っていますね。

――曽根さんはこのお仕事をいつ頃始められたのですか?

曽根:平成のはじめ頃ですね。30年近く前です。平成4年がスタートなのですが、当時、不動産の賃貸管理の会社を経営していまして、大家さんとお付き合いがあったんです。ある時、とある大家さんが亡くなってしまったのですが、その方は約1000坪の土地を持っていて、5億円ほどの財産をお持ちだったんですね。

そこで相続の手続きを税理士さんにお願いしたのですが、不動産のことは分からないとなりまして、管理会社の立場としてお手伝いをさせていただきました。その時に不動産をお持ち方は、不動産の知識がある人が相続のサポートをする必要があると感じたんですね。

――なるほど。

曽根:特に資産家の方になりますと財産の7割が不動産であるとも言われていました。ノウハウを蓄積し、それを元にサポートしなければうまく相続できないということに気づいてこの仕事を始めたんです。

――平成4年ですとバブル崩壊の真っただ中ですよね。バブル景気の影響もありましたか?

曽根:バブルの影響というよりも、農家の方ですとか土地を持っている方のお手伝いがスタートです。もともと土地を持っていて、こんなに高い価値になるとは思っていなかった、と。いざ相続になった際に「こんなに税金を払うのか」という方々です。

数百坪の土地を持っていらっしゃるけれど現金はあまりないという方も多かったのですが、当然相続の際には土地を売って納税しないといけない。だから相続の節税のアドバイスが必要だったんですね。

――本書では生前対策についても書かれています。

曽根:はい。実はその後、被相続人が亡くなってからでは節税でできることが少ないと気づきまして、生前対策に力を入れるべきだろうと。何も対策をせずに亡くなられて、ご家族がもめる様子もたくさん見てきましたが、経済面と感情面双方で生前に準備できれば、ご家族がもめることはないんですよね。

――コンサルタントは課題解決のサポートが仕事ですが、相続におけるコンサルタントの強みと弱みについて教えていただけますか?

曽根:私自身の話を申し上げますと、現在は不動産の専門家としての立場でアドバイスをさせていただいています。宅地建物取引士の上位資格として公認不動産コンサルティングマスターという認定試験があり、その中に不動産分野の資産継承のスペシャリストである相続対策専門士という認定資格があります。その資格は平成5年度にスタートしていますが、当時から私はその資格の上で活動をしているんですね。

ただ、まだ認知度は低いというのが弱みですね。税理士さんや弁護士さんは立場が明確ですから、相談先としても分かりやすい。でも、人によっては財産の多くの割合を占める不動産の専門家の役割は大きいと思います。

――相続対策をサポートされる際は、被相続人と相続人どちらの方とお話することが多いのですか?

曽根:亡くなる方よりも遺された方々とお会いすることが多いです。

――生前対策の場合はいかがですか?

曽根:その場合はご家族全員に集まっていただきます。私たちが相続の相談を受ける際に一番多いトラブルは家族内でもめていることなんです。その理由を分析してみると、だいたいコミュニケーションができていない。財産の情報がオープンになっていない。それを防止する最大の手段は、元気なうちから被相続人が財産の状況や自分の気持ちをご家族の前でオープンにしてもらい、コミュニケーションを取って進めていくことなんですね。その上で、ご家族全員合意の上で遺言書までつくれば確実にもめません。

――つまり、準備が万全と。

曽根:これでようやく円満に相続の手続きができます。だから、相続について話し合える雰囲気に持っていくことも私たちのサポートの一つです。今まではお金のことについてあまり話ができないような風潮がありましたから、意外と家族に伝えていないんです。遺言書もこっそり作っておくとか。

――遺言書があるだけまだ良いのではないですか?

曽根:そうなのですが、逆にその「こっそり」というのがもめる原因になるんです。納得いかないと。また、遺言書の内容を知っていた人と知らなかった人がいたときの温度差ももめる原因ですね。

――確かに気持ちを逆なでする可能性がありますね。

曽根:だから、遺言書も相続もオープンにしましょうということが私たちのメッセージです。ただ、ご家族自らそういう意識になるというのは難しいと思うので、サポートする立場のコンサルタントが円満な相続に導いていく役割を果たしていくという形ですね。

(後編に続く)