読書家たちの幸せな悩みの一つは、「次にどの本を読むか」だろう。
ネットで情報を集める人、友達にすすめられた本を読む人など、選び方は人それぞれ。「書評」を参考にするのも一つの方法だ。

■年間500冊分の書評を書くプロが考える「おもしろい本」「避けたい本」

いち読者として、読んだ本の解釈や評価、感想を書いて発表する「書評家」と呼ばれる人たちがいる。ブログやSNSで書評を書いてアップしている人も一種の書評家だが、プロとしてお金をもらって書評を書いている人もいる。

小説家ともちがい、評論家ともちがう「書評家」とは、どんな仕事なのか?知っていそうで知らない「書評」の世界について教えてくれるのが『書評の仕事』(印南敦史著、ワニブックス刊)。作家・書評家の印南敦史氏が、文章を書く際の秘訣や書評家としての仕事のやり方、業界の裏側を解説する。

年間500冊もの書評を書き、書評を出すたびにAmazonランキングが急上昇する人気書評家の印南氏が思う「おもしろい本」と「おもしろい本を書く人」とはどんなものなのか。

「おもしろい本って、どういうものですか?」と聞かれることもあるという南印氏。書評家が考えるおもしろい本について聞いてみたい気持ちはわかる。ただ、「おもしろい基準」は人それぞれなので「おもしろくない、もしくはいい気持ちがしない本=避けたくなる本」を考え、そこから「おもしろい本」の基準を探っていると印南氏はいう。

南印氏が避けたい本は以下の3つ。
1.書き手の個性が見えない

書き手のその人らしさが表れていることは基本。「その人にしか書けない」ものであることが魅力に繋がる。

2.自分語り(自慢)が多すぎる

自分語りが必要以上に多すぎる過度な自己顕示欲には不快感を覚えることもある。逆に、自分語りが多すぎず、バランス感覚を持っている人の本は心地よく感じるもの。

3.文章に魅力がない

文筆家である以上、魅力的な文章を書くことは何より重要。

翻って、「おもしろい本を書く人」とは、どんな人なのか。それは、どれだけ人生経験を積んできたか、が重要だという。不器用でも、失敗ばかりでも、他の人にはない「味」がある人の生き方は魅力的であり、結果的にその部分が書き手の魅力になる。「おもしろい人生」から「おもしろい本」が生まれるということだ。

「自分にはできない」と思わせる力を持った文章が、「おもしろい文章」であり、そんな文章を書ける人が、南印氏の思う「おもしろい本を書く人」だという。

また、気になるのは書評家が、仕事ではなく、一人の読書家として本を選ぶ場合、どのように選んでいるのか。「自分はこういう本が好みだから」という固定概念にとらわれて本を選びがちになるが、普段の自分が選びそうもない本をあえて選んでみるのも一つの方法だと南印氏は述べる。

たとえば、書店に平積みされている本の中から、表紙のデザインやタイトルに惹かれたもの、帯のコピーが気になったものなど、本の内容とは違うことを基準にして選んでみる。自分の興味以外の本を読んでみることで、今まで無縁だった世界に出会えたり、あえて選びそうもない本を読んでみたからこそ、感じるものもあるはず。視野を広げてみることで、読書の幅も広がっていくのだ。

表紙

書評に興味がある、文章を書くスキルを高めたい人、もちろん読書家にも楽しく読める本書。書評の仕事の裏側を垣間見てはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)